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III プレ女王国連合の成立
セレネ砂緒、海と山と王国へ訪問再び 暴れまくるY子。
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「是非! ご挨拶とお礼がしたい!!」
と言いながらコーディエが歩みを始めると、Y子こと雪乃フルエレ女王は同じ歩数だけ後ろ歩きを始める。
「あ、あれ、あの御方は蜃気楼なのか?」
さらにコーディエがY子に接近するが同じ歩数だけY子が後ろ歩きを続ける。コーディエは何が起こっているのか分からなくて戸惑う。
「???」
「止め――い! Y子殿何をしている!! コーディエ殿に失礼であろう、Y子殿ストップいたせ!」
「いや~~よぉ」
「いや~~よぉじゃない! 急に色っぽい声を出すな!!」
なおも拒否するY子に周囲の者が怪訝な顔をする。
「い、いえ何かY子殿にとって不都合な事があるのであれば致し方無い……」
コーディエは寂しそうな顔をしながら後ろに引き下がった。
「い、いえ、あの御方は少し変わった所が御座いましてな、折角駆け付けて下さった海と山と国にご無礼などあってはならない、直ぐに此処に来させます! 砂緒、連れて参れ!!」
「ラジャーー!!」
「あ、私も私も!!」
「あ、ちょちょっと止めなさい!」
「あ、ああいえ、御無理には」
砂緒とメランが無理やりY子を連れて来る。
「……何か申し訳無い。決して無理強いするつもりは。ただあの飛ぶ魔ローダーでのお声がけに救われました。感謝を伝えたい」
コーディエはY子に手を差し出した。しばらく時間を置いて、おずおずとY子も手を差し出し二人は握手をした。
「こ、こちらこそ貴国の参陣に痛み入る」
「………………?」
「?」
コーディエは手を握ったまましばし固まった。周囲の者達は何事かと怪訝な表情で二人を見つめる。
(は、早く離してコーディエ、何をしているの?)
「あの……もしや貴方様は夜宵姫ではありませんか?」
「!? ち、違います……どなたか知りませんけど、その様な方では。ではっ」
Y子は手を無理に離すと、くるりと踵を返して蛇輪の足元に隠れる様に早歩きで去った。
「こ、これはまたもや失礼しました……つい」
コーディエは振り解かれた手をそのままに、じっと歩き去るY子の後ろ姿を見つめた。
「コーディエ殿、夜宵姫と言えば海と山と国の王様とお后様の行方不明となった姫、その御方がどうかされましたか?」
砂緒が夜宵と聞いて激しく反応した。
「い、いえY子殿を間近で拝見して、一瞬懐かしい感じがしてしまいまして。Y子殿には大変失礼な事をしてしまいました。後で謝罪したいです」
その言葉に今度はセレネが激しく反応して、ハハーーン的な顔をした。
「ふむ……つまり失礼ながらコーディエ殿は行方不明の夜宵姫を、かねてよりお慕いされていたと?」
「ち、ちちちちちち、違いますよぉ! 何を仰るのですか!? わわわわわわ、私はただのいち家臣、その様な身で身分違いのお慕い等と……王様とお后様がお探し故、私も探し求めておるだけですので」
それまで冷静な青年という感じだったコーディエは、セレネの言葉に激しく動揺している様に見えた。
「おおお、つまりコーディエ殿は夜宵姫にホの字という事ですな?」
「違います!」
砂緒の言葉に顔を真っ赤にして即座に反応するコーディエ。その姿を見て単純に砂緒は良い人物と知り合ったと喜んだが、砂緒以外のY子が雪乃フルエレだと気付いている人々から見れば、フルエレの出身地が何となく分かってしまった瞬間だった。
「失礼したコーディエ殿。この砂緒という人物は放置して下さい、それよりも捕虜の処理等部下達に任せ、我々は夜になるまでに海と山と国に是非向かいたい。そして王様とお后様に合流の挨拶とお礼をしたいのだ」
セレネは頭を下げるとコーディエに海と山と国行きを提案した。
