「君」とともに、、、

空音

文字の大きさ
上 下
10 / 23
第二章 狂った愛情

01

しおりを挟む


それから1週間がたった。

その間、俺は一度も学校へ行かなかった。


いや、行けなかったんだ。

アイツ、西尾に会うのが恐くて。


何度も忘れようとした。

だけど、忘れたいと思えば思うほど、脳裏にあの時の西尾の無機質な表情がリアルに浮かびあがってくる。

それでも尻の傷は治りつつある。

このままずっと休み続けるわけにいかない。
そう頭では分かってはいるが、いざ、学校へ行くとなると足がすくんでしまう。



休んでた間、俺の携帯にはクラスの友達から毎日メールが届いた。
それだけは俺の病んだ心の救いだった。

明日は学校に行こう…―


そうして1週間後の朝、俺は学校の教室前に立っていた。


頑張れ、俺…

教室に入ると、俺に気づいた奴らが大丈夫かと声をかけてくれた。


こないだの事バレてないや…


周囲のいつもと変わらない雰囲気に俺はいくらかホッとした。

幸い、西尾はまだ来てなかった。



この日、結局西尾は来ないまま放課後になった。

何人かにカラオケだの合コンだのに誘われたけど、そんな気分でもなかったので全部断った。


誰もいない教室。

ふと脳裏にあの時の事がよぎった。


考えるのはよそう、あの事はもう忘れるんだ。
机の中から適当に教科書をひっぱり出して鞄に詰め込む。一刻も早く帰りたい。



「佐倉?」

「っ!!」


聞き覚えのある声に俺の身体はビクッと跳ねた。
手に持っていた教科書類がバサバサと床に落ちる。


「に…しお」



振り返ったそこには、

あいつが立っていた。

 
 
 
しおりを挟む

処理中です...