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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議

決着と夜の庭の二人…… 中 砂緒さんの野望 全・国・版

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(こ、コイツがいると私のチヤホヤされるポジショニングが崩壊する。早く追い出さねば!!)

 いっぱしのハーレムの主気取りの砂緒はイケメン貴公子紅蓮アルフォードの存在に早くも危機感を覚え、なんとか排除したいと焦りに焦った。

「良いからセレネさんが言う様に、はよ帰れや!!」
「うげっ!?」
「スナコちゃん何よその声!」

 キュキュッ
『え? あ、本当ですね、元に戻って……ああぁ~~~我が美乳も消え去っていますね。色んな事を試す隙すら無かった……無念』
「お前、声が変わった途端にホワイトボード準備するとかプロスナコちゃんだな」
『一つの美意識です』
「砂緒は一体何を試したかったのよ、不潔だわ……」
『アンタら普段から女体の癖にずるいよ!』
「ズルいとか意味が分からんわ」

 声が変わったスナコを見て紅蓮は一瞬きょとんとして黙っていた。

「君……もしかしてププッピ温泉近郊で戦った? ああ生きてたんだ良かった」
『お前死んだ事にしてたろーが!?』
「あはは、スマンスマン。悪気は無いんだ」
『悪気無くて死んだ事にしないでもらいたい』
「しかし……身体が変化したのは仕方無いとして、幻惑魔法が解けても顔は一切変化無い、女の子のままだね……元の顔がどんな顔かはっきり見て無かった訳だけど」

 紅蓮はスナコちゃんの顔をしげしげと眺め続けた。

「こ、こいつもしかして砂緒の顔が貴城乃たかぎのシューネにそっくりて気付いて無い?」
『かもね。この事は秘密にしておきましょう』

 セレネとスナコは紅蓮に見えぬ様にこそこそと会話した。

「凄いな、僕も一回くらい男の娘しちゃおうかな……」
「お前そんな趣味あるんか」

 少し頬を赤らめた紅蓮を、セレネは眉間にシワを寄せて見た。

 一書に曰く、スナコちゃんの女体化に触発された紅蓮アルフォードが、彼の後の男の娘作戦に繋がったと伝わる。


 ―晩餐会会場。

「戻ってきたぞ」
「しっ! 静かに……猫呼ねここちゃんスヤスヤと良く眠っていますわ」

 先頭を切って歩いて来たセレネが言うと、七華が指を立てて注意した。

『うわっ猫耳付けたおじいさんが笑ってるわ!!』
「つまり庭師さんは本当にお爺さんだったのねえ」

 スナコちゃんと雪がテーブルに座る猫耳のお爺さんに驚いた。

「つまり普段からエロい事考えてる方が本当に猫弐矢お兄さんだった訳だ……」
『許してやりなされ、誰でも七華を見れば我を忘れて狂うものじゃ』

 スナコはセレネの肩に手を置いた。

「では猫呼先輩はあたしが適当な部屋に連れて行ってやろう」
『て訳で、今度こそ紅蓮とやらは出て行ってもらおうか、はいバイバイ』
「つれないな」
「あ、そうですわ猫弐矢ねこにゃも担いで行く事をお忘れなく」

 七華が床に無造作に転がる猫弐矢に指をさした。

「はいはい、人使いが荒いお姫様だね、よっこらしょっと」

 言われて紅蓮はまた片手で猫弐矢を担ぎ、両肩に大の男を二人運ぶ状態になった。

『七華はどうするのですか?』
「わたくしは野宿は嫌ですわ。今晩はこのお城に泊まりますの」
『それがいいね!』
「えーー」
「本気かよ。砂緒の部屋に接近するなよ」
「何で貴方にそんな命令受けなければいけませんの?」
「ナヌッ!?」

 またセレネと七華が険悪な雰囲気になり掛け、スナコが割って入る。

『ご安心を。今は心も体もスナコの私は七華とも女性としか接しません!』
「それはそれで怖いけどな」
「あらまあ、わたくしはどんなお姿でも砂緒さまをお慕いしておりますのに」

 等と会話する皆に今度は紅蓮が割って入った。

「じゃ、僕はここらへんで出て行くとするよ」

 手が振れないので紅蓮は挨拶もほどほどにあっさりと背を向けて部屋を出ようとする。

「あ、待て、本当にまっすぐ出て行くか監視してやる!」
『セレネを一人で行かせるのは危険です。私も行きます!』

 すたすた歩き去る紅蓮をスナコとセレネが追い掛けて行った。

「じゃあ仕方無いわね、私と七華で猫呼をベッドまで運んであげましょう」
「なんですって!? わたくしお箸とスプーンとフォーク以外重い物を持った事がありませんの!」
「ふぉっふぉっふぉっ、ではワシが手伝うとしようか」

 やおら猫耳庭師のシルベーヌさん(64)が立ち上がった。

「あ、いいですわ、わたくしも運びますわ」
「うん、一緒に運ぼ七華、よいしょっと」
「お、重いですわね店長」
「店長?」

 二人はなんとかして年齢に比して小柄な猫呼を運んで行った。

「わ、ワシは……」

 何の罪も無い猫耳庭師は特に活躍も無いまま放置されたのだった……


 既に深夜二時となった。猫呼を運び終えた雪は雪乃フルエレに戻り、七華と共にそれぞれの個室に行って眠りに就いた。当然シルベーヌさんも自室に戻って行った。城の麓で眠りこけるタカラ指令以下城の人々は放置され朝起きるに任せる事とした。

「アイツ抵抗する事なく素直に出て行きやがったな」
『そうね』

 二人は紅蓮の出城を監視し終えた後、部屋に行かずになんとなく深夜の庭園に来た。なんとタカラ指令の趣味で本当に薔薇の庭園が存在していた。

「もう二人きりなんだから、スナコちゃんは良いよ。お前の地声が聞きたい」

 セレネはそう言うと、そっと砂緒の肩に身を寄せた。

「はうっ……さっきワザと紅蓮に話し掛けて、やきもきさせたでしょう?」
「……嬉しかったぞ……」
「え? 何がですか」
「覚えて無いのか? 私のセレネに気安く触るなーって言っただろ」

 セレネは持たれながら砂緒の目を見た。

「あれーそんな事言いましたかねー?」

 何時に無いロマンチックな状況に砂緒は妙に気恥ずかしさを覚えた。

「凄く嬉しかったぞ……」
「そ、そそそうですか!? あっそうだ……私貴城乃シューネ見てて思ったんですが……」

 砂緒は少し赤面して必死に話題を転換した。

「何だよ、唐突だな」
「あの紅蓮とか言う奴が必死に守るシューネはきっとかの国の大臣か重臣か何か、アイツと上手く入れ替わる事が出来たら、神聖連邦帝国とやら案外簡単に乗っ取る事が出来るやもしれませんぞ!」

 砂緒は面白い話題だと思い魔法街灯の下、笑顔でセレネを見た。

「………………変な事言うなよ」
「へ?」
「あたしの事置いて、どっか遠い所に行くみたいな事言うなよ」

 先程までの嬉しそうな顔から一転、セレネは涙ぐんでいた。
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