無色の君

代永 並木

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1話

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共感覚 シナスタジア一部の人が持つ特殊な知覚現象の事を示す
俺は共感覚を持っている。他の共感覚者がどう感じているか分からないが俺は人を出来る限り見たくない声を音を聞きたくない
分かる人は分かるかな?
俺の名前は篠原連 共感覚の持ち主という事の他にも少しあるがそれ以外は普通の人間だ
俺は学校が苦手だ。全員が声を上げて話をしたりする
俺は1人で居たいのに面白がって話しかけてくる連中もいる。
「なぁ、お前って話しかけても返事しないよな?」
机でイヤホンを耳にして寝ていると1人の男が話しかけてくるが俺は無視をする。
 (うるさい)
「無駄でしょ。自分の世界にでも入ってるんじゃないの?」
1人の女が男の後ろから現れて男に言う
 (なら、早く居なくなれ)
「でもさぁ、同じクラスだぜ? 仲良くしないとな」
男は女にそう言って俺に話しかけてくる
 (仲良くする気などないだろ?)
「じゃあどうする? 根暗な人ってどうすれば良いかな?」
女もどうするか考えている
 (とっとと失せろ)
「部活行くぞ~、そんな奴置いといて来い」
遠くから男の声がする
(そうだ。とっとと部活行け)
「分かった。じゃあ行こうか」
2人が部活に行くために居なくなる
(……居なくなったか)
俺は起き上がり周りを見渡して居なくなった事を確認する
「話しかけてくんなよ。仲良くなる気なんてないんだからよ」
俺は立ち上がり自分のバックを持って帰ろうとすると後ろから声がする
「……よく分かるね」
振り向くと少年が椅子に座って居た
少年は黒髪で中性的な顔立ちをしている。スポーツ好きのようなイメージがある
(後ろの席の奴か、名前は……忘れたどうでも良い)
「分かるだろ。あんなクラスの人気者が根暗の俺と本心で仲良くなりたいなんて言うと思うか?」
俺は乾いた笑いをする。
「そうだよね。ところで僕の名前覚えてる?」
少年も乾いた笑みを浮かべて聞いてくる
「覚えてない。てか、クラスの奴の名前を覚えてない。覚える気もない」
俺は淡々と答えて帰ろうとする
「一応名乗っとく、衛藤美鶴」
少年は自分の名前を語る
 (美鶴? 珍しい名前だな)
「そう、もう良いか? さっさと帰りたいのだが」
俺はそう言って教室を出る
「話なんて聞かずに帰ればよかったのに」
美鶴はそう言って教室を出て帰って行く
俺は帰ったのを確認して帰る為に下駄箱に行き靴を履いて学校を出る
俺は部活に行っていない。この学校は強制的に部活に所属しないと行けない事になっている為一応は部活に入っているが一度も行った事がないが入った部活は先輩が辞めてから2人になったという情報は耳にした事がある
 (学校入ってから半年か1番苦労したのは文化祭だな。人が多い)
しばらく歩いて自分の住むアパートに着き自分の部屋に入ってベットに寝転がる
俺は高校に入ってから一人暮らしをしていた
「衛藤美鶴か、なんであいつと話しても何も感じなかったんだ?」
会話をした理由は声をかけられた時に違和感を感じたからだ
「考えていても無駄か」
俺は起き上がりインスタントラーメンを作りご飯を食べて風呂に入って色々とやってからベットに再び寝転び携帯をいじるってしばらくしてから携帯を充電して眠る
翌日の朝
俺は起き上がらずに軽く寝る。
そして時間を確認してから起き上がり朝飯を食わずに歯磨きをして制服に着替えて学校に向かう。学校までは約20分程度で着くので40分前くらいに起きる
「今日は芸術の科目があるのか」
歩いている最中に時間割を見ていた
芸術は音楽と美術の2つがあり俺は美術を取った。どちらかというと音楽の方が好きではあるが取らなかった
時間割を見ながらどうするか考えていると人とぶつかってしまう
「すみません。大丈夫ですか?」
俺はぶつかって転んだ人に話しかける
流石にあまり話したくないとはいえどこっちの注意不足でぶつかったのだから何も言わずに居なくなるほど常識知らずではない
