遠い記憶、遠い未来。

haco.

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初雨の涙

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空から雨がこの世界を潤すように落ちてくる。

ポタポタ・・・ピチョン。さらに落ち続けている。

落ちるほど、植物たちの命の糧になっていく。

目の前のぼんやりと広がる景色をセイカは雨宿りをしながら感じていた。

いつもより重くなった荷物を担ぎながら、リュックを肩から下ろす。

廃墟と化した、L型に倒れたビルの合間で休憩をと考えた。

アウトドア用品で揃えた折りたたみの椅子を開いては、ミニテーブルを立てた。

もってきたカップラーメンを取り出して、バーナーに火をかけた。
雨が止むまでここで一休みをしよう。

雨降る景色を眺めながらも、またよくない癖をしてしまう。

あの時、手を離せていなかったら・・・ミユナは生きていたのだろうか。
手の感触がまだずっと引きずっていた。

《お父さん・・・・》

あの記憶を思いだすことが度々あった。

このセイカの姿になったとしても記憶はそのまま残っていた。


それが今、目の前にいる自分だった。

「もう人間ではないのかも・・・自分」

「最初っからそうだったのかも・・」

思い詰めていると、お湯が湧く音で現実に戻ってきた。

「とりあえず。。ご飯食べて元気ださなきゃね」

自分自身に勇気をつけるために、活を入れた。

「うん。うまい!やっぱりカップラーメンはシーフードだね」

降り注ぐ雨の中、セイカは黙々と食べ続けた。

ファルファト教授が言っていた「山内透吾」が眠る北海道まで

歩き続けることを決意していた。

程遠い道のりの旅はまだ始まったばかりだった。

「よし!次に目指す先は、山口。遠いなあ・・・・。」

「がんばるっきゃない!」


この身体になってテレポートができなくなっていた。

「とにかく進まなくては」

どこかで人に会えることを願いながら。
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