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III プレ女王国連合の成立

防戦一方 襲われる魔戦車隊!

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「うおおおおおおおおおおおおお!!!」

 バシーーーン!!
いきなり突撃した美魅ィみみい王女のザンザスの剣は、にっくき半透明の魔ローダーに届く前に横から出て来たサッワのレヴェルの剣に遮られる。

「くそっ!!」
「なんでですか王女!?」
「ごめんなさい……つい手が」

 剣を弾かれた直後のザンザスの背後にメランの量産型魔ローダー青いSRVが守る様に立つ。一瞬にして二機の魔ローダーは、七機の敵魔ローダーに囲まれた。敵魔ローダーと言っても国境線内に侵入した美魅ィ王女とメランの方こそ相手から見れば和議を破って侵入した敵なのだが……

「サッワちゃんどうするの? この馬鹿な敵さんを一気に皆で串刺しにしちゃう? この国境線を突破してユッマランドのクラッカ城さえ陥落させれば、私達は七葉後川流域を完全制覇する事になるのよ!」

 ココナツヒメが半透明の魔ローダール・ワンの操縦席で嬉々として訊いた。

「サッワ様! 国境線の向こうでは多数の兵達が雪崩を打つ様に逃げ始めています! 如何致しましょうか!?」

 ハルカ城の地下牢からサッワを救出する為にココナツヒメに随伴して出撃し、救出直後にサッワから胸を揉まれるというセクハラを受けても文句ひとつ言わない処か頬を赤らめて受け入れた、シャクシュカ隊のリーダー格、アシュリーが慌てて訊く。

「ココナツヒメ様、逃げ始めた連中はただの騎兵や歩兵や魔導士です。我らの力で易々とクラッカ城は落とせるでしょう。我らの工作員の報告で新ニナルティナ魔戦車隊が訓練に出撃した時点で、あのメッキ野郎は旅に出ていて居ない事は聞きました。そこでお願いがあるのですが……」
「ん、何なの言ってちょうだいサッワちゃん。貴方の言う事ならなんでも聞くわよっ」

 七機の魔ローダーで二機の魔ローダーを取り囲みながら、余裕全開で聞き返すココナツヒメ。

「あ、あの……僕はハルカ城の地下牢に閉じ込められている間、とても酷い扱いを受けました! その恨みが忘れられません。この目の前の敵魔ローダーを時間をかけてなぶり殺しにしたいです!! 一撃で倒すのではなく、腕や足を切り落として最後はコクピットから敵兵を引き摺り出したいです!!」

 サッワは思い切って願いを言ってみた。

「サッワちゃんよく言ったわ! 私もそんな事がしたいなって気分だったのよ! 大賛成よ!!」
「ココナツヒメさま……有難う御座いますっ!!」

 主人まおう抱悶だもんに冷たくされイライラしていたココナツヒメと、ハルカ城地下牢での恨みが積もっていたサッワが激しく共鳴した。

「あ、あれ……敵さんなんで切り掛かって来ないの!?」
「さあ、どうやって私達を料理するか相談してるんじゃないかしら?」
「ひ~~~~~~~!!」

 さらりと言い放つ声を聞いて、メランは美魅ィ王女は死ぬつもりで来たのかと背筋が寒くなった。


 ガシャンガシャン!!
大きな音がして衣図いずライグが振り返ると、もう美魅ィ王女が乗る全高二十五Nメートルの巨大な魔ローダーザンザスが国境線を走り越えて林立する敵機に挑みかかっていた。直後それを救出する様にメランの青いSRVまでもが走り去って行く。

「あ~~~なんてこった! あの馬鹿王女ちゃん本当にやりやがった!! メランちゃん逃げろっ! そんな奴ほっとけ!!」
「あ、あのあっしらはどうしたら??」

 スリか泥棒にしか見えないラフが慌てて聞いてくる。

「こんな事やってる場合じゃねえやっ! 西リュフミュラン軍全軍撤退!! 今やってる事は全部おっぽり出してとにかく全速力で逃げろ!! 踏まれて殺されてもつまらんぞ!!」
「おい貴様っ! 何勝手に撤退している!!」

 ユッマランドの指揮官が逃げ出そうとした兵達を押し留めている。

「ちっ、魔ローダーには俺たち一般兵は何の役にも立たん、今すぐ逃げるんだ!!」

 衣図ライグが騒動に割って入る。
 
「例え西リュフミュラン軍司令官殿でも口を挟まないで頂きたい!」
「馬鹿か、お前も死ぬぞ!! とにかく逃げるんだ」
「あっおい!!」

 指揮官同士の揉め事を見て、次々に我先にと逃げ出す兵達。

「あのイケメン魔戦車指揮官はどうすんだ??」

 衣図ライグが魔戦車隊を見た。

「新ニナルティナ魔戦車隊撤退作業中止!! 魔砲最大仰角、魔ローダーの顔を狙って連射しろ!! 撃てる者から発射、撤退する友軍の盾になれっ!!」

 為嘉なかアルベルトは砲塔内に滑り込む様に入るとキューポラハッチを閉め、すぐさま防戦の指揮を始めた。

(なんて事だ……うかつだった、あの王女がここまで馬鹿だとは思わなかった。頑として国境線に近付く事に反対するべきだった!! まさかあの王女、皆を巻き込んでこうする事が目的だったのか!?)