「大丈夫です。そちらはどうですか?」
ぶつかった人は立ち上がりざまに言葉を返してくる
「大丈夫ですってお前衛藤美鶴か?」
俺は顔を見たら美鶴のように見えた為聞く
「うん? なんだ、君か。美鶴で間違いないよ」
美鶴は俺の顔を見て確認してから答える
「大丈夫ならもう良いか」
俺はさっさと学校に向かおうとすると後ろから服を掴まれて止められる
「少し良いかな? 1つ質問したい」
美鶴は俺に向かって聞いてくる
「なんだ? 答えられる物なら答えてやる」
俺は素っ気なく答える
「君には何が見えて何が聞こえているのかな?」
美鶴が質問した内容が理解できずに戸惑う
「どう言う事だ? 何が見えて何が聞こえる? そんな物普通の光景だ」
俺は答えてすぐに歩き出す
「僕の声は何色で僕自身は何色なのかな?」
美鶴が質問を変えて聞いてくる
「色? お前何故それを俺に聞く」
俺は止まり振り向いて聞く
一言で共感覚といっても色々なタイプがある。目に見えるものの色が見えたり平行のやつが立体に見えたりそれ以外にも沢山ある筈だが美鶴は俺のを当てて来た。それも言っていないのにだ
「見えているのでしょ?」
美鶴は俺の問いに答える
「成る程、なんで違和感があったか分かった。教えてやるよ。お前の声とお前自身は無色なんだよ。初めて見たが居るんだな色が無い奴なんて」
俺は美鶴を指差して答える
違和感の正体は色を感じなかったからだった
「無色? それはどう言う意味?」
美鶴は首を傾げて聞いてくる
「感情には色があるがゆえに人にも色は存在しているがお前は無色と言う事は感情が無いと言う事だ」
俺は美鶴の色について語る
感情には色があると感じるからそう言ってる単なる自論である
無色だから感情が無いというわけでは無いだろう
「無色……分かった。そう言う事か」
美鶴は納得したらしくさっさと学校に向かう
俺も学校に向かうべく歩き出す
(無色だから違和感があってそして嫌な感じがしなかったのか)
美鶴は話している間無表情であった。感情が薄いのか感情を出さないようにしているのかどっちなのだろう
(どうでも良いか。もう関わる必要もない)
「ねぇ、無色だと話していてどう感じる?」
こちらを見ずに美鶴が聞いてくる
「何も感じない。良くも悪くもない」
俺は美鶴の問いに淡々と答える
「良い時もあるんだ」
美鶴が少し驚いたように言うがその実驚いていないようだ
心が読めると言うほどの物ではないが色によって思っていることが大まかになら分かる。人には本来の色がありそして感情の色がある
美鶴は特殊なのだろう
「一応はな。俺の話したくない理由はこれ以外にもあるけどな」
俺は答える。この答えに嘘偽りはない。こんなのは厨二病とか言われるだろう。人は自分に無いものを理解しようとはしない。天才が凡人に理解されないってのと理屈は同じだな
(色以外にもあるがこいつの声は嫌いでは無いな)
「学校の人達はどう?」
美鶴は少し間を開けて質問して来た
「最悪だ。色が混じって気分が悪くなる」
俺は思い出すだけで気分が悪くなった
色んな色を一気に感じると頭痛がしたり吐き気がしたり気分が悪くなる事がある
「信じるんだなこんな厨二病みたいな事を」
俺は美鶴に聞いてみる
「信じるさ。君は本当に感じて気分を悪くしたりしていたからね」
美鶴はこっちを見て淡々と無表情で話す
「よく知っているな。出来る限りバレないように誤魔化していたのに」
俺は少し驚き答える
こいつがあいつらとグルなら学校に行ったらすぐに広がるだろう。俺が学校に行っている理由は高校卒業したと言う経歴が欲しいからであり学校には特に何も求めていない為いざとなれば辞める気である。今の社会では高校を中退するとそこまで良い会社などに入れない為あまり学校を辞めたりしたくは無い
「別にグルじゃ無いから心配しなくても良いよ」
美鶴が心を読んだかのように俺に伝える
「心でも読めるのか?」
俺が冗談半分で聞く
「心なんて読めるわけないよ。そうだ、学校でも話をしようよ」
美鶴が提案してくる
「そうだな。そうすればあいつらに話しかけられなくなるな」
俺は納得する。美鶴と会話するのは嫌ではないし他の奴を近寄らせないという点で有効だ
「いつもイヤホンをつけているのって音を遮る為?」
