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III プレ女王国連合の成立
美魅ィが見た空 結集、集まる仲間たち
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「回復! 回復! 回復! 回復! 回復!! お願い治って!!」
捕虜の少女はセレネが拘束輪をかけて地上に置くと、砂緒に促されて雪乃フルエレは全力で蛇輪が習得した魔ローダースキル回復(強)を為嘉アルベルトに向かって重ね掛けした。
シュバッッ!!
キラキラとした光る粒子がアルベルトの体に降りかかり、身体全体が白く発光した。
「うっっ……あれ……骨折が治ってる?? 信じられないよ」
アルベルトは先程までの尋常じゃ無い身体全体の痛みが消えた事に驚いて、むくっと上半身を起き上げた。
「ああっ見て! 砂緒見てアルベルトさんが治った!! 貴方のお陰よ、ありがとう!!」
フルエレは泣き声で砂緒に感謝を述べた。
「あーーーーそれはどー致しましてっ! 良かったですなあ」
「心籠って無さ過ぎすぎだろ」
今度はフルエレ自ら操縦席に掌を添えて、オートでアルベルトの場所まで降りて行った。
「ああっアルベルトさんっ!!」
今度はフルエレは全力でアルベルトを抱き締めた。
「ははっフルエレくんのお陰だよ、あと砂緒くん達にも……でも少し痛い、ちょっと緩くして」
「まあっごめんなさい! 大丈夫かしら??」
「あはは、大丈夫大丈夫!」
「うふふ」
フルエレとアルベルトは離れて笑顔で見つめ合っている。
「なんすかこれ……なんで私フルエレのこんな場面見なくちゃいけないんでしょ、むしろ私がフルエレと抱き合ってる予定だったんですが……」
砂緒は座席の上で三角座りしてぼそぼそと言った。
「狭いって座れんだろうがってかお前泣いてるのか?」
「泣いてません! でもセレネが居なかったら私即死してたかもしれません」
言われて思わずセレネは砂緒の頭を胸に抱き抱えた。
「おーよちよち頑張ったでちゅね~~~」
「……しかしこれでもう少し胸があれば完璧だったのに、惜しいですね……」
「うるさいわ」
「フルエレくん、こうしている場合じゃないまだまだ怪我をした仲間達が居る! 済まないが出来る限りさっきの回復をして上げて欲しいんだっ」
アルベルトはフルエレの華奢な肩に手を置いて訴えた。
「分かった! アルベルトさんはそこで休んでいて!!」
フルエレは蛇輪の掌に乗るとオートで操縦席に戻った。
「兎幸、砂緒セレネ、ここら辺の怪我人を出来る限り回復するわよっ!」
「へいへい」
「はぁ~~~い!」
兎幸のみ元気に答えた……
「回復! 回復! 回復!!」
次から次へと倒れている主に魔戦車隊の隊員達を助けて行くが、中にはユッマランド軍の兵達も回復して行った。
「はぁはぁ……生き返った!? 何故??」
「女神さまだっ! 同盟女王さまが回復して回っているらしい!!」
「聖女さまだっ!!」
瀕死から息を吹き返したり大怪我が治って立ち上がった兵達が回復を続ける蛇輪に手を合わせて感謝する。
「おおおおおーーーーーーい!! 砂緒ぉ嬢ちゃん!! 戻って来たぜ!!」
「ありっ大将、敵の魔ローダーがいやせんぜ~~」
「よく見やがれ、もう全部砂緒達が倒しちまったんだよ!!」
「マジですか!?」
ようやく衣図ライグ率いる西リュフミュラン軍が戦場に引き返した時には既に決着がついた後であった。
「衣図ライグが戻って来ましたね」
「ふんっ今頃戻って来てどうするのか!」
「セレネさんや生身の兵達なのです、魔ローダー相手にはどうにもなりません」
「砂緒の癖にまともな事言うなよ」
「セレネまだまだ回復して回るからね、協力してっ!」