「おお、それは願っても無い! 是非とも王様とお后様に拝謁して頂き、同盟の絆を深めて頂きたい物です!」
先程とうって変わりコーディエは目を輝かせて喜んだ。
「と、言う訳だ、砂緒さんミミイ王女、一つあの困った御人を捕縛して欲しい!」
「?」
「おお、お任せあれ!」
「右に同じですっうふ」
砂緒とミミイ王女が飛んで行き、メランが頭を抱えた。
―しばらく後
「いーーーーやーーーだーーーー、我はいーーかーーぬーーー!!」
子供の様に激しく嫌がるY子を砂緒とミミイが強引に引きずって来た。
「子供ですかっ! 貴方は雪乃フルエレ女王の名代、海と山と国に訪問しない方が失礼ですぞ」
「雪乃フルエレ女王……?」
セレネの言葉にコーディエが反応した。
「いーーーやーーーだーーー留守番するのーーーー!!」
「その声っ!」
「いーーかーーぬーー我は居残るぞーー」
「いや、言い直しても一緒でしょうに」
メランがまたもや頭を抱える。
「致し方ありません、北部海峡列国同盟総司令官権限でY子殿をす巻きにして運搬します! 砂緒、ミミイやっておしまいなさい!!」
「ラジャーーー!!」
その言葉を聞いた直後に砂緒とミミイが本当に縄でY子をす巻きにしてしまう。
「ギャーーー、犯罪よ、今犯罪が行われているわっ!! 誰か助けてっっ!!」
二人に縄でぐるぐる巻きにされながらY子が泣き叫ぶ。
「あ、ああ、あの、大丈夫なのでしょうか??」
(夜宵さまであったならなんとする!?)
コーディエはどうしたら良いか分からずオロオロと狼狽する。
「ああ、大丈夫です。Y子殿は割と頑丈な身体をなされておいでです。ご心配無く」
セレネは腕を組んで無表情です巻きにされゆくY子を見つめた。
「セレネッ、後で絶対に覚えてなさいよ!! 何か恥ずかしい目に逢わせてあげるからねっ」
「Y子殿お控え下さい、貴方のお立場を考えて物を言って下さい……」
余りに自分勝手な態度にY子が雪乃フルエレだと、とうに気付いているメランが堪らずY子に耳元で注意した。味方だと思っているメランに言われた直後にシュンとするY子だった。
す巻きにしたY子をなんとか無理やり蛇輪に乗せると、コーディエ達一部の海と山と国の指揮官達は深々と礼をして馬で一足先に自国に走って行った。
「シャル王殿、捕虜共の後処理と七葉後川南側の防備をお願い致す」
「しかと任された! ご安心を」
「メランさん、ミミイ王女、黒い稲妻Ⅱでここの防備お願いします。我々は蛇輪で海と山と国に飛びます。恐らく一晩泊まる事になろうかと」
「むがーーーーーっ!!」
(何勝手な事言ってるのセレネッバカーーー!!)
蛇輪の操縦席から話を聞いたY子がす巻きのまま飛び跳ねる。メランが冷や汗を流しながらY子を見た。
「無視して下さいメランさん」
「は、はい……どうぞお気を付けて。恐らくあの黒いヤツの性格からして今夜は約束を守りもう来ないかと。しかし油断はしません」
「うむ、良い心がけだな……」
「うむ、良い心がけだなって……セレネさんそれ何かの演技? 我に返って恥ずかしく無い?」
余りにも総司令官として演劇風に振舞うセレネにメランが少々戸惑う。
「も、もう、此処ではそういう感じなんです! メランさんも合わせてっ!!」
「は、はぁ……」
公も私もシームレスで継ぎ目のないメランにとって、セレネの態度は不自然極まり無く見えたが、普段恥ずかしがりやでもじもじするタイプのセレネにとってはこうしないと駄目なのだろうなと納得して上げた。
「もういいじゃない、ハイッセレネ様、ミミイとメラン二人きりの時間を満喫します!」
「嫌よ凄く嫌」
「砂緒セレネ、行ってらっしゃーーーい!」
兎幸が手を振り、張り切って敬礼するミミイ王女の横でメランは凄く嫌そうな顔をした。魔戦車の好青年はメランが居残る事を知ってほっとして遠くから見つめている。
「では行って来るっ!」
「お后さまお待ちをっ今すぐ行きますぞ!! はははははははははは」
