防御特化の魔術師〜中堅冒険者のひっそり無双〜

代永 並木

文字の大きさ
1 / 7

第1話 動き出す物語

しおりを挟む
「不味いな……金が無くなった」

 緊急事態が起きてしまった。
 財布さいふとして使っている袋の中には、2日3日程度の生活費しか残っていなかった。
 これでは生活ができない。
 うーん、と少し悩む。

 ……仕方ないかぁ。稼ごう。

 生活費が無くなったなら、働くしかない。
 仕方なく、重い腰を上げる。
 戦闘せんとう用の服に着替え、バックを抱え玄関に置いていたやりを手に持って外に出る。
 人々が行き交う大通りを通って、冒険者ギルドの建物へ向かう。
 そこで、仕事を受けて金を稼ぐ。

 何度も行き慣れた道、間違える事もなくスムーズに建物へ着いた。
 扉を開き中に入る。
 中には紙を見て話し合う者、勧誘かんゆうする者、ただ雑談ざつだんをする者など、様々な人がいた。
 まっすぐ、依頼書が貼り出されている掲示板に向かう。

「Cランクの依頼で残ってるのは……珍しいな」

 1枚の依頼書が目に留まる。
 魔物の討伐依頼。
 Cランクの魔物『オーク』の討伐、1体以上と書いてあった。

 魔物の討伐とうばつ依頼は、報酬ほうしゅうやランクポイントが高いため、人気な依頼となっている。
 だから、すぐに無くなる事が多い。
 俺はCランクに上がって数年経つが、Cランクの討伐依頼はあまり受けられていなかった。

 ……達成に必要数は1体で、増えるごとに加算かさんされていくタイプか。オークは基本3体前後で行動、3倍だとすると――少し足りないが1回で稼げるなら悪くない。

 依頼書をがして受付に向かう。
 受付で承認しょうにんされて、ようやく依頼を受ける事ができる。

「どうなさいました?」
「この依頼を受けたい」

 受付の女性に、依頼書と冒険者証明のカードを渡す。
 冒険者のランクが書かれたカードであり、これが無ければ依頼を受ける事ができない。
 女性は依頼書の内容を見た後、カードのランクを見て頷き判子を押す。

「Cランク冒険者……はい、承認しました。依頼書はどうしますか?」
「貰う」
「どうぞ」

 依頼書を受け取る。
 ギルドに預けていても良いが、内容を忘れた時に困る。
 何か思い違いをしていたら後が大変。

 ギルドを出てオークの出る森へ向かう。
 森の中に入って、オークが生息している中腹付近までまっすぐ向かう。

 ……この辺りの筈だが、魔物の気配も獣の気配も無いな。

 違和感がある。
 この森の中には魔物も、魔物以外の獣も生息している。
 歩いていれば魔物に当たるとまで言われる森で、音1つしない。
 何かの異変が起きているのは確定寄りだろう。

「戻るべきか……いや」

 後ろをチラッと一瞥いちべつする。
 既に森の中腹辺りに居る。
 戻る道も遠い。

 ……遠いな。この位置からだと、横から抜けた方が近いか?

 進む方向を考えていると、バギバキと大きな音が森の中に響く。
 音のした方を向く。
 木々の隙間から、音が聞こえた場所が見える。
 人の姿がうっすらと認識できる。
 鎧を身につけた冒険者のようだ。

 ……戦闘中か。あの戦闘が異変の原因か? 冒険者は負傷してるのかな。

 冒険者の動きが、若干おかしいと感じた。
 おそらく、負傷をしているのだろう。

「相手はあれか。あれはオーガか?」

 相手側の姿も確認ができた。
 Bランクの魔物、『オーガ』の見た目をしている。
 知性があるとされている魔物であり、2m強の巨体で力が強い。
 厄介な事に武器を持つ事が多い魔物。