美鶴が質問してくる
「そうだ、音楽を聴いたりはするが音を遮るのが目的だ」
俺は答えてから少し考える
(美鶴が俺に話しかけてくる理由はなんだ)
「人と関わりたく無いから、理由は言えないけど」
また美鶴は心を読んだかのように答える
「なら何故俺と関わる」
俺は矛盾に気づき問う
人と関わりたく無いからという理由で俺と関わるのは変だ
「君もあまり人と関わりたく無いでしょ。ただ楽そうだからだよ」
美鶴は答える
「そうか、これ以上はもう聞かん」
俺はため息をつく
(こいつ言う気が無いっぽいからこれ以上聞いても意味ないだろう)
「ありがとう」
美鶴は淡々とお礼を言う
「お礼を言う必要はないだろ」
俺は空を見る
俺の場合生物の色が感じる事を出来るだけなので空を見れば大抵は大丈夫だが耳に関してはどうしようもない。きつそうなら耳栓をしているが話が耳に入る
(ノイズキャンセリング機能付きの奴欲しいけど高性能だと高いんだよな)
「目はそこまで良くないのになんでこの耳は良いんだよ」
俺は再びため息をつく
「学校は退屈なんだけど行かないとダメって言われてるんだよね」
美鶴はいきなり話し始める
「俺は別にそう言われている訳じゃないが高校卒業の経歴が欲しいから行ってる」
俺は問われてもいないはずなのに答える
「僕は別に欲しい訳じゃないんだよ。ただある条件があってこの高校に入ったんだよ」
美鶴は淡々と言う
「ある条件? それがこの馬鹿な高校に入った理由?」
俺は聞く
この高校は偏差値が低く不良などが入ってくることが多い高校である。俺がこの高校に入った理由は知り合いがいない高校に行きたかったからである
「この高校の理由は偏差値が低いから学力の問題は無く留年する事なく条件を行うことが出来るからだって」
美鶴は乾いた笑みを浮かべる
(こいつの笑顔は作り笑みだろうが全然笑えてないな)
「その条件ってのはなんだと聞いて答えてくれるか?」
俺が美鶴に聞く
「時が来たら伝えよう」
美鶴は短くそう口にした
「成る程、まぁ良い。そろそろ学校に着くし良い具合に暇な時間を潰せた」
俺はそう言ってから2人で学校に入り教室に向かう
「今日体育あるけど体育って何選択した?」
美鶴は教室に着いてから時間割を見て聞いてくる
「バスケだ。運動するのは嫌いじゃないからな」
俺は席に座り答える
この学校の体育は男女合同で選択をして授業を受けれる。サボる事をしたいなら簡単な物を選べば良いがバスケは教師が厳しい為全然入ろうとしない
「僕もバスケ選んでるよ」
美鶴はそう返す
「俺以外にもバスケ選んでいる奴いるんだな」
俺は地味に感心する
感心と同時に疑問が浮かんだ。興味がないとは言え何時間も同じバスケを選んでいた同じクラスのやつに今迄気づかなかった事に
「勝負する? バスケで何本入るか」
美鶴が提案してくる
「良いぜ、シュートに関しては自信がある」
俺は提案に乗る
その後先生が来てHRをやり1時間目の準備を行う。2人が話している為昨日来ていた奴も話しかけてこない
「芸術はどっち取った?」
美鶴が聞いてくる
「美術だ。普通に音楽を聴くなら大丈夫だけど音楽の授業は無理だった。中学の時の音楽の授業なんて苦痛でしかなかった」
俺は答える。音楽の授業はふざけて大声出したりする奴がいたりわざと音程を外して歌う奴がいる為授業を出来る限りサボっていた
「同じか。僕も美術選んでる」
美鶴は納得して答える
「美術が好きなのか?」
俺が聞くと美鶴は頷く
「まぁね、絵が好きと言うよりは景色を書いたり見たりするのが好きだからかな?」
美鶴は答える
「そうか、俺は同じ授業受けてるのに何故気づかなかったんだ?」
俺は疑問を口に出す
「確かに僕も気づかなかったのは何でだろう?」
美鶴は確かにと頷き少し考える
そして1時間目2時間目を終えて体育の授業を行う。ちなみに2時間である
体操服に着替えて体育館に行き準備する。人数が少なくても決められたエリアを用意されている為練習をしっかりとできる
「なぁ、勝負しないかお二人さん」
準備している突然話しかけられる
振り向くと3人の男が居た
「バスケ取ってないよね君達」
美鶴が前に出て言う
「そうだが、2人で取りすぎなんだよエリア」
