星空の声

haco.

文字の大きさ
上 下
15 / 16

廃墟

しおりを挟む
「はあ・・はあ・・・」

鬱蒼としたビル内に入ったカナタは母親をおぶっては、子供と手を繋いで
身を潜めていた。

「はあ・・ゴク!」
勢いよく走ったおかげで息があがっていた。

「あんた、大丈夫か!?」カナタは床に母親を寝かせた。

ただ、もうすでに意識はなかった。

「なんでだよー。おい!・・・・」

顔に手を置いてみても顔はすっかり冷めていた。
手首を触ってみると、脈も動いていない。

「冷たい・・・もうダメだったか」

手を繋いでた子供も横たわってしまっていた。

もしかして・・・撃たれていたのか・・・

「君!!」子供の身体をゆすってみた。


身体の隅々まで見てみたが、撃たれた形跡はないようだ。

でもなぜ? 


親子は静かに息を引きとった。

「どうして・・・・」

助けたはずの命はすでにもうなかった。

背後から、後輩の当麻が走ってきた。

「うわ!」最初に出た言葉だった。

「先輩。どういうことなんですか・・」

「きみ、起きて・・・」幼い身体をゆすってみる。でも動く気配はない。

「先輩・・・どういうことなんですか・・一体なにが」


「わからない・・・確かにさっきまで一緒に走ってきたんだ。それなのになぜ。感染なのか!?」


「確かに、考える話かもですよ。先輩とぼくはヘルメットをかぶっていた。それにAGASAも防御マスクをつけていた。もうすでに遅かったのかもですよ」


「考えられるな・・・、こんな子供までも・・・」カナタは泣いていた。

この廃墟のビルの中で

しおりを挟む

処理中です...