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黒いアスファルトに仄かに熱気が残る夏の夜道。
高校生の英剛は一人道路の端を歩いていた。
スマホで見た時間は既に10時を過ぎているが、一応親には連絡してあるから問題ない。
何せ学生の特権とも言うべき長い夏休みだ。
昼間の友人との馬鹿騒ぎを反芻しながら、気づくと地元のごみ処理施設の前まで来ていた。
この粗大ごみの破砕処理施設は、日中は重機の音やごみを破砕する音で工事中宛らに騒がしいが、夜は処理中の瓦礫を残して静まり返っている。
そのはずが、何故か今日は前の道路に人が何人か集まってきており、大声を出している者もいる。
「・・・・・・?」
不思議に思った彼がよくよく見てみると、施設を取り囲むフェンスが一部引きちぎられている。
更に欠損したフェンスの先の施設に車がめり込んでいるのだ。
どうやら車がフェンスを突き破って施設内に入り、建物に衝突したらしい。
「・・・やっべー」
面白そうなものを見つけたら画像に残さずにいられないのが現代人であり若者だ。
英剛は早速スマホを構えて事故写真をカメラに収めた。
カメラを向けた先には破損した車と、処理前の粗大ごみの山が聳え立っている。
夜の闇でも視認出来る廃棄物がいくつか、机やソファー、キャリーバッグらしき物体、果てにはマネキンなんてものまで見つけた。
最も胴体に腕がついた部分的な代物で、肝心の頭や足の部分は無い。
「…気味わりー」
思わず呟いた。
腕だけのマネキンは、暗がりの遠目だと人体の一部に見えなくもないからだ。
作り物だと分かっていても充分薄気味悪い。
事故を起こした車の運転手は何処にいるのだろう。
周囲に集まっている処理施設の関係者らしき人や、野次馬の住民を見渡したが、運転手と断定できそうな人間は見つからない。
きょろきょろしているうちに、近くの大人から、
「君、もしかして高校生? 早く家に帰った方がいいよ。いくら休みでも…」
説教じみた注意を受けそうになったので、英剛は早々にその場を離れていった。
翌日になって自宅の居間で昨日撮った画像を確認してみると、破損したフェンスはよく写っていたが、車と粗大ゴミの山ははっきり見えなかった。
「ちきしょークルマがないと衝撃度が…」
もう一回撮りに行こうか、等とぶつぶつ一人呟いていると、階段からドスドスと足音が聞こえてきた。
「ねえヒデ! ほんっとうにあたしの部屋入ってない? 服無くなってるんだけど」
英剛は面倒くさそうに、姉に返事した。
「お前の服なんざ知るかボケ。よく探せよ」
「んーヒデじゃないとなるとお母さんかなー…」
英剛の姉は他県の大学生で、今は夏休みを利用して親元に帰って来ている。
久しぶりに家が狭くなったもんだと心中毒づきつつ、写りの悪い画像を右から下から眺めていた。
「え、何それ」
いつの間にか背後にいた姉の声に思わず振り返る。
「他所のフェンス壊して…あんたもしかして、やばい事やってんの?」
「…ちげーよ! 勝手に覗くんじゃねえ! コレも俺がやったんじゃないって」
「変なスマホの見方して…じゃあ何処なのよ」
「近くのゴミ処理施設だよ。昨日帰るときに事故ってたの」
それを聞いて姉の表情が変わった。
「へえー事故ねえ…ちょっと興味ある。見に行ってみようかな」
「見に行ってどうすんだよ。机とかマネキンとか持って帰んの?」
「マネキンなんてあったの?…じゃなくて、地元の出来事は知っておくべきでしょ。ニュースになってたかしら…」
アパレルショップでアルバイトをしている姉はマネキンという言葉に反応している。
本当は単なる好奇心のくせに、と英剛は思ったが、口には出さずに置いた。
高校生の英剛は一人道路の端を歩いていた。
スマホで見た時間は既に10時を過ぎているが、一応親には連絡してあるから問題ない。
何せ学生の特権とも言うべき長い夏休みだ。
昼間の友人との馬鹿騒ぎを反芻しながら、気づくと地元のごみ処理施設の前まで来ていた。
この粗大ごみの破砕処理施設は、日中は重機の音やごみを破砕する音で工事中宛らに騒がしいが、夜は処理中の瓦礫を残して静まり返っている。
そのはずが、何故か今日は前の道路に人が何人か集まってきており、大声を出している者もいる。
「・・・・・・?」
不思議に思った彼がよくよく見てみると、施設を取り囲むフェンスが一部引きちぎられている。
更に欠損したフェンスの先の施設に車がめり込んでいるのだ。
どうやら車がフェンスを突き破って施設内に入り、建物に衝突したらしい。
「・・・やっべー」
面白そうなものを見つけたら画像に残さずにいられないのが現代人であり若者だ。
英剛は早速スマホを構えて事故写真をカメラに収めた。
カメラを向けた先には破損した車と、処理前の粗大ごみの山が聳え立っている。
夜の闇でも視認出来る廃棄物がいくつか、机やソファー、キャリーバッグらしき物体、果てにはマネキンなんてものまで見つけた。
最も胴体に腕がついた部分的な代物で、肝心の頭や足の部分は無い。
「…気味わりー」
思わず呟いた。
腕だけのマネキンは、暗がりの遠目だと人体の一部に見えなくもないからだ。
作り物だと分かっていても充分薄気味悪い。
事故を起こした車の運転手は何処にいるのだろう。
周囲に集まっている処理施設の関係者らしき人や、野次馬の住民を見渡したが、運転手と断定できそうな人間は見つからない。
きょろきょろしているうちに、近くの大人から、
「君、もしかして高校生? 早く家に帰った方がいいよ。いくら休みでも…」
説教じみた注意を受けそうになったので、英剛は早々にその場を離れていった。
翌日になって自宅の居間で昨日撮った画像を確認してみると、破損したフェンスはよく写っていたが、車と粗大ゴミの山ははっきり見えなかった。
「ちきしょークルマがないと衝撃度が…」
もう一回撮りに行こうか、等とぶつぶつ一人呟いていると、階段からドスドスと足音が聞こえてきた。
「ねえヒデ! ほんっとうにあたしの部屋入ってない? 服無くなってるんだけど」
英剛は面倒くさそうに、姉に返事した。
「お前の服なんざ知るかボケ。よく探せよ」
「んーヒデじゃないとなるとお母さんかなー…」
英剛の姉は他県の大学生で、今は夏休みを利用して親元に帰って来ている。
久しぶりに家が狭くなったもんだと心中毒づきつつ、写りの悪い画像を右から下から眺めていた。
「え、何それ」
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「他所のフェンス壊して…あんたもしかして、やばい事やってんの?」
「…ちげーよ! 勝手に覗くんじゃねえ! コレも俺がやったんじゃないって」
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それを聞いて姉の表情が変わった。
「へえー事故ねえ…ちょっと興味ある。見に行ってみようかな」
「見に行ってどうすんだよ。机とかマネキンとか持って帰んの?」
「マネキンなんてあったの?…じゃなくて、地元の出来事は知っておくべきでしょ。ニュースになってたかしら…」
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