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Ⅴ 千岐大蛇(チマタノカガチ)

女王雪乃フルエレの判断 Ⅱ なじる

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 祝!! 阪神タイガース日本シリーズ優勝!!
……阪神Tに嫌悪感を持っている方すいません、何事も無かったかの様に本編始まります。


「離してよ紅蓮、私はもう抜けるからっ」

 強く握った紅蓮アルフォードの手を振り解こうとするが、いつも美柑ミカに甘い彼ががっしりと握った手を離そうとしなかった。

「ダメだよ、今美柑が抜けたら皆が迷惑するから」

 紅蓮が発した言葉に彼女は少しムッとした。

「迷惑って何だよ、私は元々ボランティア的に途中参加しただけだよ! 抜ける自由くらいあるじゃないっ」

 この二人には珍しい言い合いであった。

「そんな事無いよ。巨大魔呂の回復が出来るのは今の所美柑だけじゃないか、美柑がこのチームに入った以上は抜けたら皆に迷惑が掛かるよ」
「そうだよ、突然どうしたのか分からないけど、美柑さんがヌッさまの魔力補助してくれないとフゥーくんはまともに戦えない、僕からも頼むよ」

 紅蓮に続いて猫弐矢ねこにゃまでもお願いして頭を下げた。

「美柑殿、私からもお願いしよう。決して悪い様にはしないとお約束する」

 貴城乃たかぎのシューネにとってみれば、今回の件だけでは無くて対雪乃フルエレ女王の切り札としても美柑との関係は深めておきたいと願っていた。

「分かったわよ……でも、この宮殿に妖しいパピヨンマスクと予備のメイドさん服はある?」

 美柑は臨時総司令代理に指名されたメイドさんに突然不思議な事を訪ねた。

「え~~っ妖しいパピヨンマスクに予備のメイドさん服ですか~~?? ……ありますよっ!」

 メイド総司令はウィンクして答えた。この異世界には宮殿や城にはたいてい妖しいパピヨンマスクが常備されている様だ。

「いいわよこれから私は謎のパピヨンメイド操縦者美柑だよ分かった? じゃ、案内して……」
「は~い」

 こうして一応納得した美柑は更衣室に消えて行った。

「で、だ、話を元に戻すがシューネ、君も美柑くん同様にハラを決めてくれたんだね?」
「……」

 猫弐矢が念を押すがシューネは再び渋り出した。しかし直ぐに紅蓮がずいっと彼の横に立ち塞がった。

「シューネ、美柑が強い覚悟で臨むと決めた以上、君が逃げる事は許さない。神聖連邦帝国聖帝の息子として命令するよ、セブンリーフに行ってあの女王陛下にお願いして来るんだ」

 しばらく沈黙が続いたが、若君にこう命令された以上はシューネに逆らう事は出来なかった。彼は椅子から降りて床に跪いた。

「ははっ謹んで拝命致します」

 これで話は決まった。

「よし、そう決まった以上は早く大型船に乗り込んで……」
「いや猫弐矢、大型船は積載量が大きいがのろい。セブンリーフに行くだけで一日過ぎてしまう」
「ならどうするんだい?」

 三人は困った。

「ほほほ、内魔艇しか無いでしょうな。その七葉島の女王の魔ローダーとやらが金輪こんりんと同じ能力を有するからば、此処まで飛んで来れば良い訳でしょう」

 夜叛やはんモズが珍しく良い事を言った。

「それだっ早速内魔艇に魔戦車搭乗者を数人乗せて魔-ターボートの様にぶっ飛ばそう!!」
「それなら数時間で行けるか……」
「僕も乗ろう!」
「私も!! フルエレ様に地面めり込み土下座しますっ!」

 紅蓮とフゥーも一緒に行こうとした。

「いえ、若君と美柑殿とフゥーは充分に休息を取ってもらいたいのです」
「僕とシューネの二人で行こう。必ず蛇輪へびりんを飛ばして来るよ」
「それでは……待っているよ」
「不安です……お気を付けて」

 シューネが本当にあの歪んだ性格の砂緒すなおの前で頭を下げる事が出来るのか、フゥーは激しく不安気な顔をした。

「もう本当に時間が無い、とにかく急ごう!!」
「そうだな……」

 二人は魔戦車搭乗者数名を叩き起こし、すぐさま内魔艇に乗り込んだのであった……


 ほわんほわんほわんほわんほわわわわわ~~~ん。
 此処で途中、回想の中の回想等もあったりしたが、猫弐矢と貴城乃シューネが喫茶猫呼ねここのVIPルームで雪乃フルエレ女王の前で語った長い説明が終わった。もちろん美柑が妖しいパピヨンマスクを付ける下り等都合の悪い部分は話していない。

「長いわっ! 週刊少年マンガでこれから決戦が始まるのかー、思ったら突然長い長い回想シーンに入るくらいに長いわっ!! 日ィ暮れるくらいに長いわっっ」

 セレネが立ち上がって叫んだ。

「いや、日が暮れちゃダメなんだ、クラウディアが滅びちゃうよ」

 猫弐矢が小声で言った。前回は魂が抜けた状態今回は怒り狂った状態と、穏やかな猫弐矢は性格の浮き沈みが激しいセレネが苦手に感じ始めた。

「はぁ? 滅びるだぁ? ふざけ倒せよ、知るかっそんなもん知るかっ! それにシューネ、お前よ~~~来たなあ?? あんだけの騒ぎ起こしてノコノコ頼みに来るってどんな了見だよコラ」

 セレネはなじりになじり倒した。

「その通りです滅びろ! そのまま滅びてしまえヒャッハーーー!! あんだけの事しでかして頼みに来るってどんだけ図々しいんですか? まずは前回の会場破壊の賠償金を払いましょうよ! 話はそれからです」

 セレネに続いて案の定砂緒もなじり始めた。

「もちろん賠償金なら払おう、クラウディアに来てくれれば金塊をいくらでもお支払いするよ」

 猫弐矢が冷や汗を流しながら頭を下げた。

「いやいやいやそんな物いらん、無尽蔵にあるクラウディアの金塊じゃダメだなシューネが身銭切って払えや! 片腹痛いわ」
「そうですよ、セレネさんの可愛いおへそがよじれて死んだら貴様の所為だからなっ!」
「……人前で変な事言うなよ」
「すいません遂」
「金でカタが付くならば、もちろん私の土地私財を売り払ってお支払いしよう」

 無表情でシューネは答えた。

「はあ? それはもちろん会場破壊の賠償金で」
「カガチだかドガジだかの討伐は含まれんからなっ! ヒャッハー」

 セレネと砂緒は仲良く肩を組んでシューネの顔に指をさしまくった。
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