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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議

フルエレ、久しぶりの仮宮殿出仕 下 ライス氏復帰

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 喫茶猫呼営業再開記念大祝賀会から数日後……

「はぁ、なんだか凄く緊張する……今から帰ろうかしら」
「そんな事言うなよ~~せっかく皆も付いて来たんだぜ、一緒に行こうよ~~」

 今回は久しぶりのフルエレの出仕という事で国主の有未うみレナード始め、猫呼ねこことイェラと砂緒とシャルと珍しくセレネも初めて一緒に来ていた。そのレナードが妙に馴れ馴れしい態度でフルエレを説得した。

「い、いやはあ……なんだか照れちゃうなテヘー」
「お前はよくあの状況から宮殿行きを誘えたな、ハートの強さが恐ろしいわ」

 イェラが睨みながら言った。

「え、何かあったっけ? 俺は砂緒くんと遊んでただけだが??」
「おっこれはイェラ一本取られましたなっ」
「何ッ?」

 イェラは砂緒とレナード二人をギロリと睨んで、二人は黙った。

「おっ着いたぞ」
「有難うねライラ、ビルを頼むわ!」
「はい、フルエレさま猫呼さま行ってらっしゃいませ」

 有未レナードが公費を流用して猫呼に買い与えた高級リムジンタイプ魔車から皆がぞろぞろと降りて行く。しかし猫呼は魔法のお財布でこの国の財源に大きく貢献している……


 応急修理が進んだ女王仮宮殿のゲートにはいつもの警備員のおじさんが居た。おじさんは久しぶりに雪乃フルエレ職員の姿を見て感激したが同時にいつも一緒だった為嘉なかアルベルトの事を持ち出すべきかどうか迷った。

「おっフルエレちゃん久しぶりだね嬉しいよ! おはよう今日は団体さんだね!」
「おじさんお早う、久しぶりに出仕するの!」

 結局両者とも彼の事には触れなかった。フルエレの後ろから魔法IDカードを持った一行がぞろぞろと無言で続いた。当然レナードは国主なので正門から堂々と入っている。

「あっ……」
「どうしたフルエレさん?」

 ゲートを潜ったフルエレは、ふと一人の若い女性職員と目が合った。アルベルトと楽し気に談笑しているのを見てフルエレが立腹した当の女性職員である。彼女は目が合っただけでは無くて、一瞬何か言いたげな感じがあったが、本当に微妙な会釈をすると足早に立ち去って行った。

「ううん何でも無いの」

 フルエレは久しぶりに宮殿に来て早々、言い様の無いどす黒い不安感がよぎって胸騒ぎがした。

(彼女……何が言いたかったのだろう)


 そしてフルエレは喫茶猫呼店員でかつ、ただの美し過ぎる女性職員から女王雪乃フルエレに変身して自身の控室で待機していた。
 ガチャリ。

「おおっフルエレ、それっぽくなりましたな。それにセレネもフォーマルなスーツにタイトスカート、私の好みのツボを押さえてますな。まるでエレガの女神さ……いえ」
「どうした?」

 砂緒は一瞬、前世の前世の妻セレンの事を思い出し掛けて止めた。

「今回はセレネも一緒に出てくれて心強いわぁ、うふふよろしくね」
「フルエレさんがあたしも出ないと行かないと駄々をこねたからだろっ!」
「ご安心を今回からは私もフルエレの弟にいきなり就任したので正式に出仕出来まするぞ」
「まあまあそれもこれも私が落選してセレネが当選したらすぐに終わるけどね」
「またまたあフルエレさんが当選しますから!」
「何故皆私の女王当選を考えないのよ?」

 猫呼がムスッとした時、ガチャリとドアが開きそこにレナードが顔を覗かせた。

「おおっ皆揃ってんな。それでよ……フルエレ嬢ちゃん、重臣会議が始まる前に事前に会って欲しい人がいるんだが、大丈夫かな? 今日からデビューする重臣の一人なんだが挨拶したいとよ」
「えっあ、はい? じゃあ会います」

 こうした事前の挨拶はよくあったのでフルエレは何気なく許可をした。

「失礼致します」

 皆の視線と注目が集まる中、レナードに続いてドアを開けて一人の男がゆっくりと入って来た。その男を見た途端、イェラと砂緒とフルエレとシャルが息を飲んだ。

「女王陛下お久しぶりで御座います。ハルカ城より戻りましたライスめで御座います」

 ライス氏は深々と長時間頭を下げた。

「これはどういう事だレナード!!」
「頭を上げなさい。レナードさんどういう事なの?」

 ライス氏は元々旧ニナルティナ王国元軍人の重臣で、為嘉アルベルトの先輩に当たり彼を何故かやたら前線に出そうとしたり嫌味を連発したりしてフルエレの逆鱗に触れ、シャルのギルティハンドの能力で罪を捏造して陥れ、放棄されたハルカ城城代という閑職に左遷させていた男だった。

「フルエレ女王、お前さんがライス氏に思う所あるのは良く知ってる。でもライス氏もお前さんに色々な思いがあるのは分ってるよな? それでも俺の為に国を支えてくれる決心をしてくれたんだ。アイツが、アルベルトが抜けた穴を補えるのはもう経験豊富なライス氏しか居ないんだよ、どうか嬢ちゃんなんとか納得してくれねえかな?」

 フルエレはライス氏の顔を見ただけで涙が溢れそうになって必死に耐えた。彼女はこの男を非常に恨んでいたが、半分以上は逆恨みでもある事を彼女自身も分かっていた。

「フルエレ、貴方が命令すれば一瞬で雷で消してやりますよ」
「フルエレさんが嫌いな男なのか?」

 セレネと砂緒が非情に恐ろしい顔でライス氏を睨んだ。

「女王陛下! この私をお許し下さい」

 突然ライス氏は土下座する勢いでフルエレの前に跪いた。

「何を?」
「初めてお会いした時、不遜にも私は貴方様を小娘と蔑んでおりました。そして仲が良いアルベルト殿にも辛く当たってしまいました。しかしアルベルト殿は宮殿を守って壮絶な戦死をされ、貴方ご自身は自ら戦装束で先陣に立ちメドース・リガリァに最後の引導を渡したとか。もはや私の完敗で御座います。本来なら自害して果てても良い物をレナード公が最後の出仕の機会を与えて下さった。以前の私とは完全に心を入れ替えました。この際はどうぞ女王陛下の為に命果てるまでお仕えさせて下さい」

 よどみないが、声は決して巧言や追従という感じでは無く、本心からフルエレに心服して言っている様に思えた。

「な、女王陛下ダメかな?」

 雪乃フルエレ女王はしばし黙り込んで悩んだ。砂緒とセレネも黙って両者を見守った。

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