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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議

シューネ、七華と海の見える神殿に行く……

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「失礼ですぞ、いきなりどうした? 猫弐矢ねこにゃ殿頬張り過ぎであろう」
「ゲハッゴハッお菓子大好き人間でして、これは申し訳ない」

 猫弐矢はお茶を飲んで誤魔化した。

「謎の美少女スナコちゃん? いやあわかりませんなあ」
「そうですか……」

 リュフミュラン王はもっぱら硬くなる化け物と呼んでいる為、砂緒と結びつける事は無かった。

(謎の美少女スナコちゃん? 普通の外国人だったら恥ずかしがって避けようとするネコミミを自ら装着したいと言った砂緒くんの事だ、きっとこれは彼のおふざけに違いない……しかし問題は顔がそっくりな貴城乃たかぎのシューネが砂緒くんを探している事だ、顔がそっくりな二人が再会を果たしでも一方は男の娘? 女装? になっている……カオス過ぎて怖い。これは絶対に二人が会わない様にしなければ……)

「ほほう、北部中部同盟の新女王選定会議ですか、それは何処でどの様な??」

(い、いらん事聞くなっ!)

 余計な事を聞き出したシューネにいらいらする猫弐矢。

「セブンリーフ北部列国と新たに中部小国群の王達三十七名程が一堂に会して平和を維持する為の新女王を決める会議なのじゃが、まだ場所も期日も通達されておらん、決まり次第追って連絡があるじゃろうな」
「なる程……その会議、私も貴方さまの家臣扱いで潜り込む事は叶いませんかな」

 貴城乃シューネが東の地の神聖連邦帝国の有力者である事は事前調整でリュフミュラン王に十分伝達されている、それが家臣扱いでも良いという言葉に王様は喜んだ。

「おうおうそれは酔狂ですなあハハハ、シューネ殿がそれで良ければこっそり同行をお許ししましょうかな」

 ブフッガハガハッ
 猫弐矢は再びむせび込んだ。

「どうしたのださっきから?? 少し落ち着かれてはどうか?」
「う、うるさいっ」
「何ッ!?」
「どうしたのですかな? お二人は竹馬の友ですかな、気心が知れていて羨ましいですぞハハハ」

 少し落ち着いた猫弐矢はシューネの耳元で言った。

「いくら何でも女王選定会議にまで潜入するなんてやり過ぎだよ。止めるべきだね」
「おや、何か隠したい物があるのかな? 例えば私にそっくりな少年だとかね」
「………………」
(ふふ、図星か)

 貴城乃シューネは不敵に笑った。

(弱ったな、本当に新女王選定会議に行くつもりかな? 会議の場がこの男に荒らされなければ良いが……)

 そんな猫弐矢の気持ちなど無視してシューネはさらに突っ込んだ提案をした。

「そうだ王様、今だ会議場が決まっておらぬのならば、リュフミュランのライグ村をずずっと南東に進んだ海岸、セントイースト半島の根元の上にある、コ・ウサ・コの神殿跡などは如何でしょうか? 太陽が昇る東に近い良い場所だと思いますよ、提案なされては?」
「やたら地理に詳しいですな……コ・ウサ・コの地があるセブンリーフ東側はププッピ温泉などがありますが、伝統的に我らは北西側で繁栄して来たので、有力な国等なく小さな村々があるばかり、そこが会議場となる事はまず無いかと。第一ニナルティナから遠いですぞ、しかし太陽が昇る東に近い事にどんな意味が??」

 リュフミュラン王は首を傾げた。

「そうでしたな、貴方たちセブンリーフの地の人々は西側の域外の帝国を尊び、海の神や航海の神を信仰して来たのでしたな……我々とは発想が違う訳です。しかしこれからは東の地にも目を向けて頂きたい、決して域外の帝国に負けない文化が神聖連邦帝国にもありますぞ」
「は、はぁ……そう致しましょう」

 王様はいまいちピンと来ていない様だった。

「では女王選定会議が始まるまで、リュフミュランに逗留しても良いでしょうか?」
「それは結構な事ですな、もっと東の地の事が聞きたいですぞ」
「ええ、しかし我らもセブンリーフ各地の調、いや観光がしたいのです」
「では、まずは我が国の北の海が見える神殿に行かれては? 島には渡れませんが海岸側の神殿なら出入り自由ですぞ、これ七華シューネ様と同行しなさい!」
「ええっ私がっ!?」


 いきなり指名された七華王女がびっくりしたが、貴城乃シューネは休む事無くさっそく海が見える神殿に向かった。リュフミュランの北の海が見える神殿は一番遠くの禁足の聖なる小島、さらに以前北部海峡列国同盟が締結され魔ローダール・ワン玻璃ノ宮が襲い掛かって来た島の神殿、さらに陸地側の海岸の神殿の三つに分れているが、今回シューネが来たのは海岸の神殿だった。

「へェーなかなか風光明媚な所だね」

 猫弐矢は持って来たお菓子をボリボリ食べながら言った。

「何故君がいる?」
「何故って貴様がわざわざ平和に暮らしてた僕をセブンリーフに連れて来たんじゃろがい?」

 猫弐矢は牙を向いた。

「もういいよ、それは悪かった。しかしこれから僕はこの麗しい姫君と二人きりでお話しがしたい。君もそういう恋路を邪魔する様な無粋な事はしたく無いだろう」
「きゃっ」

 言いながら貴城乃シューネは強引に七華王女の肩を引き寄せた。猫弐矢は少し怒りを覚えたが同時に伽耶クリソベリルの顔を思い浮かべてもいた。

「お嬢さん、嫌なら嫌と言えば良いのだよ。こんな奴に構う必要は無いんだから」

(スピナの顔で優しい事を言われると……)
「い、いえ大丈夫ですわありがとう。これでもリュフミュランの意地悪王女と言われたわたくしです。これくらいの接待こなして見せますわ」
「意地悪王女!?」
「接待だなんて、これじゃあ僕が悪の貴族みたいじゃないか」
「そうですわよ? いらして、海が良く見える場所にご案内しますわっ」
「気を付けて!」

 七華は心配する猫弐矢に会釈するとシューネと連れ立って行った。


「向こうに見える大きな島に神殿跡があって、そこで北部海峡列国同盟が締結されましたの、きゃっ!?」

 観光案内をしているつもりの七華の後ろからいきなり貴城乃シューネが抱きすくめた。

「貴方を一目見た時からずっとこうしたかったのです、お許し下さい」
「お止めになって、人を呼びますわよ……」

 しかしシューネは七華の綺麗な形をした胸に触れるか触れないかの微妙な腰の位置に腕を回し決して離さなかった。

「貴方も僕を初めて見た時、ティーポットを床に落とし、目が泳いでいたね? 何故なのかな……」


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