 ……最低でもBランク、俺が参加してどうにかなる相手か? あの冒険者のランクによるか。

 俺のランクはCランク、Bランクの一個下のランク帯だ。
 冒険者のランクは、該当ランクの魔物に匹敵ひってきする、もしくは討伐できるという指標しひょう
 一個上となると、Cランク冒険者のパーティでは苦戦を強いられる強さ。
 俺では、参戦したとしても、勝ち切れない可能性が高い。

「剣に込めた魔力が増えた? 突っ込む気か」

 冒険者の剣に、多くの魔力が込められた事に気付いた。
 一矢報いる気か倒す気か。少なくとも突っ込む気だと分かる。

 ……オーガは動きが速い。届く前に叩き潰されかねない。

「守り手よ彼の者を守護せよ」

 詠唱して素早く、魔術を展開する。
 防御魔術、俺が使える戦闘用唯一の魔術系統。
 オーガの攻撃を阻むように、障壁を作る。
 オーガの攻撃が障壁に当たる。
 その瞬間、空気が大きく揺れた。
 空気が揺れるほどの衝撃が走った。

 ……これがBランクの本気の一撃か。とんでもないな。よく割れずに済んだよ。

 遠隔で姿は見えていないが、障壁が破壊されていない事は分かる。
 何とかあの一撃を防ぎ切ったようだ。
 そして、空気の揺れが収まった時には、戦いが決着していた。
 オーガは真っ二つに切り裂かれ倒れていた。

 ……倒したのか。応急処置の道具はバックに……

 バックを漁っていると、何かを飲んでいるのが見えた。

「ポーションがあったのか。ならこれ以上は余計なお世話か」

 森の異変の原因が討伐されたため、オークが姿を現すかもしれない。
 この場から静かに離れる。

 ~~~

「何とか倒せた」

 Sランク魔物、『変異個体オーガジェネラル』を何とか討伐できた。
 ほっと、一息つく。
 呼吸を落ち着かせて、バックからポーションを取り出し、ふたを外す。
 薬草の匂いが鼻腔びこうをくすぐる。
 ゴクリと、一気に飲む。

 ……苦い。

 ポーションの苦さはどうも慣れない。

「最後の一撃、相打ち覚悟だった。なんでオーガジェネラルの攻撃は私に届かなかったんだろ?」

 普段なら考えもしない相打ち覚悟の突進だった。
 でも、私の攻撃は届いたが、オーガジェネラルの攻撃は私には届かなかった。
 妙に感じる。

「うん? あれ、これは……」

 後ろに魔術障壁がある事に気付いた。
 近くで確認をする。
 防御魔術、防ぐ機能のみが搭載された洗練された魔術式。

「もしかしてこの障壁が?」

 障壁と戦闘時の位置関係を確認する。
 すると、オーガジェネラルの一撃が当たる位置だと分かった。

 ……空気が揺れた感覚があったのは防いだから? オーガジェネラルの攻撃を防げる魔術師がここにいた?

 すぐに森の中を見渡す。
 しかし、周囲の森の中に影一つない。

 ……もう居ない。 

「少なくともすぐに視認できる場所にはいなかったはず、なら遠隔でピンポイントで? 彼女は今日この森にいる訳ないし、この街にそれほどの魔術師が?」

 1人だけ、知人に同じ芸当ができる魔術師がいる。
 でも彼女は今日別の用事があって、ここには来られないはず。
 つまり、彼女と同等の魔術師がいたという事になる。

「これは緊急事態。ぜひパーティに誘いたい!」

 変異個体オーガジェネラルを討伐したら、もうこの街に用はないと考えていたSランク冒険者、スズラン。
 彼女に新しい目的ができた。
 そんな事はつゆ知らず、アマギは生活費目当てでCランク魔物、オーク探しをしていた。









ーーー
後書き
1話を読んで頂きありがとうございます。
宜しければハートを貰えたら励みになります
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

処理中です...