Forever Friends

てるる

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イノダのカシマさん4

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悲しみと祈り、とは。

考えたこともなかったな。

そんな美しい要素を見出してくれてありがとう。
それはきっと、ピュアなカシマさんならではの
読み方なのではなかろうか。

アタリマエのことだが、ひとは誰しも、
ないものを失うことはないわけで、
何か手に入った瞬間、それを失う恐怖を
知ることになる。

俺は恵まれたニンゲンだったと思う。
末っ子の男の子として蝶よ花よと愛でられ、
大学受験こそ挫折したとはいえ、別に就職に困難を
来すレベルではないし、学生生活はエンジョイしてたし、
カノジョを得たときは、その幸運に眩暈がしそうだったし、
偏差値格差は不安要素だったけど、カシマさんが一蹴してくれたし、
カノジョが就職するまでは、何ら混乱はなかった。

あのとき。
彼女から別れを切り出されたときは、呆然とした。
彼女は研究に打ち込みたいと、自分の非をひたすら詫びた。
俺のせいじゃない、と。

でも、結局俺はその瞬間、彼女の人生に必要じゃないニンゲンだと
決定づけられたわけで。

そのときも傷心の俺は、結果的に、
カシマさんを頼った。


別れを告げられて間もないOB会の日。

カシマさんが久しぶりに鴨川の等間隔を観たいと
言うので、顔が切れそうに冷たい風が吹きすさぶ
三条河原を四条に向かってぷらぷら歩いているとき、
カノジョの消息を尋ねるから、別れたと言うと、
転瞬カシマさんの顔が凍り付き、その丸い目から、
見る見るうちに涙がふきこぼれた。

ちょっと、待て!!
違うだろ?
泣きたいの、俺!俺のほう!!

酸欠の金魚と言わんよりは、餌をねだる鯉のようだと、
こんな深刻な状況でもつい、カシマさんには笑いを
伴ってしまうのだが、一所懸命ぱくぱくと何かを
言おうとするのに、涙と鼻水とが寒風でミックスされて
ぐじぐじになって、言葉にならない。

てゆーか、この状況は誰がどう観ても、
俺が女の子を泣かしている之図!

気の済むまで涙腺ダムから放流したカシマさんは、
ティッシュを取り出し、音高く鼻をかむと、
俺のコートの袖を掴んで、ぶんぶん振った。
何がしたいんだ、一体。

慰めてくれてるのか、コレ。








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