社畜探索者〜紅蓮の王と異界迷宮と配信者〜

代永 並木

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社畜 配信者を救う

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魔物が出てくる
炎を放ち倒す
声のした方へ走る
次々と魔物を倒していく
次の階層の手前、そこに声の主は居た

「誰か助けて!」

少女の声だ
聞き覚えがある、探索系配信者の声だ
少女の居る方を見る
銀髪の少女が剣を構えて魔物と対峙していた
魔物が居る、数は5体
それも先程の魔物とも姿が違う
獣の形をした魔物、熊のような姿をしている
少女は剣を構えているが体が震えていて傷だらけとてもじゃないが戦えるようには見えない
足を止める
いや足が止まったのだ
恐怖だ
状況的に少女は戦えないと見るべきだ、なら戦うのは自分だけ
1人で5体を相手にする、一撃で倒せるか分からない
防具なんて付けていない攻撃を喰らえばほぼ致命傷になる

「いやぁ……助けて……誰か……お願い……」

魔物の攻撃を受けて剣を砕かれた少女は腰が抜けその場に座り込む
泣きながら助けを求める
(怖い……僕なんかが助けられるのか……?)
今になって怖気付く
時間は無い、少女の死が刻一刻と迫っている
ここで逃げても攻めるものは居ない

「ぼ、僕は……」

臆病者
多くの事から逃げてきた
いつも苦しみから逃げたいと思っている
今も恐怖に打ち勝てない
身体が震え動けない
声も出ない
今にも逃げ出そうとしている
勝てないかもしれない死ぬかもしれない
今更になって辞めれば良かったと思っている
そんな自分に腹が立つ

なら自分てめぇはなんで来た
命をかける場所で臆病者がなぜ走った
逃げりゃ良かった、わざわざ声のする方へ向かう必要は無かった
配信者だから知っているだけで言ってしまえば赤の他人だ
命をかけて救う理由なんてぶっちゃけ無い
戦えない臆病者が綺麗事をほざいても何も成せない
思うことは誰にでもできる、実行する力が無ければそこまで

ここに来た理由なんて単純だった
助けたいのだ
困っている人に手を差し伸べたい
赤の他人でも困っているのなら
自分は多くの人を救うヒーローには成れない
多くの人々の役に立つ偉人には成れない
そんな自分でも善人でありたいのだ
誰かの為に何かをしたいのだ
何も出来ない自分でも

ならなぜ怯えている、助けに行けばいい
それが出来ないから臆病なのだ
ここで逃げ帰って自分てめぇは己を誇れるか?
後悔をしないと言えるのか

そんな物言えるわけがない、必ず後悔する
昔見たアニメが心の奥に残っている
その時芽生えた思いは今も残っている

馬鹿みたいな話だ
子供の夢に過ぎない物を今も尚抱え続けている
ずっと大人になっても
社会の荒波に飲まれても
ずっと
僕は人々を救う強く格好の良いヒーローに憧れているのだ


運命は人には分からない
けれどこの選択は運命を間違いなく変わった
蓮二は少女の前に立つ

「えっ?」

探索者には見えないスーツ姿の男性、目元にはクマが出来ていて寝不足気味なのが伺える
周りに人は居ない
この男性1人だけ、到底助けとは思えない
そもそも1人だけで来れるような場所では無い
少女は幻覚でもついに見えているのかと思う
(なぜ私はサラリーマンの幻覚を見てるかな)

『救援?』
『1人だけ?』
『それもスーツ姿……誰?』

少女はずっと生存報告と状況の把握のために配信している
突然の男性の出現にコメント欄も反応する
配信で情報を常に得ていたので救援は絶望的だと知っている
ましてや1人で救援に来るなんて話は聞いていない

「遅くなって済まない、救援だ」
「あ、貴方1人じゃ勝てません! 逃げてください」

3級のダンジョン1人で勝てるような相手では無い
それも魔物が5体、分が悪いなんてレベルじゃない

「確かに勝てるかは分からない、けれど」

蓮二の周囲に炎が現れる
恐怖はある、身体は震えている
逃げ出したいと思っている

「ここで逃げたら俺は俺を誇れねぇ!」

それ以上に救いたいと思ってしまっている
だからこそもう引く事は出来ない
例え自分が死んでも少女だけは救う
炎を操る
炎は先程よりも強く熱く燃え上がる
魔物は突然の蓮二の出現に警戒して一度距離を取っていたが一体が襲いかかる
腕を横に振るう
襲いかかってきた一体が炎で両断される
一撃

『まじ!?』
『一撃かよ!? 何者だ』
『強い……』
『スーツ姿の探索者つえぇ』

「あ、貴方は一体……」
「一撃か、ならすぐ終わらせる」

手のひらに炎を集める
どんどんその炎は大きくなる
魔物は危機を察する、この攻撃はやばいと本能で理解する
阻止するために4体全員が突っ込む

「もう遅い。燃え尽きろ」

貯めた炎を一気に魔物に放つ
魔物は回避も防御も出来ず為す術なく焼かれる
(何とかなったな。この異能強いのかもな)
少女の方を向く

「大丈夫か?」

手を差し伸べる
少女は蓮二の手を掴みゆっくりと立ち上がる

「は、はい大丈夫です。助けて頂きありがとうございます」

少女は頭を下げる
少女は震えている
1人で何時間もダンジョンの中に居たのだ
絶望的な状況にも陥った、誰でもこうなる
下げられた頭に手を置く

「怖かったよな? 1人でよく頑張った。もう大丈夫だ」

昔妹にしたように優しく頭を撫でる
(あぁそう言えば昔も似たような事あったな)
異能を持っていなかった子供の頃、獣に襲われた妹を守る為に獣と対峙した日を思い出す
少女は泣きそうになっている

「あっ、悪いつい昔のことを思い出して」
「い、いえ問題ありません」

少女は目元を擦る

「ところで歩けるか? ここは危険だし早く戻ろう。他に誰か取り残されてるって事はない?」

背負いたいが魔物が湧いた時背負っていると対応が遅れる

「取り残されたのは私だけです。走れはしませんが歩けます」
「そうか、ゆっくりで良いから行こう」
「い、いえ、急ぎましょう。時間をかけると魔物が湧く恐れがあるので」
「分かった。無理はしないようにな」

蓮二が先に立ち少女の様子を伺いながら入口に進む
入口まではそう遠くない
魔物が湧く前に辿り着くだろう
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