あの頃の夏には

haco.

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世界中の誰よりもきっと

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「ねえねえ・・」

身体を揺らす寧々が目の前にいた。

寧々の表情は、真っ赤にそまった太陽のようなほっぺをしていて、まっすぐと恵美を見つめていた。

改めてみる寧々の顔はやっぱり可愛い。。。と思ってしまう。親バカみたいなものだろうけど。

一瞬のこの時間でも大切にしたいと思ってしまう。

「ねえねえ!!」

寧々の言葉で少し夢から覚めてきた。

「ふああー。」あくびが出る。

時計に目を向けると、午前の7時に針が来ていた。
頭がまだボケているが、ゆっくりとベッドから出た。

「もう7時かあ、さてと支度して出なきゃね」

「寧々は支度終わった?」

「うん」
階段を下り、洗面所まで向かう。
髪を後ろに結びながら、歯磨きをする。鏡越しで自分と顔を合わせると優斗とのことを考えてしまう。
彼は今、夢の中の自分<恵美>をずっと体験しているのだろうか。これは夢のなのか。と思ってしまう。

「ねえねえーー。もう7時半だよー」テレビを見ている寧々が声をかけてきた。
そんな寧々はもう小学生2年生。自分のことは自分でできる年だ。

恵美は、急かされるように着替えて、パンと牛乳を急いで食べる。
寧々は、その合間いつもテレビに夢中になっていた。

歯磨きに、襟付きの白シャツに灰色パーカーにまといカジュアルな服装にまとめて、寧々と一緒に
家を出て行った。

母は、恵美たちより早く、市場でおろし作業をしないといけない為にもっと早い時間に漁港へ向かっていた。
船出と共に、港内の清掃とタグの整理に追われていた。

「おーーーい!」遠くから声が聞こえてくると、「お母さん行ってきまーす!!」寧々が手を振ってきた。

一度こんな風景を<夢人>優斗は思ったことがあった。
「こんな幸せな生活が、続きますように」にと。

向かい岸から寧々と恵美が母の働く姿を見ながら、この場を後にした。

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