転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー

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1章 家族

『普通の』散歩作戦

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「……今日は、外に出たいな」

朝食後、私はぽつりと呟いた。
昨日は読書室での「普通作戦」が失敗に終わった。ならば今日は、もっとシンプルに。外を歩くだけ。散歩なら、豪華さも必要ないし、静かに一人で考え事もできるはずだ。

「ビーちゃんが散歩!?なんて………なんて健気で可愛い願いなんだ!」
父様の瞳がきらめく。嫌な予感がする。

「スミス!すぐに護衛隊を百人呼べ!道を清め、花を敷き詰めろ!ビーちゃんの足が汚れるなどあってはならん!魔法師を呼び虹を作れ!風邪をひかないように気温は20℃、湿度は60%にするんだ!!」

「えっ!?私はただ、庭を……」

私の声は、父様の過保護にかき消された。

「ベティ、散歩するなら僕が手を繋いでいてあげる。危険な石も、風も、虫も、鳥も、魔物も君に近づけさせない。僕が守ってあげる。」

アレス兄様が冷静に宣言する。翡翠色の瞳が、まるで世界を敵視しているかのように鋭い。
(散歩に行くだけですよ??大袈裟すぎやしませんかね、あ、でも虫から守ってくれるのはかなりありがたいです。)

「ベティ!俺も一緒に行く!散歩なら俺が肩車してやる!そうすれば疲れない!景色の良いお気に入りの場所があるんだ!!教えてやる!」
ライ兄様は尻尾をぶんぶん振りながら、すでに私を持ち上げようと腕を伸ばしてきた。

(いやいやいや!散歩って歩くから散歩なんだよ!?肩車は違うでしょ!?)



結局、私の「普通の散歩」は、護衛隊百人+使用人+オーケストラ+父様+兄二人+スミス執事、そしてなぜかクス爺(ほんとになんで??あーそうですか、怪我した時のため…)の大行列になった。
もちろん私は地上にはいない。ライ兄様に肩車されている。庭の小道は花びらで敷き詰められ、楽団まで演奏を始めている。まるでパレードだ。

「ビーちゃん、疲れてない?椅子を持ってこようか?」
父様が心配そうに尋ねる。
(歩いてないので疲れようがないです。ただ心は疲れました…ははは)

「ベティ、風が強い。僕が防風結界を張る」
アレス兄様が呪文を唱え、庭全体が無風になった。
(あ…外の新鮮な空気が…)

「ベティ!俺が歌ってやる!散歩には音楽が必要だろ!」
ライ兄様が大声で歌い始め、護衛隊が拍手で応える。

(……これ、散歩じゃなくてもはやパレードだよね!?)

ライ兄様は意外に歌が上手だった。だが、私を肩車したまま歌っていたので、あまり感動はしなかった。



「もうやめてください!」
私は立ち止まり、声を張り上げた。はい、デジャヴ。
行列が一斉に静止する。

「私は……普通に歩きたいだけなんです。肩車も、結界も、楽団もいらない。自分の足で、静かに歩きたいんです!」

涙がにじむ。前世では誰にも言えなかった本音を、また口にしてしまった。

沈黙の後、父様が深く頷いた。
「ビーちゃん……そんなに願うなら叶えよう。だが……」

「だが?」私は身構える。

「散歩専用の庭園を作ろう!最高級の石畳、季節ごとの花を植え、鳥たちを調教して歌わせよう!夜は星も鑑賞できるようにベッドも用意しよう!快適に過ごせるように常に温度を調節する結界を張ろう!!スミス!今すぐ工事を!」

「ええええええええっ!?」

アレス兄様は冷静に微笑む。
「その庭園は僕が管理する。1人で寂しくないように兎やリス、ひよこ、猫なんかも必要だね。ベティが一人で歩けるよう、僕が常に監視しよう」

(アレス兄様、いつも可愛いもの追加してくるのなんなんですか!!?)

ライ兄様は尻尾を振りながら叫ぶ。
「俺はその庭園の門番になる!誰もベティに近づけさせない!」

(……結局、溺愛が強化されただけじゃないかぁぁぁ!)

「む、虫は排除してください~~!!」



その日の夜、私は新しく作られた「ビーちゃん専用散歩庭園」に案内された。
確かに美しい。花々が咲き乱れ、鳥が歌い、可愛い小動物がいて、石畳は歩きやすい。
だが、門の外には父様と兄たちが常に待機していて、私が一歩進むたびに「可愛い!」と歓声が漏れてくる。

(……目良すぎじゃない??それに遠くまで声が聞こえてくるなんてテレパシーなのでは?愛の力ですか??)

私は空を見上げ、心の中で叫んだ。
「ピーマンのない世界に来たかっただけなのに……なんでこんなに溺愛パレードなの……!」

こうして、私の「普通の散歩作戦」も失敗に終わったのだった。
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