ユルギと剣の柱

eden

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畳の匂いと五目並べ

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「……ごめんなさい、ウツロイ」

 ユルギはウツロイの腕のなかから離れ、鼻を真っ赤にした顔をあげた。胸を押さえたまま、「もう大丈夫だから」と付け加えた。

 ウツロイは、ユルギの泣き腫らした目を見て、「大丈夫じゃないわ」と言いたくなった。だが、それを言っていいものか。彼女の「大丈夫」は、大丈夫であろうとするための言葉ではないか。彼女の「大丈夫」を否定したら、彼女は壊れてしまうかもしれない。

 だからウツロイは、「何も気にしないでください」と言って、微笑んだ。すると、ユルギもホッとしたように息を吐いた。

「何か飲みますか」

「ここに飲み物なんてあるの?」

「私が自宅から持ってきたコーヒーと紅茶ならあります」

「じゃあ、紅茶が飲みたいな。あったかいの」

「承知しました」

 ウツロイが立ち上がったとき、ユルギが何かに気がついたように「待って」と引き止めた。

「どうしました?」

「その、敬語はいらないわ。もう、あなたは使用人じゃない。ふつうに話してくれていいのよ。お茶だって、いっしょに淹れるわ」

 ユルギの言葉を聞いて、ウツロイは嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう。じゃあ、いっしょに淹れましょう」

「うん」

 二人で台所に行き、ウツロイがクッキングヒーターでお湯を沸かすことになった。ユルギはカップとソーサーを取り出し、茶葉を準備する係だ。

 ユルギは食器棚の前に立ったとき、ひと組のソーサーとカップを見つけた。白地に水色のラインが入った、爽やかなカップ。白いソーサーにもカップを縁どるような水色のサークルラインが入っている。

 ユルギはそのカップを取り出し、ウツロイに見せた。ウツロイは、ハッとしたようにカップを見た。

「それは……」

「覚えてる?」

「もちろん。それは、ユルギさま……いえ、ユルギが私の誕生日に贈ってくれたカップだから。ここで過ごした最後の誕生日に……」

「このカップね、私だけが買ったんじゃないの。お兄ちゃんと、マドロイと三人で買ったの。この柄を選んだのは誰だと思う?」

「ええ? 誰だろう」

「マドロイよ」

 ウツロイは、ハッとしたようにユルギを見た。

「マドロイが選んだの。爽やかで優しいあなたにって。ウツロイは小さいころ、お父さんとお母さんからはいつも、ピンク色のプレゼントを贈られていたんだってね。たしかに、ウツロイにはピンクみたいな暖かくて可愛い色が似合うもの。でも、本当は、ウツロイ自身は水色が好きなんだって、マドロイが教えてくれたの」

「そんなこと……」

 ウツロイは、ユルギが持っているカップを見つめて、ぽつりと言った。

「私の好きな色を知っているなら、私が好きな人のことも気づいてほしかったわ」

 ウツロイは寂しげに微笑むと、やかんに水を入れ、紅茶の準備に戻った。ユルギもダイニングテーブルにカップを置くと、自分のティーカップを食器棚から取り出した。

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