リーダー格のような男が前に出て美鶴に威圧する
「それは先生方に言ってください」
美鶴は威圧されても平然としている
(美鶴すげえ~)
俺は美鶴の行動を見て凄いと感じていた
「勝負は2対2で良いか?」
男が提案する
「良いよ。やろう」
美鶴は勝負を二つ返事で引き受けてた
(待て待て何勝負乗ったんだよ)
「おい、美鶴」
俺が美鶴に話しかける
「勝つよ。なんか気に入らない」
美鶴は機嫌が悪くなっていた
「見世物にする気なんだろうよ。あいつバスケ部のエースだったし他の奴もバスケ部のレギュラーだった筈だから負けないと思っているだろうよ」
俺は男達について説明する
「君は本気を出したら勝てる?」
美鶴が聞いてくる
「どうだろう? やるならちゃんとやるから美鶴は相手からボール取ったらボール寄越せ」
俺は準備運動をする
少し経つと男達が伝えたであろう生徒が野次馬となって増えてきた
「分かった。僕に任せて」
美鶴が言い試合の準備を行う
10分後2人が現れて前に立つ
「ボールはどっちが持つ?」
男が聞いてくる
「そちらでどうぞ」
美鶴が答える
審判が試合開始の合図を送って試合を開始する
男が突っ込んでくるが美鶴は通りざまにボールを奪い俺にパスを出す
「凄えな、あいつ何者だよ」
俺はボールを受け取ってスリーポイントシュートを放ち点を取る
「よし、調子いいな」
俺が点を入れると男達が少し苛立つ
「ナイス」
美鶴とハイタッチをして戻る
「おい、やるぞ」
男がニヤッと笑い突っ込んでくる
俺は男の考えていることを予測してため息をつく
(くだらない事をする気かよ)
「美鶴気をつけろ」
俺は美鶴に伝える
「? 分かった」
美鶴は男と対峙すると男がわざとぶつかろうとするが美鶴は気づきギリギリで避けてボールを上手に奪い前に出る
「はい、パス」
美鶴はもう1人の男と対峙すると俺にボールを渡すとまたスリーポイントシュートで点を取ると野次馬がざわざわし始める
「もう辞める? 君達じゃあ勝てないよ」
美鶴が2人を煽る。美鶴はさっき男がやろうとしていた事に気付いた為男に降参するように促す
「ふざけるな。まだ終わってねぇぞ」
男がキレて叫ぶ
「なら、全力で潰す。後お前が美鶴にやろうとした事はバスケの選手としても人としても最悪でくだらない行為だ。覚えておけよ」
俺はボールを渡して忠告する
その後は圧倒的であった。感情的になってる2人に対して冷静に対応して点差を広げた。感情的にならなければこれ程の点差が開く事は無かっただろう。結果は13対0というおかしい点数になっていた。バスケで実力差があっても一回も入れられないなんて事は大抵起きないましてエースとレギュラーの2人対高校でバスケ部に所属しておらず体育でしかやっていない2人であった為尚さらおかしい
「何だこれは何をした」
男は動揺して聞いてくる
「答えは簡単お前らの行動が素直過ぎるんだよ。行動が読みやすかったしドリブルのリズムが読みやすかった」
俺が2人に説明する
「僕は一応中学の時に全国優勝してるよ。まぁ、高校に入ってからは体育でしかやってないけど」
美鶴が2人に伝える
「だからお前あんなに上手いのか」
俺は驚き美鶴に聞く
「まぁね、それより君の方がおかしいでしょ。予想出来るからと言うレベルじゃないんだけどあれ」
美鶴は淡々と答える
(それなら驚いた風に言おうぜ)
「そう言う色が見えたーとしか言えないな。色を見てそこから推測してみた」
俺は棒読みで言う
感情の色は本人を見るのと声で判断することができる。これは簡単な補助程度でしかない為予測するためにはある程度の知識や観察眼が必要である
「オタク?」
美鶴が聞くので俺は頷く
アニメとかであれば何とかなるので見るようになって結果ハマった
「授業中だからさっさと戻らないと怒られるよ」
美鶴は居なくなるように野次馬と2人に促す
2人が居なくなってから野次馬はザワザワと騒いで居たがすぐに持ち場に帰って行った
「君はバスケやってたの? スリーポイントシュートなんて素人がやれる物じゃないような」
美鶴が居なくなった後に俺に聞いてくる
「調子が良かったからだ。後感覚に委ねただけ」
俺は答える
(俺が出る必要なかったよな?)
