Forever Friends

てるる

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イノダのカシマさん

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珈琲とレモン・パイが現われると、
カシマさんは相好を崩した。
垂れ目になっていますよ、カシマさん。

俺はいつかここのビフカツ・サンドを食べようと
思っている。
俺が大好きな時代小説家が、それを好んで
お召し上がりになっていたと知ったからだ。
だが、高い。
とても高い。
真っ当な稼ぎがあるんだし、毎日食べるものではないから、
たまの贅沢にいいじゃないかと自分に言い聞かせるのだが、
やはり、同じ値段なら、
デザートまで付いたランチ・セットにしたいと
思ってしまう主婦根性が邪魔をする。


「じゃあ、次来たときは一緒に食べようか?」


でも、レモン・パイが食べられなくなっちゃうな、
と、カシマさんは、惜しそうにふわふわのメレンゲを
フォークで突つく。
共喰いですよ、カシマさん。

一番おいしい先っぽのところから食べないと
いけないのが悲しいと言いながら、うれしそうに
あむあむとカスタードを口に運んで、
カシマさんは、


「しあわせー」


陶然たる面持ちで、ため息をついた。
ハイ、しあわせ、いただきました!
これで俺も思い残すことなく京都を発てるよ。


「工藤くんさ、最近、小説書いてないよね?」


おもむろに、カシマさんがきょろんとした目で訊いてきたから、
珈琲が気道に入りそうになった。
く、口の端にカスタードを付けたままですよ、カシマさん。


「いつも読んでくれてありがとう」

俺の声は少し震えていたかもしれない。
あまり感想を生の声で聴きたくないんだよ、俺は。
あれを描いているのは、俺であって俺ではないからな。
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