遠い記憶、遠い未来。

haco.

文字の大きさ
46 / 121

忘却の空

しおりを挟む
蓮の部屋でサキは寝ていた、ふと「朝の何時間だろうか」と思いながら時計の針を見ると8時をまわっていた。

まだ8時か・・・

ベッドから見える外の景色を眺めながら昨日のことを思い出していた。

蓮の辛そうな顔を。

もう一人の「自分」と対面した時のあの顔が。

あの時、サキはどうすることも出来なかった。
ちゃんと部屋から引き離すべきだったと悔やんでいた。

初めて見るもう1人の蓮は、いや!厳密に言えば「山内透吾」は
蓮が見てどう思っているのだろう。
生まれてきた意味に蓮は後悔しているのか。頭の中が瞑想していた。

「アチ!」キッチンから蓮の声が聞こえている。

起き上がるとキッチンまで向かってみた。

「おはよう」

「あっおはよ!サキの分のご飯も作ってるよ」

いつもの蓮だと思いたかった。でも見ていて分かる。
無理に明るくしているだけだと。


テーブルに、目玉焼きに食パンとサラダを揃えると
「なあ、サキ!俺な。お前に変わりに社長やってほしいんだ」
突然、蓮は社長辞表を言ってきた。

「おい!蓮。俺はならないぞ!」

「それにお前が作った会社だぞ!」

蓮は、椅子に座ると「俺のビジョンが見えたんだ」
「会社にはテツとカオルがいて、サキは社長をしてた。当の自分がいないことに気付いたんだ。」

「たかが、夢だろ?」とサキは冷たく言った。

「いや。あの時、もう1人の自分と会った時に見えたんだ。彼が起きる頃には、俺は起動停止すると。心の中に話しかけてきたんだ。」


「山内透吾がか?」

「うん」

「おそらくオヤジの研究から想定外のことだろうと思う」

「俺と山内透吾は、シンクロしあってるんだ」
「山内透吾が滅びれば自分は、助かる!」
「俺が死ねば、山内透吾は息を吹き返すんだ」
「どっちかでしかない」

サキは、聞くことしか出来なかった。反論もできない。

「俺はじゅうぶん生きたさ。ただのクローンでしかないんだから」

「蓮・・・」


「テツとカオルにはどうするんだよ」サキの顔には寂しさが滲み出ていた。

「伝えてくれ。俺がクローンだったってことを」

「サキにはほんとに迷惑かけぱっなしだ。もう十分だ。」


さっきまで温かったはずのパンと目玉焼きはもう冷めていた。

「もう、探さないでくれ。ここには来れない。人間でもない俺がいる所じゃない」


サキは玄関にすでにもう荷物は揃えているのが見えた。

蓮は立ち上がり、玄関まで向かった。

サキは追いかけたが、ドアが閉まるその瞬間。

「ありがとう」

蓮は満面の笑みでドアを閉めて行った。
サキは、ずっと蓮を救いだそうとしていた。

でも、自分の手では結局、救うことは出来なかった。

こうなってしまった責任は「自分」なのだから。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

【完結】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!

カナタカエデ
ファンタジー
八十歳で生涯を終えた、元王宮侍女カリナ。 その最期の瞬間――枕元に、かつて仕えた王女アメリアが現れた。 「お願い…私の人生をやり直して。国を、私を、救って――」 次に目を開くと、カリナは十八歳の“王女アメリア”として転生していた。 彼女は知っている。 このままでは王国は滅び、愛する主君が破滅する未来を。 未来を変えるため、アメリアは 冷徹と噂される英雄ヴァルクとの政略結婚を選ぶ。 これは、かつて守れなかった主人のための転生。 そのはずなのに――彼への想いは、気づけば変わり始めていた。 王女と英雄が紡ぐ、破滅回避ラブファンタジー開幕。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 挿絵はA I画像を使用 10/20 第一章完結 12/20 第二章完結 2/16 第三章完結 他サイト掲載 (小説家になろう、Caita)

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...