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3.僕の嫌いな婚約者
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いつも勉強している時間に陛下が呼び出してきた。僕にとって陛下は陛下であり、父親ではなかった。ぼくに関して無関心な陛下は、王妃の嫌がらせもわかっていながらどうでもいいと切り捨てている。女でないのだから、駒として使えればそれで良い。言外にそう言われているようであった。
王城まで侍従に連れられて歩いていく。煌びやかで豪華なそこはいつまでたっても慣れない場所であった。人がすれ違いざまに、くすくすと笑っていく。悔しいような怒りたいような気持ちをグルグルと抱えながらも、真っ直ぐ胸を張り優雅に歩く。王族としていつも毅然とした態度でいなければならないと教えられた。人々の視線に不快感があるが、それを顔に出してはいけない。足元をすくわれる。そのため、きゅっと口を引き結び無表情を装う。これが僕なりの仮面だ。
謁見の間につくと、護衛していた騎士達が僕の名前を呼び中へ促す。ふかふかの絨毯の上を今日はなんの用事だと考えながら歩いていく。そこにはたくさんの貴族達とともに同じ年ぐらいの子どもがいた。
「リト・フォン・ルチアーノ お前には王国の筆頭公爵家の嫡子 モルドット・ブライアンと婚約してもらう。」
「…えっ?…こんやく…ですか??」
「そうだ。これは決定事項である。せいぜい王家の恥にならぬように。」
「か、畏まりました。」
僕には衝撃である。今まで1度もそんな話は聞いていなかったのに…。僕の人生は陛下の手に委ねられている。今の僕ではどうしようも、ない…。
「では、少し庭で話してきなさい。」
「はい、陛下」
「ブライアン殿、行きましょうか。」
そう言いながらブライアンに手を差し出しエスコートしながら庭に出る。もちろん侍従達も遠目に配置されており、花を眺めながら話せるようになっていた。
しかし、庭に着いた途端それまでしていた穏やかそうな顔から顰めた顔になり、
「はっ!この手離せよ!俺はなお前なんかと婚約したくなかったんだ!父上がどうしてもというから…!
お前にモルドット家は渡さない!俺が当主になりお前はお飾りだ!」
「なんだこの気持ち悪い白髪は!ばばあみたいだぞ!役立たずな王子をもらってやるんだ。せめて顔の可愛い女だったらマシだったものを!」
「モルドット家に迷惑をかけないようにしろよ!俺のためにせいぜい働くんだな!はっ!」
だんだんとヒートアップしてきたのか声が大きくなり肩ほどまで伸ばした髪の毛をぎゅっと引っ張られた。ブライアンの方が背が高く上から大きな声で罵られることは初めてで怖い。
耳を塞ぎながら震える足で必死に立っている。髪の毛を掴まれ逃げ出そうにも逃げ出せない。
いたいいたいこわいだれかたすけてっ!
相手が高位貴族であることで侍従達は止めに入っていいのか戸惑っている間にさすがに不味いと判断され、ブライアンと離された。
僕はこんな奴と婚約したという現実を受け止められなかった。いやだ。いたいこわい。ぼくは…僕は一生こんなやつと一緒なのか…?絶望的な気持ちだった…。
気がつけば、離宮に帰ってきており、ベッドに身を放り出していた。どうやって帰ってきたか曖昧で、途中王妃にも王子王女達にも嫌味を言われたことだけは覚えている。それに対してはいつも通り対応出来ていたはずだ。様々な衝撃を幼い僕では受け止めきれていなかった。
確かに政略結婚として、筆頭公爵家として名を連ねているモルドット家は王家の血筋が欲しい。王家としてはそれなりの家格でいかに利益が出るように僕を売れるか。それが大事だったんだろう。理には叶っている。ただ、相手があんな暴力的な人だったなんて…。
グルグルと気持ち悪い。本当に僕はあんな男と結婚するのか?貴族として政略結婚も受け入れる責任があるのは分かっている。だけど、あれは無いでしょ。ないない。むりだよ…。
そこで僕は決意する。人に委ねた人生ではなく自分で将来を切り開いていこうと。出来れば婚約が無くなればいいし、お飾りと言われていたから、籍を置いていれば、もしかしたらその他は自由にできるかもしれない。僕は魔法に関する仕事に就きたいんだ!
