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第1章 沢田くんと恋の予感
沢田くんと初呟き
しおりを挟む沢田くんの心の声が面白いことに私が気がついたのは、クラス分けが決まって彼が私の隣の席になった当日のことだった。
正直、沢田くんの隣の席になるなんて、最初は嫌だった。
私の経験上、イケメンと呼ばれる人ほど性格に難がある。ものすごくプライドが高くて周りを見下しているとか、ものすごくナルシストだとか、女の子を顔でランク付けして態度を変えるとか、そんな人たちばかり。
森島くんなんて典型的にそういう人で、ある意味分かりやすくて非常に助かる。この教室に入ってくるなり、彼が初めてつぶやいた言葉は、
【俺が一番カッコイイな】だった。
自分に自信があることを悪いとは言わないけれど、私はちょっと苦手で敬遠したいと思ってしまった。
私の予感した通り、彼はその日のうちにクラスの女子の半分とメッセージアプリのアドレスを交換して、モテ男ぶりを遺憾無く発揮していた。
ちなみに私はいまだに彼とアドレスを交換してはいない。
聞かれていないからじゃない! と強く否定しておこう。
まあ、実際聞かれていないんだけど。
そんな『イケメン恐怖症』とも言えるこの私が、沢田くんのような完璧な美男子を前に臆さないわけがない。
しかも沢田くんは一匹狼タイプ。孤高を愛しているに違いない。なるべく話しかけないでおくのが吉だろう。
とはいえ、私は常識人。
初めましての挨拶くらいは、どんなに苦手な人でもするべきだと思っている。その後は一切話しかけなくなったとしても、「これからよろしくね」くらいの社交辞令は当然口にするべきだと思っている。
沢田くんの隣の席におそるおそる座ると、私はこっちを見ようともしない沢田くんに向かって、無理やり笑顔を作って言った。
「沢田くん。私、佐藤景子。一年間よろしくね」
私の声に気がついた沢田くんが、ゆっくりこちらを向く。切れ長の美しい瞳が私を捉える。
その瞬間、彼の声が聞こえてきた。
【えっ! なに今この人、俺になんて言った? 一年間よろしく……そう言った? うわ、そんなこと言われたの初めてで泣きそうなんだけどーーー!!!】
……えっ? と私は耳を疑った。
だって、彼の表情は完全な「無」で、どちらかといえば冷たい印象なのだ。
それなのに。
【よろしくって言えよ、俺! ほら、早く! 言えってば言えよもう! あーもう5秒経った。もう無理。はい無理。チャンス逃したー! だからお前は友達いないんだよチキン野郎! もう佐藤さん、二度とお前なんかに話しかけてくれないからね! 一生ぼっちだから、お前なんか。いやお前って誰だよ。俺だよ俺! 二重人格のフリしてるけど一人だから! 中の人なんていないから! はーいもう10秒経ちましたー。残念ながら終了です。チーン_(┐「ε:)_】
……なにこの反応。
めちゃくちゃ可愛いな!!!
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