「はいはいはい」
蛇輪が回復して廻った後に衣図の西リュフミュラン軍が兵達を介抱して廻る。殆ど脳筋の連中だが、一通りの戦場救命の知識はあった。
「ハッ……」
目を開けると一面の空が見えた。そして周囲には慌ただしく走り回る兵達に、介抱される人々。さらには戻って来た魔戦車隊に陣地を構築している人々やテントを設営している人々も見える……魔ローダーの爆発する白い閃光に巻き込まれた後、目覚めるとそんな状況になっていた。
「美魅ィの馬鹿っ!! 最初から死ぬつもりだったの!? 貴方バカよっ」
いきなりメランに抱き着かれる。無意識で腰にぶら下げた璃凪の遺骨が入った小袋を握ろうとするがどこにも見当たらない。恐らく爆風で吹き飛ばされたのだろう、もはや探す事など不可能だった。
(ごめんなさい……リナ、生き返っちゃった……ごめんなさいね、もう少し生きさせて)
気付くと美魅ィ王女は自分が涙を流している事に気付いた。
「何か言いなさいっ!」
「ありがとう……ごめんなさい……ううっ」
メランとミミイはしばらく抱き合って泣いた。
「回復っ回復っ!!」
「げはっ!!!」
「ヒッ、魔法自動人形の兎幸が血を吐いたわっ!」
「ヒューヒュー、兎幸まだまだ大丈夫だよっゲハッ」
「わーーーやめやめ、兎幸の体が持ちません」
「あたしも正直言ってもう限界だ……」
「フルエレ、ここらへんで終わりとしましょう、貴方も疲れてるはずです」
「そ、そうさせてもらうわ……」
パシッ!!
いきなり雪乃フルエレが美魅ィ王女の頬をはたいた。
「ふ、フルエレくん!?」
「………………」
頬を押さえ黙り込む王女。
「貴方の為に皆がどれ程大変な事になったか分かっているの?? もう完全に死んでしまって戻ってこれない人も大勢いるのよ??」
「申し訳ありません、この責、どの様な罰も受けましょう」
美魅ィ王女はフルエレの前で跪いた。
「ただこの美魅ィ、命を拾われた以上は今後はフルエレ女王陛下に命を懸けてお仕え致します! 私を道具とお思いなんなりとお使い下さい」
「嫌よ気持ちわるいっ」
フルエレはミミイからそっぽを向く。終始フルエレはミミイ王女が苦手な様だった。
「気持ち悪い言うな」
セレネは二人のやり取りを冷めた目で見ていた。
「で、王女は今後はどうするのだ?」
「はっセレネさま発言が許されるのであれば……」
「許す、言えば良い」
「セレネさんや偉そうですね」
「うるさいわ」
美魅ィ王女がゆっくり立ち上がる。
「私は今から急ぎクラッカ城に戻り、全軍率いて休みなく間髪入れずにこのままロミーヌを陥落させたいと思います」
「な、この期に及んで何を言っているの? 反省してないの? もう一回叩かれたいの?」
フルエレが信じられないという表情でミミイ王女を睨み付ける。
「お怒りはごもっともです、後でどの様な罰でも受けましょう、しかし敵魔ローダー部隊を壊滅させ、敵地上兵も居ない今、メドース・リガリァに従う小国を一つでも陥落させる事が我ら同盟の気概を見せる事になるかと思います」
「ふざけないでっ! ねえ、皆!」
フルエレが同意を求めようと皆を見るが……
「あたしも美魅ィ王女と同じ意見だ。さらにはあわよくば、このままロミーヌの北にあるオゴも落としたい。さすればメドース・リガリァどもは同盟国への侵入経路を完全に失うだろう」
「セレネッ貴方って人は!? いつもいつも私の反対ばかり言って、こんな時にまで!?」
今度はフルエレはセレネまで睨み付ける。とにかく戦線が広がる事でアルベルトがまた戦いに出る事を恐れていた。
「恐れながらセレネさま、我が軍はさらに七葉後川南側の地域一体、出来れば唯一メドース・リガリァに含まれない海と山とに挟まれた小さき王国まで到達したいと願っております!」
