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Ⅳ セブンリーフ新北中同盟女王選定会議

まおう軍の地で生きる……

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「そうだっメランさんアレはどうなりましたか? 順調でしょうか??」
「任せて! 貴方が託してくれた新兵器、テストでは良い結果を出したわっ私に相性バッチリみたい」
「ほほう、それは重畳です」
「雑魚じゃない遂にメランちゃん最強伝説をお見せするわよっ!」
「おおっお頼みします」
「聞いてる?」
「聞いてます」

 ジェンナとカレンは二人の会話を無言で見ていた。

「総司令の感情籠ってないね」
「目が死んでるね。むしろセレネさんが子分的な雰囲気すらするよ」
「そこっ何か?」

 セレネに睨まれて黙る二人。

「ちょっとセレネッ私の事忘れ過ぎだよっ!!」

 先程から寝ていた兎幸うさこが突然起きて怒りだす。

「……兎幸先輩、寝てたじゃないですか」
「えっ先輩?」
「関係性がよく……分からない……」

「とにかく兎幸先輩も新たに配下に入ったユッマランドのナリ君も含め総勢ニ十二機の魔ローダー部隊、メランさんとジェンナさんの指揮の元よろしく頼む。兎幸先輩はメランさんのル・ツーに同乗して魔ローンの盾、いつでも使える様に」
「おおーっ!」

 兎幸が一人能天気に拳を上げると、メランが少し考え込んだ。

「これ程の布陣、やはり半透明は来るのかしら?」
「……来る! 半透明は、ココナツヒメは生きていれば必ず来る!!」

 セレネは真っすぐ前を向いて言い切った。

「何だか待ってるみたいねえ」
「そんな事は無いです! ただ用心に越した事は無いだけですよ」

 そんな二人の会話を聞いて、ジェンナとカレンはそれぞれ別々の心境で複雑な感情を持っていた。

(ココナツヒメ、死んで行ったシャクシュカ隊の仲間達の霊の為にも……来れば必ず倒す!!)
(ココナツヒメ……サッワくんを連れ去った女。生きているのだろうか……二発撃ちこんだ手応えがまだこの手に残ってる……)


 ―同じ頃、まおう軍の地。

「はい、ココナツヒメさま綺麗な花が咲いてますよ~~」
「あうあ~~~?」
「なんという花なんでしょうか?」

 車椅子を押すサッワとそれに座るココナツヒメが見ているのは椿の花だった。

「あっあっあー」

 ココナツヒメは指をさして笑顔になった。サッワは魔王抱悶だもん所有の最強の魔ローダー、ル・スリー白鳥號の使用許可を得て魔ローダースキル「超回復」をココナツヒメに使用したが、その時既に彼女は心音も無く青白くなっていた。奇跡的に息を吹き返した事は良かったが、出血多量で脳を巡る血液が足りなかったのか、知能や運動能力が完全に戻る事は無かった。今日もサッワは常にこうして彼女の世話を甲斐甲斐しく行っているのだった。

「あっあっ?」

 サッワが一瞬ぼーっとしていると、ココナツヒメが必死に何かを聞いているようだが、彼にも彼女の心境や知性がどこまでの物か良く分からない事も多かった。

「そ、そうですねココナツヒメさま」
「あー?」

 適当に返事をするとココナツヒメは派手になり過ぎない程度にぽってりとした唇を半開きにしてサッワの事をぼーっと見た。

(ごくり……常に色っぽい事を言って男達を惑わして来た唇だ……)

 ココナツヒメの容色は、往時からいささかも見劣ったりしていない。血色も肌の色も良く、今にもまた命令を叫びそうに思えて不思議でならなかった。

(ダメだダメだ、介護しているココナツヒメさまを女として見るなんて最低だ……)

 サッワは必死に首を振った。

「頭をブンブンと振って何をやっておるのですかサッワ殿? 交代の時間ですぞ」
「い、いやっ蠅が飛んでおりまして」
「おりませんが。さあココナツヒメさま、今度は熊牧場に行きましょうね~~~」
「あうあ~~~!!」

 またもう一人ココナツヒメの世話を率先して甲斐甲斐しく行う男がやって来た。

「クレウさん、余りココナツヒメさまを遠出させないで下さい。体力は無限じゃないのです!」
「はいはい分かってますよ~~ココナツヒメさまは熊ちゃんが大好きですよね~~」
「ああ~~!!」

 心なしかクレウが来ると彼女の喜び様が大きい気がして嫉妬した。

「もうココナは元に戻らんのか?」

 突然まおう抱悶が腕を組んで現れた。

「うげっまおう様」
「抱悶さまっ!」

 二人は畏まったが、サッワはここぞとばかり必死に叫んだ。

「もし、もう一度超回復を掛けてみたならば、或いは……もしや」
「うむ、考えておくのじゃ。それにしてもスピネルは何処に行った? 新たに設けたまおう軍三魔将がブラブラしておってどうするのじゃー」
「ははっスピネルさまは家業の仕出し料理屋の配送をしておるかと……」
「なんと、あ奴その様な事をやっておるのか」
「ははっ」

 軍事を司っていたココナツヒメがこの様な状態の今、スピネルを筆頭にサッワとクレウはまおう軍新三魔将と呼ばれていた。しかし普段は三人ともがこんな感じである。

 ―スピネルの彼女、エカチェリーナの両親の弁当屋兼仕出し屋。

「スピネルさま、三丁目の熊五郎さんのお家親戚の集いで仕出しセットAが七つ、配送お願いね」
「うむ分かった。ワゴン魔車で早速行ってこよう」

 すぐさま向かおうとするスピネルの腕を彼女は掴んだ。

「ごめんなさい、立派な騎士さまにこんな事をさせて」
「何を言うか、私がまおう軍の地でもケーキ屋を続けろと言ったのだ」
「……貴方、仕出し屋よ。また父に叱られるわ」
「うむ、悪かった。私はこのパン屋という仕事、性に合っている様だ」
「わざと言っているの?」
「うんどうした? では行ってくるぞエカチェリーナッ!!」
「スピネルさまっ名前は勘弁して」

 スピネルは魔ローダーでも操縦する様に、ふるびた中古のワゴン魔車を運転して行った。

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