魔法の魔ローダー✿セブンリーファ島建国記 弥生史上最悪の悪役令嬢と記される最強魔力少女は最愛の不死従者を手に入れて破滅フラグを叩き壊します!

佐藤うわ。

文字の大きさ
121 / 698
II メドース・リガリァと北部海峡列国同盟

エピローグII セブンリーフのモザイク模様 1

しおりを挟む
 ―メドース・リガリァ本国本城。
 シュッバッ!! ズシャッ!!
リュフミュラン北の小島の神殿の戦闘から魔ローダーのスキル、瞬間移動(長)で命からがら逃げて来た、ぼろぼろの魔ローダー、ル・ワンとデスペラード改だった。

「おおお、何という事だ!? 一体作戦はどうなったのだ??」
「何故二機はボロボロなんだ? サッワ様のエリミネーターはどうなったのですか??」

 城の一番目立つ中庭に現れた二機のボロボロの魔ローダーを見て、城の多くの人々が不安になった。

 ギギギ、バシャッ!!
 バシャッ!!
片腕を無くし、傷だらけのデスペラード改を動かし、ハッチを開け出て来るスピネル。庇う為に上に乗っかっていたデスペラード改がどいてくれたので、ココナツヒメのル・ワンもハッチを開ける。

「ふぅ~~~~~~早くお風呂に入りたいですわ。ねえ透明化の人?」
「………………」

 クレウは敵国の只中で生きたここちがしない。

「まおう軍本国に帰らないのですかな?」

 珍しくスピネルからココナツヒメに話し掛けた。

「そうですのよ、二十四時間経たないと瞬間移動(長)がスタンバイになりませんのよ、どうですの? 今晩は一緒にお風呂に入りまして、同じベッドでお休みいたしましょうか? うふふふ」

 ココナツヒメはスピネルにしな垂れかかったが、スッと片手で払いのけるスピネル。

「無理をするで無い。内心サッワの事が心配なのであろう。瞬間移動(長)を使えば何時でも逃げれるにも関わらず、粘りに粘ったのはサッワの帰還を待っていた為だろう。その事に関しては上官として礼を言う。しかしそなたはサッワの上官では無い、メドース・リガリァまおう軍共同作戦が終了した以上は共に行動する義理は無い。では待っている食べ物が居ますので」

 弁当屋の娘は、もはや家族ごとスピネルに付きまとっていた。

「なにさ……という事ですわ、透明化さん二十四時間後にはここより離れますの。貴方としてもここよりはまだ魔王軍の方が安心出来ると思いますわ。そこで静かにお休みになってなさいな」
「………………」

 クレウが操縦席から外を見ると、中庭のあちこちには兵がひしめき合っていて、どの様な結界が隠されているかも分からない。距離的にはメドース・リガリァから新ニナルティナまでは近いが、無事に辿り着けるかどうか思案している最中だった……何かの魔法を掛けられて眠りに落ちてしまった。

「私は一日二組限定の高級ホテルにでも泊まりますわ」

 そう言うとココナツヒメはふらふらと城から出ようとして、衛兵達が無言で避けた。

「またれいスピネル殿! 何を勝手に帰ろうとしておる! 報告をせんか!」

 二機の帰還の報告を受け、城内から血相を変えた貴嶋が走って来た。後ろからは少し遅れてゆっくりと、侍女を従えアンジェ玻璃音はりね女王も出て来た。

「は、これは申し訳ありませぬ」
「どうじゃったのだ? 共同作戦の成否は??」
「完全に失敗しました」

 貴嶋の血の気が引く。

「どういう事じゃ? サッワは??」
「サッワは恐らく戦死しました。北部海峡列国の要人や王族を一気に叩いて連中の出鼻を挫き、北部各国にえん戦気分を高めるという当初の作戦目標とは裏腹に、何か猛烈に強烈な人物と魔ローダーが現れて返り討ちに遭い、むしろ連中の虎の尾を踏み逆鱗に触れる事となり、各国の結束を強める結果となったでしょうな。作戦は裏目に出て完全に失敗です。申し訳ありませぬ」
「なんと…………こ、こら女王の前なるぞ、もう少し言葉を選べ!」

 話を聞いて言葉を失っていた貴嶋は、後ろに女王が居た事に気付いてさらに面目を失う。

「……大成功でした」
「遅いわ! もう良い帰って休息し、後に詳しい報告を上げい!」

 通常戦闘では中部小国群に破竹の勢いで侵略するメドース・リガリァだが、魔ローダー同士の戦いでは連敗した貴嶋が冷や汗を噴き出す。

「焦らないで下さい……」

 アンジェ女王がそっと貴嶋の手を握る。

「ひ、ひと目があります……」
「もう良いではないですか、わたくしと貴方とはもはや一連托生なのですよ。もし仮に、国が戦に破れ亡び、多くの人に憎まれ断頭台に登る様な事があっても、私はずっと貴方と一緒なのですよ」
「その様な事に……絶対になりません! ご安心を!!」
(その様な事があっても……貴方だけは無事にお逃げ下さい、私が必ずそうします故……)

 二人はしばし人目もはばからず、壊れた魔ローダーの前で手を握り合った。


 ―セブンリーフ大陸南部、まおう軍まおう城。
 シュバッ!!
あれから二十四時間が経っていた。まおう軍まおう城の中、魔ローダーが林立する格納庫にボロボロの魔ローダー、ル・ワンが瞬間移動(長)で帰還した。
 カコーーーーン!!
ル・ワンの操縦席から出て来るなり、ココナツヒメがハイヒールを脱ぎ捨て、思い切り床に叩き付ける。