「授業をやろうかって言っても疲れたから休憩」
美鶴は疲れたらしく座り込む
「お前全国優勝まで行ったんだよな? 見たことが無いが」
俺は座り美鶴に聞く
「そりゃあね。でも確かに僕はバスケの大会で優勝したよ。女子バスケでね」
美鶴はため息をついて答える
「……え? お前女‼︎ いや待ておかしいだろ席順は男から順番に座っているから女なら俺の席の後ろはありえない」
俺は驚き頭が混乱して居た
席順は男から窓側で順番は関係なしで座って行って男が終わったら女が残っている席に座るという特殊な席順になっている。俺の席は1番窓側の後ろから2番目なのでおかしい
「男としてこの高校に入ったからね」
美鶴は混乱している俺を見て説明する
美鶴は男としてこの高校に入り今まで誰にもバレずに居たらしい
「条件とやらが関係してんのか?」
俺は少しずつ理解出来たので聞いてみた
「正解だよ。よく分かったね」
美鶴は少しだが驚いているようだった
「今迄のお前との会話で1番関わりがありそうだったから聞いてみた」
俺は整理しながら答える
「この事は他言無用でお願い」
美鶴は口の前に人差し指を立てる動作をした「分かってる。けどあいつらにバレるんじゃ無いのか?」
あいつらとは野次馬と対戦相手の奴らだ
「心配無いよ。あの時は髪の毛が長かったし顔を隠してたから」
美鶴は説明する
「そうか、俺に言った理由は? 昨日初めて話した相手だぞ」
俺は美鶴に聞く
「さぁ、なんでだろう。高校初めての話し相手だったからかな? それとも信用出来ると思ったからかな?」
美鶴は首を傾げながら答える
(なんで自分でも分からないんだよ)
「まぁ良いや。そういえばオタクと知ってもなんも言わないのな」
俺は気になった事を聞く
「別にオタクだからってなんとも思わない。君はオタクはおかしいと思っているの?」
美鶴は首を横に振り聞いてくる
「別にっていうかオタクがオタクの事おかしいと思ってるって訳がわからんぞそれ、アニメや漫画とかって日本が世界に自慢出来る物だからむしろ誇りに思った方が良いと思うのだがオタク自身を誇るのではなくだがな」
オタクは社会的に嫌われている傾向があるが全くと言っていいほどなぜ嫌われているのか理解が出来ないのは俺がオタクだからなのか?
「ところで喧嘩して勝てる?」
美鶴が突然話を変えて聞いてくる
「無理だ。俺は喧嘩しても運が相当よく無い限りは勝てんだろう」
俺は自嘲の笑みを浮かべる
俺は喧嘩して勝てないだろう。勝つには一度も攻撃を喰らわずにそして負荷のない攻撃で相手を倒すという縛りみたいな感じで戦わないとダメだからなぁ
「無理ゲー?」
美鶴が聞いてくる
「無理ゲーで単なるクソゲーこんなの好きでやる奴ドMだろ」
俺は苦笑いをする
「そう、弱いなら筋トレとかしてないの?」
美鶴が少し考えて聞いてくる
「無理、筋トレとかやったら死ねる自信あるぞ」
俺は笑いながら答える
「成る程、弱くて喧嘩じゃあ役に立たないと」
美鶴は納得して俺をディスってくる
(無表情でディスってこないでくれ無いかな)
「言い返すことが出来ないから辛い」
俺は再び苦笑いをする
「ところで暇だね。いつも何やってるの?」
美鶴が再び話を変えてきた
「突然だな。いつもは多少やって携帯弄ってる」
俺は答える
「何か良いゲームでもあるの?」
美鶴が聞いてくる
「有名ゲームとかなら面白いのあるぞ。まぁ評価低くても面白いやつは面白い、むしろガチャの確率に関してなんか言うやついるけどガチャの確率なんて信じないで無言でガチャ引いてれば出る時は出るぞ」
俺は聞かれてもいないのに答える
「悟りでも開いてるの?」
美鶴は心配そうに言う
「まぁ、ガチャがあるゲームでもやってればいずれ分かる。そんなこと言えるのは無課金だからってのもあるけど」
俺は淡々と答える
「成る程、ゲームやると悟りが開けると」
美鶴は携帯を出して何かを書いている
その後、多少バスケをやって休んで会話をして授業が終わった為教室に戻る
教室に戻るとクラスメイトがザワザワとする
「なんかザワザワしてる」
美鶴が少し引いている
「バスケで勝ったからだろ。無視すればいい」
俺はそう言って自分の席に座って飯を取り出して無言で食べ始めると美鶴も自分の席に着き弁当を取り出す
「あれ? 君のご飯ってそれだけ?」
美鶴が聞いてくる
「そうだぜ。食べ過ぎると腹を壊すから必要分しか取ってない」
俺は食べるのを止めて答える
「男子高校生の食べる量にしては少な過ぎない? 弱いのってそれが原因じゃないの?」