「………………」
海と山との名前が出た途端、フルエレが元気を無くし黙り込む。
「うむ良いだろう、あたしも大急ぎでSRV部隊の派遣を行うようユティトレッド本国に命令する!!」
「有難き幸せ……」
美魅ィ王女が胸に手を当てセレネに跪いて頭を下げた。
「こんな偉そうですが、この子二人きりになると途端にデレッデレになるんすよ」
「ややこしい時に要らん事言うな」
「は、はぁ……所で砂緒さま璃凪の事はお聞きしましたか? 璃凪から貴方との関係は聞きました」
皆が一斉に砂緒の方を見る。
(要らん時に要らん事を言う女だな)
「は、はぁ……き、聞きましたが」
「お願い、璃凪の為に悲しんであげて、最後に肌を合わせた男として泣いて上げて欲しいの」
「わーーーーーーーーーーー!!」
「今なんつった?」
「何でもありませんから、本当に何でもありませんから」
「今なんか王女が凄い事言った気がしたが?」
「ははははははははは、気のせいですよセレネ」
「砂緒さま、心の中ででも良いので祈りの一つでもあげて下さい」
「は、はい……それはもう」
キキキーーーーーーッッ
突然皆の前に猛スピードでリムジンタイプ魔車が乗り付けて急ブレーキで止まる。
ガチャッ!!
開くドア。
「ああーーー間に合ったわっ! 皆生きてる生きてる良かった良かった! 走り通しでわたしのイケメン運転魔導士ちゃんがヘロヘロよっ」
「猫呼さまっこれしきの悪路など平気で御座います、どうぞなんなりとご命令を」
「猫呼っ! あんた一体何人イケメン囲ってるのよ……」
「お兄様に会えない心の隙間がわたしにこんな行動に走らせるのね……」
「違うだろう、ただ単にイケメンが好きなだけだろう……メンと言えばここら辺にグルメタウンがあって麺料理が盛んな様だな、よって私も戦いがあれば参加するぞ!」
「なんという不純な動機……というかイェラも来てたのか」
(しめしめ話を誤魔化せる)
「おお砂緒、私も戦うぞ!」
イェラがカチャッと剣を見せるが料理道具も持っていた。
「おおーーイェラじゃねえかっ! 久しぶりだな急に女らしくなってないか? 戦えるのか俺の下で」
「ハッ喜んで」
イェラは久しぶりに衣図ライグと再会して頭を下げた。
「知らないわ、皆して戦う事ばかり……私はアルベルトさんを連れて帰りますからっ」
「えっ僕まで?」
「どうぞお好きに女王陛下はニナルティナでどんと構えておいで下さい」
セレネが冷たく言い放つ。
「そうさせて頂くわよ」
「フルエレ……覚えていますか? 何か嫌な事があったら全て放り出したくなったら私はフルエレだけを守って漁村でも農村でも二人で隠れ住むと言った事を……」
リムジンに乗り込もうとするフルエレに砂緒は小声で言った。
「……覚えているわ……でも今はもう少し頑張ってみるつもりよ……」
「そうですか……でも私はいつでもフルエレを待っていますよ」
「ありがとう……砂緒はいつも私の味方なのにね」
「はい」
フルエレはリムジンタイプ魔車のドアを閉めると窓を開けて砂緒に手を振る。
「砂緒はどんな事があっても死なないけど気を付けてね」
「もちろんですとも」
砂緒は窓ガラスが閉まるのを見届けてセレネの方に歩いて行った。
「あの~~皆さん、盛り上がってるとこ悪いんですが、この拘束輪がかけられた捕虜の女のガキはどうしやがるんですか~~?」
スリかコソ泥にしか見えないラフが押し付けられて忘れ去られていたフゥーを持て余して皆に相談する。まさにヤバイ犯罪者にしか見えない構図だった。
捕虜の少女はセレネが拘束輪をかけて地上に置くと、砂緒に促されて雪乃フルエレは全力で蛇輪が習得した魔ローダースキル回復(強)を為嘉アルベルトに向かって重ね掛けした。
シュバッッ!!
