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第1章 沢田くんと恋の予感
沢田くんと購買2
しおりを挟む購買部は東館一階の突き当たりにある小さなコンビニのようなスペースだ。
そこでは授業で使うガチの文房具と、マスクや絆創膏などの衛生用品、おにぎりやサンドイッチ、お茶などの限られた食料品が売られている。
コンビニが遠いので、校内でノートや消しゴムなどが手に入るのはありがたい。体操服や制服のネクタイなども注文書を書いてレジカウンターに出せば、ここで受け取りが可能となる。
中に入っていくと、あまり愛想のない三十代くらいの女性事務職員が沢田くんをチラ見した。
【おお、超イケメン】
隣にいる私は目に入っていない様子。ええ、はいはいどうせモブですよ。
するとその時。
【わあ、なんだこれ⁉︎ めっちゃ気になるー!】
沢田くんの心の声がガーンとボリュームアップした。
何が気になるんだろう。
彼が立っていたのはシャーペンやボールペンがズラリと豊富に揃っているコーナーだった。その一つに、彼の目は釘付けになっていた。
こっそり覗いてみると、どうやら彼の視線の先のシャーペンの頭に何かマスコット的なものがついている。
商品名は「おじさんつきシャーペン」
その名の通り、シャーペンの上に哀愁漂うサラリーマンが乗っており、彼らが土下座していたり、飲んだくれてネクタイを頭に巻いていたり、電車のつり革につかまっていたりとさまざまなポーズを取っている。
本当に、なんだこれ。めっちゃ気になるよ。沢田くんの言う通りだ。
いったい誰がこんなものを欲しがるのか、謎だ。
【ヤバい。意味不明すぎてちょっと欲しくなってきたんだけど】
あ、ここにいました欲しがってる人。
私は思わず彼の横顔を見る。相変わらず無表情に見える沢田くんだけど、心の中は熱い。
【うわー、どうしよう。300円かあ、ちょっと高いよ。おじさんが上に乗っているだけなのに普通のシャーペンの二倍の値段だよ? このおじさんにシャーペン1本分の価値があるってこと? まあ、それはあるか。確かにうなずける……この飲んだくれた表情とか、土下座の背中の曲がり具合……完全な社畜感が出ているもんな。クオリティー高い。ある意味可愛いかもしれんと思えてきた。会社で何が起きたのか想像し始めると夜も眠れん。なんならコンプリートしたい。おじさんと会話してみたい。あああ、でも……】
沢田くんが五ミリだけ私の方に視線を動かした。
【こんなの買ったら、佐藤さん俺のこと……変な奴だって思うかもしれない】
安心して、沢田くん。
もう私、あなたのこと変な奴だって思ってる。
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