 アルベルトは砲塔内で冷や汗が滲んだ。撃ち始めた以上、何機かの敵魔ローダーは必ずこちらに来る。いやあの王女とメランの機体がもし撃破されれば、即座に逃げる兵と自分達魔戦車隊は完全に的になって全員皆殺しの状態になるだろうと思い、つくづくも王女の軽挙に怒りが沸いた。


 ドパパパパパパパ!!! ドーンドーーーン!! ドドーーン!!
突然七機のメドース・リガリァ側の魔ローダー達の、主に国境線に背を向ける四機程の背中にアルベルトが指示した猛烈な魔戦車の魔砲攻撃がヒットする。ヒットすると言っても全くダメージを与えないのだが。

「キャーーーーッ!!」

 モロに一番攻撃を受けたフゥーが叫び声を上げる。

「フゥー情けない声を上げるな!! たかが魔戦車の魔砲だろがっそんなもんちっともダメージにならんっ!」
「は、はい……」
「ちっしかしムカツク奴らだな……魔戦車風情の癖に!? アシュリーとジャスミンはうるさい魔戦車共を破壊して回ってくれっ! ココナツヒメさま良いですか?」
「何を言っているの? サッワちゃんの部隊でしょう好きになさい」
「はいっ有難う御座います!! 行けっ!!」
「はいっ」
「はっ」

 ジャスミンもアシュリーと同じくサッワを救出に向かった二人の内一人だった。この二人が容姿も含めサッワの特にお気に入りだった。

 ガシャンガシャンッ!!
二機を取り囲む七機の魔ローダーの内、二機の魔ローダーが走って行く。しかし二機対五機という事で数的な不利は同じだった。

「ああっなんて事!? 応戦してくれてる魔戦車に魔ローダーが向かって行く助けなきゃ!!」
「放っておきなさい、兵達も覚悟があって来てるのよ、私達自身の事だけを考えましょう!」
「ふざけるなっ! 何てこと言うの? とにかく私達が助けないとみんな死んじゃうのよ!? 貴方一人の為に皆大変な事になっているのよ? 分かっているの!」
「ご、ごめんなさい……」

「隊長、魔ローダー二機接近! 如何しますか!?」
「隊長!! 敵が来ます!!」

 為嘉アルベルトに対して、部下の戦車隊から悲鳴の様な魔法通信が次々に入る。アルベルトは仕方なく二機の味方魔ローダーを見捨てる事に決めた。

「敵魔ローダーを分割させる事に成功した! 我々にはこれ以上出来る事は無い、各自の判断で後退しながら応射!! 私の車は最後までここに残って皆の撤退を支える!!」
「隊長!! 我々も残ります!!」
「好きにしろ!! 各自の判断に任せる!」

 その通信の直後から五十両程になっていた魔戦車隊はその場に留まって応戦する者と撤退する者に分かれた。留まる者達の中心にアルベルトの指揮車があった。

「あらあら、かわいいネズミさん達がチューチュー言いながら逃げ回っているじゃないかっジャスミン、片っ端から潰して行くよ! そらっ!!」

 アシュリーのレヴェルが屈んで巨大な剣を振り下ろすと、ちょうど真下に居た二両の魔戦車が剣先の直撃を受け爆発する。
 ドドーーーン!!

「隊長ーーーっ!!」
「うわーーっ!!」
「あははっアシュリーあたしもやってやるよっ!!」

 続けてジャスミンの魔ローダーも操縦者が笑いながら魔戦車を踏み潰して行く。ボカンドカンと爆発して潰れる魔戦車。

「ぎゃーーーーっ」
「芹沢―――!!」

 アルベルトは同盟締結式の時に真横で破壊された魔戦車の搭乗員の兄弟が偶然乗っていた魔戦車が破壊されて慟哭する。

「あんなの虐殺だよ! あれが一般兵達にも行われるんだよっ! 貴方の大切な侍女さんと同じ人達が殺されてるんだよっ!」

 メランが自分達の眼前で行われている惨劇に愕然として王女を叱った。

「ご、ごめんなさい……自分の事しか考えて無くて……」
「とにかくこの囲みを突破しましょう!」

 ガシッ!!
等と二人が言った直後に、メランの青いSRVが背中を切り裂かれる。

「きゃーーーーーっ痛いっ!?」
「メランさんっ! このーーっ!!」

 逆上した王女がサッワのレヴェルに切り掛かるが、同じように後ろから別の機体に切り掛かれる。寸でで避ける王女。

「くすくす、隊長もう腕の一本でも切り落として良いですか?」
「よしそうだなっ! 斬って良いぞアウララ!」

 少しサディスティックな性格のアウララが笑いながら切り掛かると、ガシッと王女の魔ローダーが剣で受け止める。

「そこっ!!」

 今度は残りの美女ヘレナが後ろから腕に切り掛かり、本当に片腕を斬り落としてしまった。直後王女は片腕を押さえて絶叫する。

「ぎゃーーーーーっ」
「ミミイ!? このーーーっ!!」

 メランが背中を斬られた痛みも忘れて王女をカバーに回るが、今度は四方から同時に切り掛かられる。防戦虚しくメランのSRVも片腕を切り落とされた。

「ちいいいい!! くっそーーーーーー!!!」

 メランも片腕を押さえて絶叫する。王女もメランもそれぞれ剣を持つ手では無い方の腕を切り落とされて、よろよろと背中合わせでようやく立っている状態になってしまった。

「よし、フゥー今度はどっちかの片足を切り落とせ!!」
「えっ!?」

 何もせず見ていたフゥーは突然サッワから命令を受けて呆然として立ち尽くした。
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