キラキラとした光る粒子がアルベルトの体に降りかかり、身体全体が白く発光した。
「うっっ……あれ……骨折が治ってる?? 信じられないよ」
アルベルトは先程までの尋常じゃ無い身体全体の痛みが消えた事に驚いて、むくっと上半身を起き上げた。
「ああっ見て! 砂緒見てアルベルトさんが治った!! 貴方のお陰よ、ありがとう!!」
フルエレは泣き声で砂緒に感謝を述べた。
「あーーーーそれはどー致しましてっ! 良かったですなあ」
「心籠って無さ過ぎすぎだろ」
今度はフルエレ自ら操縦席に掌を添えて、オートでアルベルトの場所まで降りて行った。
「ああっアルベルトさんっ!!」
今度はフルエレは全力でアルベルトを抱き締めた。
「ははっフルエレくんのお陰だよ、あと砂緒くん達にも……でも少し痛い、ちょっと緩くして」
「まあっごめんなさい! 大丈夫かしら??」
「あはは、大丈夫大丈夫!」
「うふふ」
フルエレとアルベルトは離れて笑顔で見つめ合っている。
「なんすかこれ……なんで私フルエレのこんな場面見なくちゃいけないんでしょ、むしろ私がフルエレと抱き合ってる予定だったんですが……」
砂緒は座席の上で三角座りしてぼそぼそと言った。
「狭いって座れんだろうがってかお前泣いてるのか?」
「泣いてません! でもセレネが居なかったら私即死してたかもしれません」
言われて思わずセレネは砂緒の頭を胸に抱き抱えた。
「おーよちよち頑張ったでちゅね~~~」
「……しかしこれでもう少し胸があれば完璧だったのに、惜しいですね……」
「うるさいわ」
「フルエレくん、こうしている場合じゃないまだまだ怪我をした仲間達が居る! 済まないが出来る限りさっきの回復をして上げて欲しいんだっ」
アルベルトはフルエレの華奢な肩に手を置いて訴えた。
「分かった! アルベルトさんはそこで休んでいて!!」
フルエレは蛇輪の掌に乗るとオートで操縦席に戻った。
「兎幸、砂緒セレネ、ここら辺の怪我人を出来る限り回復するわよっ!」
「へいへい」
「はぁ~~~い!」
兎幸のみ元気に答えた……
「回復! 回復! 回復!!」
次から次へと倒れている主に魔戦車隊の隊員達を助けて行くが、中にはユッマランド軍の兵達も回復して行った。
「はぁはぁ……生き返った!? 何故??」
「女神さまだっ! 同盟女王さまが回復して回っているらしい!!」
「聖女さまだっ!!」
瀕死から息を吹き返したり大怪我が治って立ち上がった兵達が回復を続ける蛇輪に手を合わせて感謝する。
「おおおおおーーーーーーい!! 砂緒ぉ嬢ちゃん!! 戻って来たぜ!!」
「ありっ大将、敵の魔ローダーがいやせんぜ~~」
「よく見やがれ、もう全部砂緒達が倒しちまったんだよ!!」
「マジですか!?」
ようやく衣図ライグ率いる西リュフミュラン軍が戦場に引き返した時には既に決着がついた後であった。
「衣図ライグが戻って来ましたね」
「ふんっ今頃戻って来てどうするのか!」
「セレネさんや生身の兵達なのです、魔ローダー相手にはどうにもなりません」
「砂緒の癖にまともな事言うなよ」
「セレネまだまだ回復して回るからね、協力してっ!」
「はいはいはい」
蛇輪が回復して廻った後に衣図の西リュフミュラン軍が兵達を介抱して廻る。殆ど脳筋の連中だが、一通りの戦場救命の知識はあった。
「ハッ……」