美鶴が心配そうに言ってくる
(何故心配そうに言うんだよ)
「いや、その前から弱いからこれは関係ないぞ。お前は何というか普通だな。バランスが良くて綺麗な配置だな。親が作ったのか?」
俺は美鶴の弁当を見て感想を告げる
「いや、自分で作った。今は一人暮らししてるから」
美鶴は淡々と答える
「凄いな。俺は自炊をしないからなぁ」
俺は美鶴を褒める
「自炊をしない? 出来ないんじゃなくて?」
美鶴が気になり聞いてきた
「一応は出来るけど俺は一度やると納得するまでやりたがるからかなり時間がかかる」
俺は苦笑いをしながら答える
「そう、成る程」
美鶴は納得して自分の席に戻り食べ始める
その後、午後の授業が始まる午後の授業は2時間とも美術の授業中はさっさと先生に言われた事を済まして2人とものんびりとしていた。先生は怒ろうとするが両方ともやり終えており美鶴に関してはプロ並みだったらしく怒る気も失せたらしい
「終わった。長かった」
俺は欠伸をしながら歩く
「後はHRだけだね」
美鶴が席に座り言う
「あぁ、そうだな」
その後、担任の先生からきてすぐに行い終わったら美鶴は先に帰ると言って帰って行った
「俺も帰るか」
俺はバックを持って学校を出て家に向かう
家に着いてから疲れた為さっさと風呂に入りご飯を軽く作り食べてからすぐにベットに入る
「あいつは感情が読めないけど一緒にいるとなんか落ち着くんだよなぁなんでだろう?」
少し考えて答えが出なかったので目を瞑り眠る
翌日学校に行くために準備をしているとピンポンが鳴った為扉を開く
「どちら様ですか?」
「私よ、少し良いかしら?」
少女が立っていた。薄い青色の髪の少女で制服を着ていてバックを持っていた
「……どちら様ですか。お帰りください」
俺は扉を閉めて準備を進める
「待ちなさい。話を聞かないと言うなら滞納している家賃を払うか此処から出て行くことね」
少女が脅してくる
「分かった分かったからそれだけはご勘弁を」
俺はすぐに扉の方に戻る
少女の名前は轟茉耶といってこのマンションの管理人である。少し前に両親から受け継いだらしい、彼女は俺の事を昔から知っていた為家賃は少しずつ払えばここに住んで良いと言ってくれた心優しい少女である。クールで美しいと学校で人気だが毒舌で告白してきた人達の精神を叩き壊して断るらしく付いたあだ名が氷の女王であるが未だに告白する連中がいる程人気が高い、俺は茉耶姉と呼んでいる
「昨日バスケ部のエース達2人と戦って勝ったんでしょ?」
茉耶姉が昨日の事を聞いてくる
「あぁ、そうだがどうした? 俺と一緒に試合した奴は中学の時全国優勝したらしいぞ」
俺は答える
口止めされている訳じゃないし茉耶姉にバレても口が硬いから大丈夫だろう
「中学の時全国優勝って事は……ねぇ名前は?」
茉耶姉が美鶴の名前を聞いてきた
「衛藤美鶴らしい」
俺は名前を教える
「衛藤美鶴、成る程、あの衛藤さんか」
茉耶姉は納得している
「知っているのか?」
俺は聞くと
「知ってる。久し振りに一緒に登校しようか彼と話したい」
茉耶姉はそう言って部屋に入る
その後すぐに準備をして登校する。しばらく経ってから昨日美鶴と会った場所に着くとちょうど歩いていた
「おっ、居た」
俺は茉耶姉に伝えると茉耶は美鶴の前に行く
「失礼します。単刀直入に聞きます。貴方は中学時代最強の世代筆頭と言われた高宮中学の衛藤美鶴さんですか?」
茉耶姉は美鶴に問う
「そ、そうですがどうかしましたか?」
美鶴は怯えている
「茉耶姉、美鶴が怯えてるから止まれ」
俺が茉耶姉を止める
「連、間違い無いあの衛藤美鶴よ」
茉耶姉が俺に伝えるが俺はよく分かっていない
「あのとか言われても分からんのだが」
俺がそう言うと
「あれ? 連知ってるはずだけど衛藤美鶴の無情の氷姫の事を」
茉耶姉が言うと俺は思い出した
「名前は知らなかったぞ俺は、しかし驚いたあの無情の氷姫とはな」
俺は美鶴に言う
無情の氷姫とは中学時代に居た少女に付けられた名前である氷の女王と同じで告白して来た人の精神を破壊して断ったと言うので茉耶姉よりもやばい、精神を破壊された中には引きこもった人や女性恐怖症になった人までいる。茉耶姉の場合はそこまでの人はいない。流石にやり過ぎないように努力はしているらしい。そういえば今更ながらに面影があった。無感情で無表情で淡々と話し遠慮無く人の事をディスるってむしろ何故気づかなかったんだ? 話した事が無かったからか?
