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III プレ女王国連合の成立
猫呼クラウディアさん女王就任大祝賀会
しおりを挟む「さーーー今日は無礼講よっ、なんたってこの私、猫呼クラウディアさんの女王就任大祝賀会よっ! かんぱーーーい! だはははははははははははは」
猫呼は異常にハイテンションかつ、可愛いほっぺを真っ赤にしながら自分自身を祝賀すると、何やら色鮮やかな液体の入ったシャンパングラスをきゅーっと飲み干した。
「猫の子さん、貴方お子様なのにそんなにお酒飲んで大丈夫ですの??」
横で見ていたメイド服姿の七華リュフミュラン王女が多少あきれつつ猫呼を心配して言った。
「七華もうワザと言ってるでしょ? ……でも大丈夫デスっっ今夜は無礼講でーーす!! 安心してっこれは○ャン○リーよ○ャン○リー。ホン魔カキャップ付けているのよっおほほほほほほほほほ」
「○ャン○リーでそこまで酔えるのも一つの才能ですわよねえ」
七華はひたすら上機嫌で飲み続ける猫呼を頬に片手を当てて見つめ続けた。ホン魔カキャップとは恐らくこの異世界における、魔法力を応用した○ンワカキャップ的な物であろう。
「いやいや、そういう問題じゃないよ、猫呼ちゃん別に本当に女王に就任した訳じゃないからなあ。ちゃんと分かってるのかなあ? 猫呼ちゃんの事だからシャレは通じてると思うんだけどなあ」
ギラギラのパーティー三角帽子を取って頭を掻きながら有未レナードも呆れて猫呼を見た。
「……ね、ねえ酔っぱらって無いでいい加減フルエレくんの居場所を教えてくれないかな」
「ん? フルエレ?? ちゃんと生きてるから安心して待っててってあははははははっは」
為嘉アルベルトも居た。彼は本心では喉から手が出る程イ・オサの新城に言ってメドース・リガリァ総攻撃に参加したいのだが、雪乃フルエレとの約束を忠実に守って新ニナルティナにいた。しかしその彼も当のフルエレがY子としてその戦争に参加してしまっている事を全く知らない……
「なんですの、結局あの美形の二人もフルエレの取り巻きですの? シャルくん砂緒さまとフルエレは本当は一体何処に行ってしまいましたの?」
七華は自分よりまだ身長が低いシャルに向かって、小さな子にする様に身を屈めて話し掛けた。その為にセクシーなメイド服の胸元から豊かな白い胸が丸見えになる。思いがけずシャルはその瞬間を目撃して、あからさまにウッとなって視線を逸らした。
「知らねーよ。知ってたらこんなとこいねーよ」
「あら……今シャルくん、一瞬目が泳ぎましたわね、うふふふ、どうしたの~~?」
「し、知らね~~よ。もう俺飽きたから街に出てくわっ」
そう言うとシャルはくるりと背中を向けてパーティー会場となっている喫茶猫呼をフラリと出て行った。
「ふぅ~~~シャルってば全くなって無いわねえ。元闇の冒険者ギルドの者の殆どが介護や建設業や牛乳配達とかしてるのに、シャルや私みたいにまだ警備部門やらしてもらってる幸せが良く分かってないのよねえ。はぁ~~~昔みたいに思い切り暴れたり破壊工作したいわぁ。此処が戦場にならないかしら?」
「……ダレッ?」
七華は気が付くと、自分と同じ様なセクシーなメイド服姿で普通にその場に馴染んで突然横に立っている見知らぬ若い女性に驚いた。
「あ、私ライラと申します。姿を消したクレウといい加減なシャルの代わりにフルエレさま……は今居ないけど、猫呼様やそのご友人の七華さま、貴方みたいな方をお守りする役割を仰せつかっております! どうぞ以後お見知りおきを」
「べ、別にわたくし猫の子さんのご友人じゃありませんことよ」
でも言われてちょっと嬉しかった。
「何かあればこの仕込み鎌で敵を切り裂きますよっ!」
そう言ってジャキーーーンと背中に担いだ棒から大きな鎌を出現させた。たまたまサイズが近かった彼女が雪乃フルエレに黒いボンデージ服と妖しいパピヨンマスクを貸した女性だった。
「物騒ですわね……」
「……そうやって武器を見せびらかすような者程、案外弱い物です。くすっ」
和やかな雰囲気の中、突然今まで黙っていたフゥーがライラを挑発する様に嘲笑った。フゥーはまだまだ内心サッワやスピネルというメド国の仲間達を苦しめる敵国を許していなかったので、目前で誇る様に武器を見せられて我慢ならなかったのだった。
「ハァ? なんだこのガキ、奴隷の癖にいきがってんじゃないよっ!!」
ライラは振り上げた大鎌を、フゥーの首に嵌められた魔法封じの首輪の寸前でぴたっと止める。
「くすっ図星だったのでしょうか……」
「何だとコラ」
「何なんですの、急に険悪な雰囲気になって白けますわねえ……」
(これだから庶民は……)
一応リュフミュランという北部の大国の姫として育てられた七華は、曲りなりにもこうした晴れやかな席でいきなり感情剥き出しにする二人に少し辟易とした。割と気が強く物事に動じない七華は友達にはなりたいが、フゥーの身はまあ大丈夫だろうと考え我関せずで、決して善人ぶって止めようだとか仲裁しよう等と言う気は一切起きなかった。七華の性格はライグ村の連中が戦闘に出る事を陰ながら妨害していた当時とはかなり変わっていた。
「わーーー大変です、猫呼さん、ライラさんが武器を持ち出して危険ですっ」
料理をせっせと作っていたイライザが騒動に気付いて猫呼に助けを求めた。
「コラッ何やってんのよライラ! 物騒な物しまってフゥーに謝りなさい」
「へっ!? 何故です……何故私が??」
「くすっ」
猫呼に見えない様にフゥーはライラに舌を出した。
「ちっ、すま……した」
物凄く小さな声で謝ると仕込み鎌をカシャッと仕舞って背中に担ぎ直した。
「あら、素直ね。話によると何であんなちっちゃな猫の子さんに貴方達みたいな腕に覚えのある剛の者達が従うの?」
七華は関わるつもりは無かったのに、余りにあっさりライラが猫呼に従う為に無意識で聞いてしまった。
「七華さまよくぞ聞いて下さいましたっ! もちろん猫呼さまご自身のあの愛くるしい猫耳のお姿や凛とした佇まいやきっぷの良い御性格もさる事ながら、実は御出自にも魅力が……」
「ほう、どの様な?」
七華はちょっと興味が出て来た。
「実は猫呼様は東の地のクラウディアという滅びた王国の姫君さまなのですよっそれが行方知れずの兄君を探して、ちっちゃな体御一つで密貿易船に乗り込んでセブンリーフにやって来たのです。それが私共同じ様に滅びゆく運命の闇の冒険者ギルドメンバーの心の琴線にビンビンと触れるのですよ! 私どもは猫呼様の為なら命も懸ける所存ですわっ!!」
「そぉ~~~なのよねェ~~~~~隠しようの無い高貴な血が」
ライラの話を聞いて、その横でピルラがウンウンと頷いた。
「……ダレッ!?」
またしても七華が飛び上がる程驚いた。
「一応猫呼様の秘書なのにホント、誰って感じよねえ……」
ピルラも遠い目をして頷いた。
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