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沢田くんと誘拐
しおりを挟む「待ちな」
すると今度は別の声が私の背後で響いた。
カチャッと謎の金属音がして、私の背中に硬い道具が当てられる。
これって、なに? もしかして……ピストル⁉︎
「佐藤さん!【((((;゚Д゚)))))))】」
「騒げばこの女がどうなっても知らねえぞ」
周りの人たちはまだなまはげが連行されていった方を見てツイートやトークに夢中になっている。私たちの異変には誰も気がついていない。
そっと振り向くと、私の背後にはやはりグラサンをかけたサンタがいた。
こっちのサンタは茶髪の男だ。
「動くな。おとなしく俺たちについて来い」
「くっ……!【俺はどうなってもいいから佐藤さんだけは助けて(;ω;)】」
おんみつを解いた沢田くんを、金髪グラサンタが捕まえる。
「手間かけさせやがって。あとでたっぷり楽しませてもらわないとな」
凶悪そうな笑い声を出す金髪グラサンタ。
私たちは二人のサンタに捕まって、大通りの外れに停めてあった車の後部座席に押し込められた。
運転席にはまた別のサンタが座っている。前方を向いていて、顔はやはり分からない。
茶髪グラサンタがその助手席に座り、金髪グラサンタが沢田くんの隣に無理やり座った。
【こ、これって誘拐⁉︎ どうしよう、俺が幸せを感じすぎたせいでこんな不幸に佐藤さんを巻き込んでしまったんだ……!(;ω;)全部俺のせいだ!!】
沢田くんが私の隣で激しい後悔に襲われている。
【ごめんね、佐藤さん。゚(゚´Д`゚)゚。俺のせいでごめんね……!】
悪いことは全部自分のせいにしてしまう沢田くんの震える手に、私はそっと自分の手のひらを重ねた。
──沢田くんのせいじゃないよ、大丈夫。
そう言いたいのをこらえて、私は沢田くんに微笑みかけた。
【佐藤さん、こんな状況なのに俺を責めるどころか励ましてくれるなんて……! なんて優しいんだ! もう、もう、本当に……】
沢田くんは私の手をぎゅっと握り返した。
【……大好きだ】
誘拐犯の車の中で、心のこもった声を聞いてしまった。
ごめんね、沢田くん。
謝るのは私の方。
だって、だって……。
「おい。こいつにアイマスクさせろ」
助手席の茶髪グラサンタが指示を出し、金髪グラサンタが舌打ちしながら沢田くんの目をアイマスクで隠した。
目的地が近いからだろう。
沢田くんは私が人質に取られているからなのか、おとなしくアイマスクを着けていた。
やがて車が停まり、私たちは無理やり降ろされた。
「入れ」
ドアの開く音がして、沢田くんが目隠しされたままおそるおそるそのドアを通過する。
すると──。
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