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アキとユズ*最終章
はなまるをあげよう*8
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「美味いわー、マジで美味いわ、ユズー。あー、俺しあわせー」
「たくさん作っちゃったから、いっぱい食べて食べて。なんなら持って帰ってもいいし。」
「マジで?そうしようかなー。もうホントねぇ、俺、全然まともなの食えてなかったから…」
「そうなの?でも全然肌荒れたりしてないじゃん。」
「野菜とか魚とか食うようにしてみたの。でもさー、なんか全然美味くない。やっぱユズが作ったのがいい。」
「またそんなお世辞言って…ご飯のお替りは?」
返事の代わりに空になった茶碗を差し出すと、ユズは呆れたように、でも嬉しそうに苦笑してそれを受け取ってくれた。茶碗の中の真っ白なご飯粒までユズのように笑っているように見えた。
お世辞なんかじゃないよ。ユズに逢えなかった間、俺の食事はたった数日でもひどい味だったんだから――――鮮やかな緑色の青梗菜を摘み、白飯と共に飲み下しながら俺は言葉を飲み込む。
一方で、肉や野菜を咀嚼して飲み下しながら、一昨日とついさっき知ってしまった事が幻になればいいと思っていた。
久々のユズの手料理は本当に美味しくて、口にできたことがとても嬉しくて仕方なくてしあわせな気分であるのは本当の事なのに、どうしても頭の片隅には気になって仕方がない真実の存在が影を落としていた。
その存在を意識しないでおこうと料理を食べることに神経を注げば注ぐほど、それは影を濃くしていった。真実から眼を逸らすな、そう、静かに主張する影の気配が表情や言葉の節々に出してしまわないように耐えることに必死になっていた。
人を問い詰めるほどの意気地もなければ、欺くほどの度胸もない……俺は、所謂心理戦的な言動が苦手だ。
苦手、というよりもからきしできないと言った方がいいだろう。アタマがキレないという問題以前に、相手や自分の精神に負担が掛かるような状況に耐えられないのだ。
昔から、子どもの頃からそうだった。逆転のチャンスの懸ったシュートを、俺が打たなきゃいけないサッカーの試合だとか、自分への好意の見え隠れする女の子との合コンでの会話だとか、自分の言動で物事が大きく動くような場面に弱い性質なのだ。
弱いだけで結果が良ければいいのだろうけど、たいていの場合、奇跡なんてそうそう容易く起きるものではないから、見るも無残な結果になることが殆どだった。弱腰な自分を奮い立たせて挑むことだってなくはなかったけれど、そういう場合ほど結果は散々だった。
積み重ねてきた失敗が生きていると言えば生きているのか…おかげで俺はかなりの臆病な性格になってしまった。
臆病な性格が、更に意気地や度胸をすり減らしていって、今回みたいな隠し事されているのは明らかな状況でも、ユズに問いただすことを躊躇わせている。
「たくさん作っちゃったから、いっぱい食べて食べて。なんなら持って帰ってもいいし。」
「マジで?そうしようかなー。もうホントねぇ、俺、全然まともなの食えてなかったから…」
「そうなの?でも全然肌荒れたりしてないじゃん。」
「野菜とか魚とか食うようにしてみたの。でもさー、なんか全然美味くない。やっぱユズが作ったのがいい。」
「またそんなお世辞言って…ご飯のお替りは?」
返事の代わりに空になった茶碗を差し出すと、ユズは呆れたように、でも嬉しそうに苦笑してそれを受け取ってくれた。茶碗の中の真っ白なご飯粒までユズのように笑っているように見えた。
お世辞なんかじゃないよ。ユズに逢えなかった間、俺の食事はたった数日でもひどい味だったんだから――――鮮やかな緑色の青梗菜を摘み、白飯と共に飲み下しながら俺は言葉を飲み込む。
一方で、肉や野菜を咀嚼して飲み下しながら、一昨日とついさっき知ってしまった事が幻になればいいと思っていた。
久々のユズの手料理は本当に美味しくて、口にできたことがとても嬉しくて仕方なくてしあわせな気分であるのは本当の事なのに、どうしても頭の片隅には気になって仕方がない真実の存在が影を落としていた。
その存在を意識しないでおこうと料理を食べることに神経を注げば注ぐほど、それは影を濃くしていった。真実から眼を逸らすな、そう、静かに主張する影の気配が表情や言葉の節々に出してしまわないように耐えることに必死になっていた。
人を問い詰めるほどの意気地もなければ、欺くほどの度胸もない……俺は、所謂心理戦的な言動が苦手だ。
苦手、というよりもからきしできないと言った方がいいだろう。アタマがキレないという問題以前に、相手や自分の精神に負担が掛かるような状況に耐えられないのだ。
昔から、子どもの頃からそうだった。逆転のチャンスの懸ったシュートを、俺が打たなきゃいけないサッカーの試合だとか、自分への好意の見え隠れする女の子との合コンでの会話だとか、自分の言動で物事が大きく動くような場面に弱い性質なのだ。
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