沢田くんはおしゃべり

ゆづ

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第6章 沢田くんと夏の恋花火

沢田くんと仲間たち

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「あ、おーい! 沢田! 景子ちゃん!」

 金魚すくいの屋台の前に行った時だ。人混みの中から声をかけられたので振り向くと、そこには笑顔の森島くんとクールな表情の杏里ちゃんがいた。

「あっ、森島くん! みんなは?」
「ああ、みんな勝手にどっか行っちゃったんだよな~。まったく困った奴らだよ【まあ杏里ちゃんと二人きりになるために俺が強引にみんなを撒いたわけだが】」

 森島くんの狙いは最初から杏里ちゃん一人だったもんね。
 困ったね、と笑いながら近づくと、森島くんのほっぺが左側だけやけに赤いことに気づいた。

「どうしたの? その頬」
「あっ、えっ? なんかついてる?」

 森島くんは目を泳がせ、左頬を触った。なんだか怪しいと思ったら。

【やべえ、さっき杏里ちゃんに殴られたアト、そんなに目立つ?】

 強引にやりすぎて殴られたみたいだな、森島くん。
 この二人の前途はまだ多難という感じだろうか。

「それより、お前ら橋の上でキスしてたろ。見たぞ!」
「えっ⁉︎」

 今度は私たちが赤くなる番だった。沢田くんなんか、赤くなるのを通り越して泡を吹きそうになっている。

【そ、そ、それを思い出させないで~~! 顔が退化する~~!(*´Д`*)】
【ちくしょう、羨ましいな! 俺はお前らの真似しようとして殴られたのに~!(>_<)】

 なるほどね……それは自業自得かと。
 ふと杏里ちゃんと目が合い、お互いに笑ってしまった。

【沢田と仲直りできたんだ。良かったな】
 ありがとう、杏里ちゃん。私は心の中でお礼を言った。


「あっ、森島くんと沢田くん発見!」

 土手の方から声がして、今度は麻由香ちゃんがやってきた。
「もう、今までどこ行ってたの~? みんなで花火見て盛り上がってるんだから、一緒に行こうよ!」

 麻由香ちゃんは土手の草原にレジャーシートを敷いて花火を眺めている人々の一角を指さす。クラスのみんながほぼ勢揃いで仲良く固まっていた。

「お、俺も……?【行っていいの? 俺なんか邪魔じゃない?(;´д`)】」

 沢田くんは集団にびびって心の中でピヨっている。
 私は微笑んだ。


「もちろん!」
「うん……【ありがとう、佐藤さん*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*】」


 沢田くんを連れてみんなのところに合流すると、花火が打ち上がった時にも負けない歓声が起こった。

「沢田くん! 来てないかと思った!」
「沢田くん、浴衣似合う! かっこいい~!」
「これでみんなそろったね! 良かった~! もうすぐフィナーレの30連発だよ! 一緒に見ようよ沢田くん!」


 あたたかい笑顔に迎え入れられて、沢田くんは無表情で「あ、うん」と返す。
 でも、心の中はこう。



【みんな、しゅきーーーーーーー!!!。・°°・(*´Д`*)・°°・。】


 沢田くんの心の声を聞いて私も嬉しくなる。
 良かったね、沢田くん。



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