目を開けると一面の空が見えた。そして周囲には慌ただしく走り回る兵達に、介抱される人々。さらには戻って来た魔戦車隊に陣地を構築している人々やテントを設営している人々も見える……魔ローダーの爆発する白い閃光に巻き込まれた後、目覚めるとそんな状況になっていた。
「美魅ィの馬鹿っ!! 最初から死ぬつもりだったの!? 貴方バカよっ」
いきなりメランに抱き着かれる。無意識で腰にぶら下げた璃凪の遺骨が入った小袋を握ろうとするがどこにも見当たらない。恐らく爆風で吹き飛ばされたのだろう、もはや探す事など不可能だった。
(ごめんなさい……リナ、生き返っちゃった……ごめんなさいね、もう少し生きさせて)
気付くと美魅ィ王女は自分が涙を流している事に気付いた。
「何か言いなさいっ!」
「ありがとう……ごめんなさい……ううっ」
メランとミミイはしばらく抱き合って泣いた。
「回復っ回復っ!!」
「げはっ!!!」
「ヒッ、魔法自動人形の兎幸が血を吐いたわっ!」
「ヒューヒュー、兎幸まだまだ大丈夫だよっゲハッ」
「わーーーやめやめ、兎幸の体が持ちません」
「あたしも正直言ってもう限界だ……」
「フルエレ、ここらへんで終わりとしましょう、貴方も疲れてるはずです」
「そ、そうさせてもらうわ……」
パシッ!!
いきなり雪乃フルエレが美魅ィ王女の頬をはたいた。
「ふ、フルエレくん!?」
「………………」
頬を押さえ黙り込む王女。
「貴方の為に皆がどれ程大変な事になったか分かっているの?? もう完全に死んでしまって戻ってこれない人も大勢いるのよ??」
「申し訳ありません、この責、どの様な罰も受けましょう」
美魅ィ王女はフルエレの前で跪いた。
「ただこの美魅ィ、命を拾われた以上は今後はフルエレ女王陛下に命を懸けてお仕え致します! 私を道具とお思いなんなりとお使い下さい」
「嫌よ気持ちわるいっ」
フルエレはミミイからそっぽを向く。終始フルエレはミミイ王女が苦手な様だった。
「気持ち悪い言うな」
セレネは二人のやり取りを冷めた目で見ていた。
「で、王女は今後はどうするのだ?」
「はっセレネさま発言が許されるのであれば……」
「許す、言えば良い」
「セレネさんや偉そうですね」
「うるさいわ」
美魅ィ王女がゆっくり立ち上がる。
「私は今から急ぎクラッカ城に戻り、全軍率いて休みなく間髪入れずにこのままロミーヌを陥落させたいと思います」
「な、この期に及んで何を言っているの? 反省してないの? もう一回叩かれたいの?」
フルエレが信じられないという表情でミミイ王女を睨み付ける。
「お怒りはごもっともです、後でどの様な罰でも受けましょう、しかし敵魔ローダー部隊を壊滅させ、敵地上兵も居ない今、メドース・リガリァに従う小国を一つでも陥落させる事が我ら同盟の気概を見せる事になるかと思います」
「ふざけないでっ! ねえ、皆!」
フルエレが同意を求めようと皆を見るが……
「あたしも美魅ィ王女と同じ意見だ。さらにはあわよくば、このままロミーヌの北にあるオゴも落としたい。さすればメドース・リガリァどもは同盟国への侵入経路を完全に失うだろう」
「セレネッ貴方って人は!? いつもいつも私の反対ばかり言って、こんな時にまで!?」
今度はフルエレはセレネまで睨み付ける。とにかく戦線が広がる事でアルベルトがまた戦いに出る事を恐れていた。
「恐れながらセレネさま、我が軍はさらに七葉後川南側の地域一体、出来れば唯一メドース・リガリァに含まれない海と山とに挟まれた小さき王国まで到達したいと願っております!」
「………………」
