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2章天鬼鶏

社畜 襲われる

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一鬼が運ばれていく間ずっと下を見る
(魔物が来たりしないよな?)
飛行するタイプの魔物が居てもおかしくない
もしいた場合この状況はまずい
鎖を破壊されたら落ちる
鎖を破壊されなくとも身動きが取れない

「炎溜めておくか」

炎を溜め始める
出てこなければ解除すればいい
一度一鬼の方を見る
慎重に行っている為まだ時間がかかる
そして何事もなく一鬼が入口に着く

『次蓮二さん運びます』
「了解」

下を警戒しながら運ばれていく

『体勢の問題かもしれないけど結構気分悪くなった……』
『そこまでの精度は無いから』
「確かにこの体勢結構辛くなってきた」
『もう少し我慢してください。急げはしないので』
『焦らず慎重に』
「そう言えば外は揺れてないの?」
『あぁ、ダンジョンは特殊でダンジョンの出来事は基本的に外に影響されないんだよ』
「それはなんとも」
『原理は分からないがダンジョンは別空間とかそういう仮説が立ってる』
「へぇ、あの揺れで外が揺れなかったなら確かにその方が信じられる」

運ばれている間暇なので一鬼と会話をする

「この通信機凄いね。取れない」
『探索者御用達の道具だからその辺はほぼ完璧、その分高いけど』
「これ二十万だったね」
『壊れたら自腹』
「あの会社から金出して貰えないかな……」
『……今現在支援受けてないしその辺は言えば行けるかも』
「これ取れないけど正直壊れないように意識するのは無理だから……まぁ魔石とか売ればその分は集まりそうだけど」
『まぁね、ちゃんと売ってる?』
「中ボスとか主以外のは売ってる。それでも充分稼げるし目立ちたくないってのと保険」
『今金にするより困った時には良い考えだな』
「獅子神さんは?」
『即売りしてる。掘り出し物の良い武器とか防具、魔道具、他にも配信に必要な機材とかあるから』
「配信用の機材か……カメラとかは僕も買った方が良いかな?」
『いや、大丈夫だな。私達は基本パーティでダンジョン潜る用の使ってるから数はあるしそれより防具とか魔道具買うべきだ』
「高い物は慎重になる」
『慎重になるのはいいけどその防具前のダンジョンの時に損傷してるし後ちゃんと高い奴じゃないと防御面結構辛い』

横腹を抉られた際に防具も損傷している
一鬼の使っている防具は掘り出し物で性能の高い防具
その為攻撃を受けても致命傷にならずに済んでいる

「そうだな」
『基本は炎で防げるんだろうが相手が武器を持っていた場合はたぶんあの時と同じように突破される。掘り出し物の武器は頑丈だから魔物が使うのも恐らく同じか類似した物』

(確かに炎で防げなかった)
武器を持った魔物との戦闘は4級ダンジョンの主としていた
しかし、あれは蓮二も剣を抜いて斬り合っていた
あの時も剣の攻撃は炎で防げていない
(防具か。解散したら装備屋行くか)
入口にどんどん近づく
天音は会話に入らず集中している

『あと少し』

突如鎖が破壊される
そして蓮二は落下する

「え?」
『蓮二さん!』
『下からか。天音!』
『鎖よ縛って!』

鎖を召喚して蓮二を拘束しようとするが再び壊される

『何が起きた』

一鬼は鎖を観察していたが破壊された所は見えたが何か物体が当たった訳でも無い
(物体では無い何か? まさか異能か?)

『鶏君、なんとか炎か剣でどうにか出来ないか?』
「やってみる」

剣を抜いて壁に刺そうとするが届かない
炎を広げる
(あっ、炎掴めなくね?)
自分が触れたらどうなるか分からない
燃えないかも知らないし燃えるかも知れない
落下していく


「蓮二さんが」

天音は助けようとダンジョンの中に入ろうとする
今のダンジョンに安全に入れる足場など無い

「馬鹿か! お前も落ちるぞ!」

急いで天音を掴まえる
今、落下した蓮二を助ける術は無い

「で、でも……」
「冷静になれ。まだ死ぬとは限らない。鶏君は対応力が高い」
「…………」
「こっちでやれる事をやるぞ」

(もし生きていてもあの巨体の魔物に恐らく異能持ちの魔物……流石の鶏君でも絶望的だな。救出も難しい何か策は無いのか)
一鬼は考える
生存は絶望的だがまだ死んだとは限らない


二人が見えなくなる
下を見ると真っ暗な中に地面を確認する
そう遠くない
このままでは頭から激突する
そうなれば即死は免れない
(確か着地は足からすれば……いや無理だな死ぬなこれは)
脳をフル回転させる
どうにか生き残る事を考える
横を見る落下時に壁に近付いたようで剣が届く範囲に壁がある
剣を突き立てて止める
剣の能力を使う
茨を腕に縛り付く
(片腕を犠牲にすれば……)
剣を強く握る

「茨の拘束を強めろ!」

剣に命令する
自分の力だけでなく剣の力でも固定する
そうすれば剣を手放す可能性が減る
(腕がちぎれたら無理だが……)

「ぐぅ……あぁ」

落下時に生じる負荷が腕に襲いかかる
腕が悲鳴を上げる、骨も筋肉も皮膚もズタズタになる
尋常ではない痛みが襲うが堪える
手の感覚は麻痺し力を入れられないが茨によって手が剣から離れる事は無く地面ギリギリで止まる
激痛を通り越してもはや手の感覚が無い
地面に降りる

「動け」

剣が動いて壁から抜ける
腕が動かない
(痛みは……もう無いか。さてどうするか)
上を見る
二人の姿は見えない、何処まで落ちたか分からない

「炎の異能ならあの大群なら問題ない。問題は」

先に落ちた巨体の魔物が居たら不味い
今、片腕が使えない
そんな状態であの魔物と戦うのは厳しい
それともう一つ

「あれはあの巨体の仕業では無いな」

鎖を破壊した存在が居る
巨体の攻撃では無い
(見えなかった。あれは異能か?)

『蓮二さん!』

通信が入る
(通信機は通じるのか)

『鶏君大丈夫か?』
「何とか生きてる」
『良かった……』
『状況は?』
「取り敢えず近くに魔物は居ない」

炎で周囲を照らして確認して魔物が居ない事を確認して壁に寄りかかり座る
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