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2-Ⅰ 依世とフルエレ
姉妹ケンカ①
しおりを挟む「わああああああああああああああああああああああああ!!!」
ガバアッ
砂緒は突然大声を上げてベッドから跳ね飛び起きた。その顔は大量の冷や汗で濡れた様になっている。と、ふと横を見ると魔法デジタル目覚まし時計は午前4時頃を表示していた。周りを見回しても喫茶猫呼が入るギルドビルのいつもの殺風景な自室の風景である。窓から見えるニナルティナの景色はまだまだ深夜、という感じであった。
「はぁはぁ……なんだ夢か……なんか凄く恐ろしい夢だった様な気がする」
砂緒は袖で汗を拭う。
(フルエレ……)
つーーー
と、ふと気付くと砂緒の頬に一筋の涙がつーっと流れ落ちて行く。
「あ、あれ!? なんぜに私涙などを? ふふっ悪夢を見て真珠の涙を流すなんて、乙女チックなワ・タ・シ」
悪夢が現実じゃ無いと気付いた安堵の涙だろうか、今度は何故か笑みがこぼれる砂緒。
ガンガンガンッ!!
と、突然ドアが激しく蹴られる音が鳴ってビクッとする。
「おらーーっ! どうした砂緒、大丈夫か??」
ドシャーーーン!!
セレネの叫びと共にドアが遂に蹴破られた。
「どうしたの砂緒? 早く出て来て頂戴!」
セレネに続いて雪乃フルエレまでもが心配して呼んでいる。しかし乙女な二人は若い男子の部屋に入る事を躊躇していた。何かとてつもなく恐ろしいブツなどが転がっていそうで怖いのだった。
「は、は~~~? すいません……う? うおおおおおおおおおおおお!!」
玄関に出た砂緒は廊下の魔法灯りで、背中が後光の様に輝くパジャマ姿のセレネを見つけた途端に、涙を流しながら凄まじい勢いで飛び付いて行く。
「キモイわっ!!」
シュンッビチャッ!!
しかしセレネに飛び付こうかという直前に、彼女の凄まじい反射神経の手刀で廊下に叩き付けられ、頭が床にめり込んだ。そしてその瞬間、彼は夢で見た内容の大半が飛んだ。
「ぐぎゃっ!?」
「きゃあっ何て事するの? 砂緒だって生き物だもの、酷い事しちゃダメ」
フルエレは床にめり込んだ砂緒の頭を優しく掘り出した。
「ううっフルエレ優しいです。先程怖い夢を見てしまったのです。それでどうしても起きた途端に目に入ったセレネの低い胸に飛び込みたかったのですよ……」
(フルエレ、本物のフルエレ……! あ、あれでもどんな夢の内容でしたっけ!?)
砂緒は首を傾げた。
「そう……なのね? じゃあ仕方がないわねえ」
と言いつつセレネの胸を見た。
「納得するなよフルエレさん」
「そんな低い胸でも人の役に立つのよ?」
セレネは硬直した。
(ふ、フルエレさんにまた乳いじりされた……少し育って来てるからって)
その瞬間、砂緒は雷に打たれた様にハッとした。
「思い出しました! 恐ろしい夢の内容の一端がっ!!」
「何だよ言ってみろよ」
「セレネさんの乳が……多少でかくなっていました」
「……」
セレネは目を細めて言葉が無かった。
「あら、良かったじゃない?」
フルエレはにこっと笑って彼女を見た。
(また……乳いじりされた……見てろよ……)
と、突然フルエレが羽織っていたガウンをふわさぁっと床に落とした。
「仕方ないわねえじゃあ砂緒、今日は特別に私の胸に飛び込みなさい!」
と言いながら明らかにセレネより育っている、可愛いパジャマに包まれた美乳を突き出した。
「え?」
「フルエレさんそんなキャラだったか?」
「え、そうだっけ?? とにかく飛び込みなさい」
砂緒は突然突き出されたフルエレの美乳に戸惑った。宇宙で別れを告げられた直後でもあり、彼の心がセレネに傾きつつあった以後、そうした目でフルエレを見るのは久しぶりだった。
「い、いや~~面と向かってその様に言われると、なにやら気恥ずかしい様な気が……」
頭を掻く砂緒。
「止めちゃうの?」
「い、いえ据え膳なんとか言いますし、では御相伴に預かりましょうかなあハハハ」
砂緒は笑顔で赤面しつつピッと手刀を切って、中腰になってフルエレの健康的に膨らむ胸に顔を押し付けようとした。セレネは眼前で繰り広げられる異様な光景に、どうしていい物か戸惑った。
「ほ、ホントにやんのかよ?」
「なんだかドキドキしちゃうわねえ!」
「ハァハァ……ごくり」
「……」
セレネが眉間にシワを寄せ、目を細めて見ている前で、今まさに砂緒の頭がフルエレの若い胸の膨らみに、子猫の様にスリスリされようとしていた。
「だめええええええええええ!! おりゃあああああああ!!!」
ドギャアアッ!
突然文字通り飛行魔法で飛んで来たフルエレの妹の依世が、躊躇無く砂緒の頭に強烈な両足飛び蹴りを食らわせ、彼は凄まじい勢いでゴロゴロ転がって行き、最終的に長い廊下の端っこの壁に激突して止まった。
ビチャッ!
「ギャアーーッなんて事するの!?」
フルエレは口に手を当て驚いたが、依世はさっとフルエレを庇った。
「夜宵お姉さま大丈夫!?」
「何なの? 何事なのよもぅ」
下の騒ぎに最上階で一人寝ている猫呼まで眠い目をこすりながら降りて来た。
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