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III プレ女王国連合の成立
ちょっとズルい鬼神の如きココナツヒメとY子の決意
しおりを挟む先鋒として攻め込んだ三機一組の魔ローダーSRV部隊が爆発、損傷した。しかし戦闘の勢いは止められず、状況がよく飲み込めないまま、勢いで後続の次の三機一組のSRV部隊が突入して来た。
『前列の仇を取れ!! 気を緩めず行くぞっ!』
『ハイッ!』
『ハッッ!!』
再び三機連携してのレヴェル一機に対する攻撃が始まった……ちなみに残り四機のレヴェルは後ろでじっと見ていろというココナツヒメの命令がある。
「馬鹿ね! 目の前で何が起こったかくらい理解出来ないのかしらねえ、ねえクレウ?」
「……ええ」
「ンフフ無口ね。行くわよっ!!」
ココナツヒメの目の前で何も知らず、一機のレヴェルに切り掛かった先鋒のSRVの首をいきなり切り落として、さらに背中に剣を突き立てる。
ドボンッ!!
SRVは煙を上げて膝から崩れ落ちて倒れ込んだ。
『何だ!? 何故!?』
「油断しちゃダメよっ!!」
ザシュッ!!
今度は突然爆発炎上した僚機に驚いていたSRVの片腕を一瞬で切り落とし、さらに背中から袈裟掛けにバッサリと斬り付けた。
『いかん! 味方が危機だ救えっ!!』
次発の三機一組のSRVが最後の一機になり、先程と同じ様にココナツヒメとレヴェルが挟み撃ちにしようとしている最中、それを至近で目撃していた次の三機一組のチームがいち早く仲間を救出しようと走り出した。
ガシャガシャガシャガシャ!!
激しい装甲の鎧の音を立てながら闇雲に突き進む。
『させんぞーーーーーー!!』
ドガーーーーーンン!!
走って来たSRVにもココナツヒメにも突如衝撃が走った……
「きゃーーーーーーっ何!?」
「何だ!? 何に当たった!?」
走って来たリーダーのSRVが透明の何かにぶち当たり、弾き飛ばされる。しかし同時に透明化の最中のココナツヒメのル・ワンも前からコケて両手を着いていた。
「マズいっ!! 知られたっっやらなきゃ!!」
ココナツヒメはいち早くル・ワンを立ち上げると、ぐるりんと旋回して、自分にぶつかり弾き飛ばされたリーダーのSRVの機体中央をいきなり前から突き刺した。
「透明の中かがっ!? ぐわーーーーー」
刺されたSRVは爆発炎上した。それをあっけに取られて見ていた、最初に狙われていた生き残りのSRVが走って逃げようとするので、それはレヴェルが後ろから斬って討ち取った。これで既に七機ものSRVが一気に撃破された。
『今見てた三発目のチームの残り二機、確実にやるのよっ!!』
『はいっ!!』
ココナツヒメは目撃者を葬るべく、そのまま八機目のSRVの腕を切り落とし、さらに前からズバッと胴体を切り裂いた。
『八機目!! あの機体よっ九機目、逃すなっ!!』
ココナツヒメが八機目を切り裂いている時、肝心の九機目は透明の何かが僚機を切り裂く瞬間を目撃して驚いて逃げ出した。
『うわあああああああああ幽霊だっ!!』
『どうした、何故逃げる!?』
『お前ら前に出るなっ! 何か、透明の何かが居て、襲って来る!!』
『はあ???』
『透明の……何かですって!? 一旦東面中央まで後退!!』
メランの指示により残り十二機になってしまったSRV部隊が攻撃を中止して最初に城壁を破壊したポイントに戻って行く。
『意気地なしですわね、逃げるなあああ!』
『如何致しますか?』
ココナツヒメも一気に八機もの敵を撃破して、さらに透明化がバレるリスクを冒してル・ツーが陣取る東側中央にまで攻め込むかどうか躊躇した。サッワが前回九機、ココナツヒメが今回八機撃破と、この時点でも想定以上の大戦果だと感じていた。
『サッワちゃん、追手はあるの??』
『いえ……ミリアとの連絡が付きませんが、追手の様子もありません。最初の射撃位置に戻りました。こ、これより射撃体勢につきます』
(ミリア……死ぬなっ!)
『サッワちゃん、城壁が破壊されて一万以上の地上兵や魔戦車が市街地に殆どなだれ込んで行ったわっ! 爆撃するなら今よっ急いで!!』
『………………は、はぃ」
うわの空で返事するサッワだが、その脳内にはミリアともう一人カレンの事が心配でならなかった。
「これで終わりやなっっ!!」
ズバッッ!!!