「辞めて、その事を言わないで」
美鶴が涙目になっている。自分としては忘れて欲しい過去らしい
「わ、悪い、嫌な過去だったのか」
俺は謝る
「うん、僕って告白された時思った事を言って断ったらあんな事になったの悪気は無かったのにってあれ? 君達確かあの時乱闘の中に居なかった?」
美鶴は涙目で怯えていたが何かを思い出したらしく俺達に聞いてくる
「あの時? あの事件のことね」
茉耶姉はここにいる3人が巻き込まれた事件を思い出していた
衛藤美鶴 無情の氷姫と俺たちはとある事件に巻き込まれた。その事件とは美鶴に告白して断られた連中による誘拐事件である。警察沙汰になる前に鎮圧した為何とかなったがかなりヤバイ事件だった。無情の氷姫誘拐事件なんて関係者の中で言われていた。
時は遡り中学2年の時
俺たちは同じクラスで平穏な日々を送っていたがその事件は突然起きた
「暇だな」
俺が茉耶姉に言う
「それならバイトして家賃を今のうちに貯めておけば?」
茉耶姉は素っ気なく返してくる
「この俺がバイトを出来るとでも?」
俺はそう言うと殴られる
「自慢することじゃ無いって分かるよね?」
茉耶姉は笑顔で言う
「努力はしていますのでご勘弁を」
いつも通りの会話をしていると先生が急いで入ってきた
「少し良いですか? 美鶴さんは居ますか?」
先生が慌てて全員に聞くと全員が教室内を見て居ない事に気がついた
「先生居ませんが何があったのですか?」
茉耶姉が聞くと
「茉耶さん、こっちに来てください。連さんも一緒に」
2人は先生に呼ばれて先生の元に行く
「何があったのですか?」
茉耶姉がもう一回聞くと
「美鶴さんが誘拐されたかも知れません」
先生が恐る恐る言う
「警察には?」
俺が聞くと
「言っていません。学校の評判を落としたく無いと言っていて」
先生が答える
俺達がこんなに情報を提供されているのは前にある事件を未遂で解決したり大事件になりかけた事件をギリギリの所で阻止したりした為かなり信頼を得ているからである
「そんなん言ってんのか? あの馬鹿校長は」
俺は苛立ちを覚える
この中学の校長は色々と問題がある人であった。前にその問題を解決した俺達に口止めをしようとしていた為全力で叩き潰した
「もう一度叩き潰さないといけないようね。それより誘拐場所は分かりますか?」
茉耶姉は先生に聞く
「大体の場所は分かっています。廃工場のある場所です。生徒指導や体育の教員がもう向かっています」
先生は2人に情報を伝える
「行くよ連、武器はある?」
茉耶姉が聞いてくる
「何があってもいいようにいつも持っているから大丈夫だ。茉耶姉は武器は要らない?」
俺が聞くと
「グローブさえあれば心配無い、たかが不良とかの雑魚に合気道の名門の娘が負けるとでも?」
茉耶姉は殺意を出していた
「いや、聞いてみただけ」
俺は武器を出す。武器は長い警棒と少し短い警棒の2つである
「向かうよ。先生車を出してください」
茉耶姉が言うと先生がすぐに自分の車に乗り込む。俺たちも乗り込み移動する
「人数は? 武器は?」
俺が聞く
「20人以上は居ます。武器は鉄パイプやナイフと思われます。教員が全員合流したら制圧しに行きます」
先生が説明する
「それでは遅いので見つけ次第突撃します」
茉耶姉は先生に伝えて降りてから立て籠もっているであろう場所に徒歩で移動する
「ビンゴ、居た。1、2、3、4人いる。右にいる2人をやって」
茉耶姉は俺に伝えて左側に向かい合図とともに2人で出て無力化する
「こちら無力化完了」
俺がそう言うと
「こっちは1人無力化1人捕らえたから尋問するよ」
茉耶姉が俺に伝えてたのでナイフを取りその場所に向かう
着くと茉耶姉は縄で縛って居た
「聞くぞ。あの中には何人居る? あと武器と美鶴は?」
俺が優しい声で聞くと
「教えるかよ馬鹿が、あの人数に勝てるとでも思ってんのか?」
男が調子に乗った為俺はナイフを顔の横に刺して脅す
「教えろ。貴様に選択肢はないぞ犯罪者」
(これやってる俺も犯罪者だよな?)
「わかった。教える。武器は鉄パイプとナイフで人数は30人で美鶴さんに関してはまだ無事です」
男は押し負けて大人しく答える
「成る程、早く行くよ」
茉耶姉が行こうとするので止める
「真正面から行く気か?」
俺が聞くと
「えぇ、真正面から行くわ」
茉耶姉はそう言って正面の扉を蹴り破り入って行った。多分古くなって居たから壊れたんだよな?