海と山との名前が出た途端、フルエレが元気を無くし黙り込む。
「うむ良いだろう、あたしも大急ぎでSRV部隊の派遣を行うようユティトレッド本国に命令する!!」
「有難き幸せ……」
美魅ィ王女が胸に手を当てセレネに跪いて頭を下げた。
「こんな偉そうですが、この子二人きりになると途端にデレッデレになるんすよ」
「ややこしい時に要らん事言うな」
「は、はぁ……所で砂緒さま璃凪の事はお聞きしましたか? 璃凪から貴方との関係は聞きました」
皆が一斉に砂緒の方を見る。
(要らん時に要らん事を言う女だな)
「は、はぁ……き、聞きましたが」
「お願い、璃凪の為に悲しんであげて、最後に肌を合わせた男として泣いて上げて欲しいの」
「わーーーーーーーーーーー!!」
「今なんつった?」
「何でもありませんから、本当に何でもありませんから」
「今なんか王女が凄い事言った気がしたが?」
「ははははははははは、気のせいですよセレネ」
「砂緒さま、心の中ででも良いので祈りの一つでもあげて下さい」
「は、はい……それはもう」
キキキーーーーーーッッ
突然皆の前に猛スピードでリムジンタイプ魔車が乗り付けて急ブレーキで止まる。
ガチャッ!!
開くドア。
「ああーーー間に合ったわっ! 皆生きてる生きてる良かった良かった! 走り通しでわたしのイケメン運転魔導士ちゃんがヘロヘロよっ」
「猫呼さまっこれしきの悪路など平気で御座います、どうぞなんなりとご命令を」
「猫呼っ! あんた一体何人イケメン囲ってるのよ……」
「お兄様に会えない心の隙間がわたしにこんな行動に走らせるのね……」
「違うだろう、ただ単にイケメンが好きなだけだろう……メンと言えばここら辺にグルメタウンがあって麺料理が盛んな様だな、よって私も戦いがあれば参加するぞ!」
「なんという不純な動機……というかイェラも来てたのか」
(しめしめ話を誤魔化せる)
「おお砂緒、私も戦うぞ!」
イェラがカチャッと剣を見せるが料理道具も持っていた。
「おおーーイェラじゃねえかっ! 久しぶりだな急に女らしくなってないか? 戦えるのか俺の下で」
「ハッ喜んで」
イェラは久しぶりに衣図ライグと再会して頭を下げた。
「知らないわ、皆して戦う事ばかり……私はアルベルトさんを連れて帰りますからっ」
「えっ僕まで?」
「どうぞお好きに女王陛下はニナルティナでどんと構えておいで下さい」
セレネが冷たく言い放つ。
「そうさせて頂くわよ」
「フルエレ……覚えていますか? 何か嫌な事があったら全て放り出したくなったら私はフルエレだけを守って漁村でも農村でも二人で隠れ住むと言った事を……」
リムジンに乗り込もうとするフルエレに砂緒は小声で言った。
「……覚えているわ……でも今はもう少し頑張ってみるつもりよ……」
「そうですか……でも私はいつでもフルエレを待っていますよ」
「ありがとう……砂緒はいつも私の味方なのにね」
「はい」
フルエレはリムジンタイプ魔車のドアを閉めると窓を開けて砂緒に手を振る。
「砂緒はどんな事があっても死なないけど気を付けてね」
「もちろんですとも」
砂緒は窓ガラスが閉まるのを見届けてセレネの方に歩いて行った。
「あの~~皆さん、盛り上がってるとこ悪いんですが、この拘束輪がかけられた捕虜の女のガキはどうしやがるんですか~~?」
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