瑠璃ィが叫んだ直後、当のミリアが乗るレヴェルはバッサリと肩から腕を切り落とされ、そして次には瞬時に腹を横から斬られ、胴体が真っ二つに裂けてグラリと上半身が落下しかけた。
「サッワさまっ!! 生きて……帰還出来なくて、すみ……ま」
ドカーーーーン!!
上半身が落下し始めた最中にミリアはレヴェル諸共爆発して戦死した。シャクシュカ隊パート2最初の戦死者となったが、サッワを心配させまいと魔法秘匿通信はオフにしていたのだった。
『ウェカ王子、遭遇した敵魔呂一機撃破! このままさらに西に逃げた敵を追うでっ!!』
『駄目だっ!!』
瑠璃ィが言った途端にウェカ王子が強く怒鳴った。
『なんでやーーー!!』
『ボク達は最初の計画通り、首都を急襲して戦争を終わらせる! それ以上の戦闘に深入りするなっ! 瑠璃ィは僕の家来なんだろう?? 言う事が聞けないのかっ!!』
「王子……」
ウェカ王子のあまりにも普段とかけ離れた強い勢いに、後ろで控えていたメアが驚いた。
『分かったわー、そう怒らんといてえな、ごめんごめんやでー』
瑠璃ィは多少後ろ髪引かれる思いがあったが、サッワの機体追跡を諦めウェカ王子達が待つポイントに戻って行った。
メランが残りの十二機のSRV達を引き連れY子が中央で陣取るポイントに戻って来た。
『どうした、メランさん、何故戻って来たの?? 五機のレヴェルは??』
『一機も破壊出来ていません!! 逆に八機も失ってしまいました……』
メランの声には焦りの色がありありと見えていた。
『八機!? バカなっそんな一瞬で八機も?? どういう事だ、爆撃か??』
Y子は余りにもの事態の急変に信じられなくて、驚いて聞き返す。
『違います、爆撃じゃ無いんです。この先に透明の何かが隠れていて、次々に討ち取られる……らしいです』
メランは自分で言っていて頭が混乱した。
『……透明の何か……??』
Y子は透明と聞いて頭にピンと閃く物があった。しかしそれはメランも同じ事だった。
『半透明!!!』
『アイツだっ!!』
Y子とメランは正式名は知らないが、半透明の氷の様な水色の装甲を持つ、あの敵魔ローダーを思い出した。
『結界くんNEOは?』
『はい、全機忘れず所持しています!』
『結界くんの敷設は??』
『地上兵達が滞りなく!!』
『むっ……では私が行きます!! 兎幸、起きてる??』
『起きてるよっ失礼なY子!!』
少し暇をしていた兎幸が座席の後ろで元気に飛び跳ねた。
『魔ローン残存三機展開、機体のバイタルを出来る限り保護してっ!』
『うん!』
すぐさま残り三機の魔ローンがしゅるしゅると出現して胴体と背中に甲羅の様に張り付いた。
『兎幸、上空の魔ローンってどんな探知方法が??』
『うんそうだね、光学、音、振動、熱、レーザー、赤外線センサー、重力センサー、ミサイル探知用レーダー波なんかがあるよっ!!』
『ちょっと何言ってるのだか良く分からないんだけど、とにかく見えない敵でも探知出来るの?』
『余裕で出来るけど……』
『ちょっとそれ早く言ってよ~~~』
『う、うんゴメン。でも敵の超高速の弾道を探知出来る時点で、それくらいわかると思ったの!!』
『わからないわよ、もうっ!』
『Y子さん、言葉遣いが戻っていますよ……』
『……』
戻って来たメランとSRV部隊とに入れ替わり、Y子のル・ツーが一機で先程の『透明な敵』が居たポイントに向かおうとする。
『Y子殿、ダメよ危険だわっ!!』
『大丈夫よ、メラン殿は現場の総指揮をお願いするわっ!! あと砂緒殿を中に投げたから』
『投げた!?』
『やはり心配だわ、五機の勇気あるSRV乗り、命令はしないY子殿に付いて行って欲しい!!』
『はいっ!』
『オレもっ!』
意外に勇気ある者達が多く、Y子の後ろに五機のSRV達が付いて行く。
『待ってらっしゃい半透明!! 今度こそ貴方を倒してあげるわっメランさんの仇よっ!!』
Y子こと雪乃フルエレ女王は珍しく戦う気迫に溢れていた。
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