(あの馬鹿、まぁ引き付けているうちに助け出すかな)
俺は茉耶姉とは違う反対側の扉からこっそり影に紛れながら入り探すと少し先に手足を縛られて居た
「大丈夫か?」
俺はすぐに駆け寄り抱えて外に出る。外に出て安全を確認してから鎖を取りガムテープをゆっくりと剥がす
「助けてくれてありがとうございます」
美鶴はお礼を言う
「自分で歩けるならこの場所にバレないように行ってくれ。先生が1人立っているから」
俺はそう伝えて中に入る
「さてとこいつらを叩き潰すか。ここなら俺の得意なフィールドだ」
俺は笑い走る。現在茉耶姉一人で戦っているが数が多く苦戦しているようだった
「まずは1人」
俺は背後から忍び寄り後ろの1人を素早く無力化して隠す
「よし、成功つぎはあいつかな?」
続けて2人目を無力化してから茉耶姉の方を見ると約15人程度が倒れて居たが茉耶姉自身も疲れていた。茉耶姉の背後からナイフを持った男が現れたが俺はナイフを叩き落として無力化する。茉耶姉を抱えて端に移動させる
「ご苦労様茉耶姉、後は俺がこいつらを叩き潰すから待っていろ」
俺はそう伝えて十数人の敵と対峙する。一撃でも受ければ負けで負荷の無い攻撃で敵を無力化しないといけないがそれは通常時の話であり現在俺はキレていた
「全力で相手してやるよ」
俺は2つの警棒を持って走り目の前の敵をぶっ叩く
「さぁ来いよ犯罪者共皆殺しにしてやるからよ」
俺がやっていることはかなり危険で負荷のデカイものであるので約5分間のみしか戦えない。性格がかなり歪みただの戦闘狂となる。俺がやっていることは至極簡単な事で全身に全力で力を込めて力を込めた時の痛みを使って外部からの痛みをある程度相殺して攻撃を食らっても大丈夫にして暴れ回る事である。
共感覚に関しては相手の動きを読むために使用していたがあまり役に立たない
その後約4分後敵は全員倒れた為力を抜くと倒れ込むが茉耶姉に抱えられる
「全く無理をするな。あれをやろうとするなと何度も言っているだろうが」
茉耶姉に怒られる
「悪いな姉さんそういえば無事に着いたかな? 彼女は」
俺はその後痛みで意識を失ってしまう
起きた時には事件は解決していて彼女は無事で全員退学して行ったらしいちなみにその後に校長を叩き潰した
そして時は戻り現在
「たしかに戦っていたな俺、まぁもう使うなと言われてから使ってないがな」
俺は思い出していた。あれは身体の節々が痛くなるのでもう2度と使いたく無い
「その時僕は端で見てました。怖くて」
美鶴がその時の事を話す
「まぁあの後は特に問題もなく生活出来たんだから良かったわよ」
茉耶姉が言う
「流石にあんな事があったんだ。もうやらないだろ」
俺が茉耶姉に言う
「あの時戦ってたよね? なのになんで戦えないって言ったの?」
美鶴が聞くと
「それは連の体質が関係してる。連は昔何度か病気にかかっていて身体が弱くなってるの。それと強感覚と呼んでいる物があるの」
茉耶姉が説明する
「共感覚じゃなくて強い感覚?」
美鶴が首をかしげる
「私達が呼んでいるだけで本当にその名前がなるのかは分からない。それでその強感覚ってのはその名の通り皮膚感覚が鋭いという事触覚、痛覚、温度覚が敏感になっている。痛覚が敏感なせいで痛みを多く感じて温度覚が敏感なせいで気温の変化に弱い触覚に関してはくすぐったいのに弱いって感じだけど2つがかなり厄介なの」
茉耶姉が続けて説明する
「まぁ、そのせいで一撃食らえばそれだけで一時的に戦闘不能になったりするから喧嘩は無理なんだよ。あれを使わないとな。出来ればもう2度と使いたく無い」
続けて俺が説明する
「何となく分かった。恩返しがしたいの何か僕にできることはある?」
美鶴が2人に聞いてくる
「私たちとそれだけで仲良くしてくれれば良いわよ」
茉耶姉が美鶴に伝える
「そうだな。そこまでやって欲しい事とか無いし」
俺も続けて伝える
「分かった。よろしく2人共」
そう言って3人は学校に向かう
美鶴は少しだが表情が変わっていた。まだ無愛想ない感じはあるが少し変わったようだ
まだ無色であるがこのままならいずれ色がつくかも知れない。……けど無色の方が良いのかもしれない

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