しばらくして調子を取り戻したセレネと砂緒が最後まで嫌がるY子を無理やり搭載して海と山と国に蛇輪で飛んで行った。距離的には一瞬で着いてしまうだろう。
と言いながらコーディエが歩みを始めると、Y子こと雪乃フルエレ女王は同じ歩数だけ後ろ歩きを始める。
「あ、あれ、あの御方は蜃気楼なのか?」
さらにコーディエがY子に接近するが同じ歩数だけY子が後ろ歩きを続ける。コーディエは何が起こっているのか分からなくて戸惑う。
「???」
「止め――い! Y子殿何をしている!! コーディエ殿に失礼であろう、Y子殿ストップいたせ!」
「いや~~よぉ」
「いや~~よぉじゃない! 急に色っぽい声を出すな!!」
なおも拒否するY子に周囲の者が怪訝な顔をする。
「い、いえ何かY子殿にとって不都合な事があるのであれば致し方無い……」
コーディエは寂しそうな顔をしながら後ろに引き下がった。
「い、いえ、あの御方は少し変わった所が御座いましてな、折角駆け付けて下さった海と山と国にご無礼などあってはならない、直ぐに此処に来させます! 砂緒、連れて参れ!!」
「ラジャーー!!」
「あ、私も私も!!」
「あ、ちょちょっと止めなさい!」
「あ、ああいえ、御無理には」
砂緒とメランが無理やりY子を連れて来る。
「……何か申し訳無い。決して無理強いするつもりは。ただあの飛ぶ魔ローダーでのお声がけに救われました。感謝を伝えたい」
コーディエはY子に手を差し出した。しばらく時間を置いて、おずおずとY子も手を差し出し二人は握手をした。
「こ、こちらこそ貴国の参陣に痛み入る」
「………………?」
「?」
コーディエは手を握ったまましばし固まった。周囲の者達は何事かと怪訝な表情で二人を見つめる。
(は、早く離してコーディエ、何をしているの?)
「あの……もしや貴方様は夜宵姫ではありませんか?」
「!? ち、違います……どなたか知りませんけど、その様な方では。ではっ」
Y子は手を無理に離すと、くるりと踵を返して蛇輪の足元に隠れる様に早歩きで去った。
「こ、これはまたもや失礼しました……つい」
コーディエは振り解かれた手をそのままに、じっと歩き去るY子の後ろ姿を見つめた。
「コーディエ殿、夜宵姫と言えば海と山と国の王様とお后様の行方不明となった姫、その御方がどうかされましたか?」
砂緒が夜宵と聞いて激しく反応した。
「い、いえY子殿を間近で拝見して、一瞬懐かしい感じがしてしまいまして。Y子殿には大変失礼な事をしてしまいました。後で謝罪したいです」
その言葉に今度はセレネが激しく反応して、ハハーーン的な顔をした。
「ふむ……つまり失礼ながらコーディエ殿は行方不明の夜宵姫を、かねてよりお慕いされていたと?」
「ち、ちちちちちち、違いますよぉ! 何を仰るのですか!? わわわわわわ、私はただのいち家臣、その様な身で身分違いのお慕い等と……王様とお后様がお探し故、私も探し求めておるだけですので」
それまで冷静な青年という感じだったコーディエは、セレネの言葉に激しく動揺している様に見えた。
「おおお、つまりコーディエ殿は夜宵姫にホの字という事ですな?」
「違います!」
砂緒の言葉に顔を真っ赤にして即座に反応するコーディエ。その姿を見て単純に砂緒は良い人物と知り合ったと喜んだが、砂緒以外のY子が雪乃フルエレだと気付いている人々から見れば、フルエレの出身地が何となく分かってしまった瞬間だった。
「失礼したコーディエ殿。この砂緒という人物は放置して下さい、それよりも捕虜の処理等部下達に任せ、我々は夜になるまでに海と山と国に是非向かいたい。そして王様とお后様に合流の挨拶とお礼をしたいのだ」
セレネは頭を下げるとコーディエに海と山と国行きを提案した。
「おお、それは願っても無い! 是非とも王様とお后様に拝謁して頂き、同盟の絆を深めて頂きたい物です!」
先程とうって変わりコーディエは目を輝かせて喜んだ。
「と、言う訳だ、砂緒さんミミイ王女、一つあの困った御人を捕縛して欲しい!」
