遠い記憶、遠い未来。

haco.

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覚醒火山

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糸島から離れた姫島に漂流していた。

九州本土から離れているところもあって被害は少なかったようだ。

蓮は、沖に上がると、体の痛みを訴えていた。

尋常ではない痛みは手の神経までも震えさせていた。

「痛っ!」

目の前に挙げた手をみていると

「これは・・・いったい」

手が透けていた。砂地が見えるほどの透けた手は自分の存在が人間ではないことを
改めて実感していた。

「はあはあ・・・。」

自分ではない感覚が全身を覆っていた。
この状況で思っていたことがあった。

「まさか・・山内藤吾が目覚めるのか・・」

「この自然の脅威は彼が引き起こしたのか・・」

遠い地から発信しているのではと思っていた。

今ではどこにいるのかわからないが、どこで彼が寝ているのか。誰も知り得るものはいなくなっていた。


「あ、ミユナ!そういえばどこにいったんだ」

サキとテツ・カオルなどみんなはどこにいったのだろうか。
考えたくもなかった。

今目にしている光景は、人間はおろか生物さえも消して去っていった。

彼らももうすでに・・・

九州全土は、ほとんどが壊滅状態へと変わっていた。
地殻変動によるマグマと地盤のズレによる地震で町そのものを崩れ去っていた。
家やアパート・ビルなども倒れては、崩壊していく、そうした原因も地殻変動だった。

そして各地の火山地帯の叫びが地球じたいを変えていった。

そんな島にもしかして、ミユナとサキ達は飲み込まれたのだろうか。

今でもテレポートしていくべきか考えいた。

「どうせ、彼の身体なんだ。俺がどうにかしないといけないんだ。」

体全身に力を込めて見た。

「ダメだ!」

身体が透けている状態では、できないようだ。

身体は少しづつ変化をしていった。

砂地が見えていた手の平がすこし戻りつつあった。

だが目の前の手の平に違和感を感じていた。

「誰だ・・・」

蓮自身の手ではないことは確かであった。

「うっ・・・・・」

頭痛が響きながら、手を頭に抱えると、自分の身体の変化をしていく姿が
目の前にあった。

自然の脅威の変化と蓮の身体の変化が連動しているようだ。

クローンとしての感覚は、一つの体型として進化を遂げていく。

頭痛が起きるとともに噴火の勢いも激しさを増していってた。

余震は、蓮のところまで広がっていた。

「はあはあ・・・・」

《セイカ・・・・・》

微かに聞こえてくる男の声。

「またか、レンなんだろ」

《これは、神の怒りでも君の怒りでもない》

《この世の自然の摂理だ》

「なにを言ってるのか、さっぱりだ」

頭に響いてくるレンは、ささやくように耳元に聞こえていた。

頭を抱え込みながら地に頭をねじ込んでいた。
頭痛と幻聴が蓮を苦しめていた。

「蓮!!!」

え?・・・・・

地から頭を上げるとそこにいたのは

「ファルファト教授・・・・」

「よかったあ・・・間に合ったよ」

「なぜ、ここがわかったんですか?」

「ああ・・・私の中の彼がここだと教えてくれたんだ」
ファルファトは答えた。

「これはどういうことなんですか?」蓮が言うと

揺れる地面によろよろと立ちながら、
「これは地球の中心から発信されているようだ」
とファルファトは説明をする。

「つまり、これはセイカの意思ということか・・」
蓮は疲れた顔を隠さず意のままに話をしている。

「新たな変動が生まれようとしている」
ファルファトはこの世界を見届けようとしていた。

「なあ、蓮くん。最後に伝えておこう。君が求める地は北海道に行けばある。そこに山内藤吾が寝ている」

「え?・・・なぜそんな遠くまで」

「わたしの中のレンくんが教えてくれたよ。彼らは運命共同体のようだ。」

「そうか・・・山内藤吾こそ、セイカの生まれ変わりだからか・・」

「ああ・・そうだ。セイカとレンは地球に存在する運命共同体ということ」

ファルファトと蓮が話をしていると、背後から茂みの奥から迫ってきているものがあった。
富士山ほどの高さを誇る、巨大な津波が迫っていた。
揺れる地は、震度の強度を高めていく。

「もう君とはここでお別れだ・・・。」ファルファトは心を決めたように悟っていた。

「え?」

ファルファトの後ろに巨大にたたずむかように大きな影が迫っていた。
蓮は見上げると、その化物は覆いかぶさってきた、轟音の波を叫びながら。

「また、来世で会おう・・・・」


「いやだ・・・・・・!!」


《ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・》

「ぶわ!!!」叫びながら、巨大津波は蓮達を飲み込んでいった。



《コポコポ・・・・・・・・・・・・・》


轟音が響く津波の中で、蓮は生きている・・・。

だが、ファルファトの存在はもうそこにはいなかった。

あの言葉を託して・・・・

「また、来世で会おう」


そして蓮の身体の進化はまだ続いていた。

渦の中で揉まれながらも・・・・・・












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