「えええええい、忌々しい!! あのシールドを張っていた金髪の女!! 何なのあのブスは? アイツさえ居なければ作戦は成功したのに、アイツさえ居なければ恥をかかずに済んだのに!! 許せないわ、あの金髪女……者共、ル・ワンの魔法カメラ映像を解析して、魔法シールドを張って邪魔をした女の事を調べなさい!!」
 
 いつもの余裕たっぷりの表情と違い、アジトに帰還したココナツヒメは自分が提案した共同作戦が大失敗した事について、邪魔をした雪乃フルエレに対してあからさまに激怒していた。

「あ……お待ちなさい、それとサッワというメドース・リガリァの魔ローダー操縦者の少年が、ニナルティナで捕虜になってないかも調べなさい!」
「ハハッ!!」

 返事をして、ココナツヒメの配下の影の者共がシュシュッと消える。そうしてココナツヒメはふらふらとまおう城の中のクリアーな雑貨に囲まれた自室に戻り、クレウの事を完全に失念した!

「もう……誰もいないな?」

 粘り強く魔ローダー格納庫の中で、息を殺し待機し続けたクレウが活動を再開した。

「ここは……どこだ? 早く猫呼様とフルエレ様に会いたい……」

 透明魔法をかけたまま、まおう城内あちこちを歩き、脱出口を探すクレウ。

「何をやっておるのじゃ?」
「!!」

 透明化の最中なのに後ろから突然声を掛けられ、背中がビクッとするクレウ。とにかく息を殺し何事も無い様に壁に張り付いたまま静かにした。

「だから何をやっておるのじゃ~~?? 気持ち悪いやつじゃ……」
(偶然かもしれん、無視して進もう……)

 クレウは独り言が好きな人間がブツブツ言っている可能性を考え、無視して進みだす。

「こらこら、何を無視して進んでおるのじゃっ! 余が声を掛けておるのじゃ、怒るぞしかし」

 クレウがビクッとして気付くと、後ろから声を掛けていたはずの声の主が、一瞬で目の前に現れていた。その声の主の姿を見てさらに驚く。先程から透明化魔法を見破り、付いて来ていたのは可愛いミニスカートの黒いコスチュームを着た、十歳前後くらいのかなり可愛い女の子だった。しかも頭には熊の耳飾りを付けていた。付け耳だと判るのは、髪の毛にちゃんとした人間の耳が見え隠れしていたからだ。クレウにとっては微かに御主人、猫呼のイメージを呼び起こさせた。

「……君は誰かな?」

 クレウは相手が無邪気な小さい子だと判り、恐る恐る声を掛けた。良くすれば脱出口を聞き出せそうと思ったからだ。

「なにをいうー」
「?」

 要領を得ないのでやはり無視する事にした。

「こらこら待て待て!! 待つのじゃ!!」

 女の子がカッと片手を掲げると、クレウは固定された様に動けなくなった。瞬時に合理的に考え逆らう事を諦めた。透明化魔法を解いた。

「お許し下さい、貴方様は一体?」
「おおおおおお、凄いのじゃ!! やはり透明化しておったのか!! よし、お前は今日からカメレオン丸じゃ、付いてこい!!」
「あ、あの……貴方様は?」
「余はこの城のヌシじゃ!! お前を飼う事にしたぞ、ベアーの友達じゃキャハハハハハ」

 小さな女の子はまおう城の主、まおう抱悶だもんだった。

(猫呼さま、フルエレさま申し訳ありません……必ず生きて戻ります、それまでは……)
「よーし、あっちこっちの女湯を覗いて廻るのじゃ! 行くぞよカメレオン丸キャハハハハハハ」

 抱悶が笑いながら走り出すと、クレウは抵抗する事も出来ず、身体に鎖でも付けられている様に、ズリズリと引き摺られて連れていかれた……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

身寄りのない少女を引き取ったら有能すぎて困る(困らない)

長根 志遥
ファンタジー
命令を受けて自らを暗殺に来た、身寄りのない不思議な少女エミリスを引き取ることにした伯爵家四男のアティアス。 彼女は彼と旅に出るため魔法の練習を始めると、才能を一気に開花させる。 他人と違う容姿と、底なしの胃袋、そして絶大な魔力。メイドだった彼女は家事も万能。 超有能物件に見えて、実は時々へっぽこな彼女は、様々な事件に巻き込まれつつも彼の役に立とうと奮闘する。 そして、伯爵家領地を巡る争いの果てに、彼女は自分が何者なのかを知る――。 ◆ 「……って、そんなに堅苦しく書いても誰も読んでくれませんよ? アティアス様ー」 「あらすじってそういうもんだろ?」 「ダメです! ここはもっとシンプルに書かないと本編を読んでくれません!」 「じゃあ、エミーならどんな感じで書くんだ?」 「……そうですねぇ。これはアティアス様が私とイチャイチャしながら、事件を強引に力で解決していくってお話ですよ、みなさん」 「ストレートすぎだろ、それ……」 「分かりやすくていいじゃないですかー。不幸な生い立ちの私が幸せになるところを、是非是非読んでみてくださいね(はーと)」 ◆HOTランキング最高2位、お気に入り1400↑ ありがとうございます!

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...