手を力いっぱい握りしめる。僕が受け入れるだけではダメだと気がついた。この定まった将来からどう逃げ出すか策を巡らせはじめる。
王城まで侍従に連れられて歩いていく。煌びやかで豪華なそこはいつまでたっても慣れない場所であった。人がすれ違いざまに、くすくすと笑っていく。悔しいような怒りたいような気持ちをグルグルと抱えながらも、真っ直ぐ胸を張り優雅に歩く。王族としていつも毅然とした態度でいなければならないと教えられた。人々の視線に不快感があるが、それを顔に出してはいけない。足元をすくわれる。そのため、きゅっと口を引き結び無表情を装う。これが僕なりの仮面だ。
謁見の間につくと、護衛していた騎士達が僕の名前を呼び中へ促す。ふかふかの絨毯の上を今日はなんの用事だと考えながら歩いていく。そこにはたくさんの貴族達とともに同じ年ぐらいの子どもがいた。
「リト・フォン・ルチアーノ お前には王国の筆頭公爵家の嫡子 モルドット・ブライアンと婚約してもらう。」
「…えっ?…こんやく…ですか??」
「そうだ。これは決定事項である。せいぜい王家の恥にならぬように。」
「か、畏まりました。」
僕には衝撃である。今まで1度もそんな話は聞いていなかったのに…。僕の人生は陛下の手に委ねられている。今の僕ではどうしようも、ない…。
「では、少し庭で話してきなさい。」
「はい、陛下」
「ブライアン殿、行きましょうか。」
そう言いながらブライアンに手を差し出しエスコートしながら庭に出る。もちろん侍従達も遠目に配置されており、花を眺めながら話せるようになっていた。
しかし、庭に着いた途端それまでしていた穏やかそうな顔から顰めた顔になり、
「はっ!この手離せよ!俺はなお前なんかと婚約したくなかったんだ!父上がどうしてもというから…!
お前にモルドット家は渡さない!俺が当主になりお前はお飾りだ!」
「なんだこの気持ち悪い白髪は!ばばあみたいだぞ!役立たずな王子をもらってやるんだ。せめて顔の可愛い女だったらマシだったものを!」
「モルドット家に迷惑をかけないようにしろよ!俺のためにせいぜい働くんだな!はっ!」
だんだんとヒートアップしてきたのか声が大きくなり肩ほどまで伸ばした髪の毛をぎゅっと引っ張られた。ブライアンの方が背が高く上から大きな声で罵られることは初めてで怖い。
耳を塞ぎながら震える足で必死に立っている。髪の毛を掴まれ逃げ出そうにも逃げ出せない。
いたいいたいこわいだれかたすけてっ!
相手が高位貴族であることで侍従達は止めに入っていいのか戸惑っている間にさすがに不味いと判断され、ブライアンと離された。
僕はこんな奴と婚約したという現実を受け止められなかった。いやだ。いたいこわい。ぼくは…僕は一生こんなやつと一緒なのか…?絶望的な気持ちだった…。
気がつけば、離宮に帰ってきており、ベッドに身を放り出していた。どうやって帰ってきたか曖昧で、途中王妃にも王子王女達にも嫌味を言われたことだけは覚えている。それに対してはいつも通り対応出来ていたはずだ。様々な衝撃を幼い僕では受け止めきれていなかった。
確かに政略結婚として、筆頭公爵家として名を連ねているモルドット家は王家の血筋が欲しい。王家としてはそれなりの家格でいかに利益が出るように僕を売れるか。それが大事だったんだろう。理には叶っている。ただ、相手があんな暴力的な人だったなんて…。
グルグルと気持ち悪い。本当に僕はあんな男と結婚するのか?貴族として政略結婚も受け入れる責任があるのは分かっている。だけど、あれは無いでしょ。ないない。むりだよ…。
そこで僕は決意する。人に委ねた人生ではなく自分で将来を切り開いていこうと。出来れば婚約が無くなればいいし、お飾りと言われていたから、籍を置いていれば、もしかしたらその他は自由にできるかもしれない。僕は魔法に関する仕事に就きたいんだ!
手を力いっぱい握りしめる。僕が受け入れるだけではダメだと気がついた。この定まった将来からどう逃げ出すか策を巡らせはじめる。
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