「?」
「おお、お任せあれ!」
「右に同じですっうふ」
砂緒とミミイ王女が飛んで行き、メランが頭を抱えた。
―しばらく後
「いーーーーやーーーだーーーー、我はいーーかーーぬーーー!!」
子供の様に激しく嫌がるY子を砂緒とミミイが強引に引きずって来た。
「子供ですかっ! 貴方は雪乃フルエレ女王の名代、海と山と国に訪問しない方が失礼ですぞ」
「雪乃フルエレ女王……?」
セレネの言葉にコーディエが反応した。
「いーーーやーーーだーーー留守番するのーーーー!!」
「その声っ!」
「いーーかーーぬーー我は居残るぞーー」
「いや、言い直しても一緒でしょうに」
メランがまたもや頭を抱える。
「致し方ありません、北部海峡列国同盟総司令官権限でY子殿をす巻きにして運搬します! 砂緒、ミミイやっておしまいなさい!!」
「ラジャーーー!!」
その言葉を聞いた直後に砂緒とミミイが本当に縄でY子をす巻きにしてしまう。
「ギャーーー、犯罪よ、今犯罪が行われているわっ!! 誰か助けてっっ!!」
二人に縄でぐるぐる巻きにされながらY子が泣き叫ぶ。
「あ、ああ、あの、大丈夫なのでしょうか??」
(夜宵さまであったならなんとする!?)
コーディエはどうしたら良いか分からずオロオロと狼狽する。
「ああ、大丈夫です。Y子殿は割と頑丈な身体をなされておいでです。ご心配無く」
セレネは腕を組んで無表情です巻きにされゆくY子を見つめた。
「セレネッ、後で絶対に覚えてなさいよ!! 何か恥ずかしい目に逢わせてあげるからねっ」
「Y子殿お控え下さい、貴方のお立場を考えて物を言って下さい……」
余りに自分勝手な態度にY子が雪乃フルエレだと、とうに気付いているメランが堪らずY子に耳元で注意した。味方だと思っているメランに言われた直後にシュンとするY子だった。
す巻きにしたY子をなんとか無理やり蛇輪に乗せると、コーディエ達一部の海と山と国の指揮官達は深々と礼をして馬で一足先に自国に走って行った。
「シャル王殿、捕虜共の後処理と七葉後川南側の防備をお願い致す」
「しかと任された! ご安心を」
「メランさん、ミミイ王女、黒い稲妻Ⅱでここの防備お願いします。我々は蛇輪で海と山と国に飛びます。恐らく一晩泊まる事になろうかと」
「むがーーーーーっ!!」
(何勝手な事言ってるのセレネッバカーーー!!)
蛇輪の操縦席から話を聞いたY子がす巻きのまま飛び跳ねる。メランが冷や汗を流しながらY子を見た。
「無視して下さいメランさん」
「は、はい……どうぞお気を付けて。恐らくあの黒いヤツの性格からして今夜は約束を守りもう来ないかと。しかし油断はしません」
「うむ、良い心がけだな……」
「うむ、良い心がけだなって……セレネさんそれ何かの演技? 我に返って恥ずかしく無い?」
余りにも総司令官として演劇風に振舞うセレネにメランが少々戸惑う。
「も、もう、此処ではそういう感じなんです! メランさんも合わせてっ!!」
「は、はぁ……」
公も私もシームレスで継ぎ目のないメランにとって、セレネの態度は不自然極まり無く見えたが、普段恥ずかしがりやでもじもじするタイプのセレネにとってはこうしないと駄目なのだろうなと納得して上げた。
「もういいじゃない、ハイッセレネ様、ミミイとメラン二人きりの時間を満喫します!」
「嫌よ凄く嫌」
「砂緒セレネ、行ってらっしゃーーーい!」
兎幸が手を振り、張り切って敬礼するミミイ王女の横でメランは凄く嫌そうな顔をした。魔戦車の好青年はメランが居残る事を知ってほっとして遠くから見つめている。
「では行って来るっ!」
「お后さまお待ちをっ今すぐ行きますぞ!! はははははははははは」
しばらくして調子を取り戻したセレネと砂緒が最後まで嫌がるY子を無理やり搭載して海と山と国に蛇輪で飛んで行った。距離的には一瞬で着いてしまうだろう。
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