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一章 私の居場所
3庇護
ベンに手を引かれ、森の中を歩き出そうとした時。
「いたっ…」
桃は男達に乱暴に扱われて、全身に傷を負っていた、
それを見ていたベンが桃を横抱きにした。ーーお姫様抱っこ!?
「あ、あの…ベンさん、私重いので…無理しないでください」
「…桃は羽根より軽いが??ちゃんと食べてるのか?」
大真面目な顔でそう言うベンに桃は何も言えずに顔を真っ赤にして俯いていた。
ベンが歩き出し、桃は怒涛の1日の疲れから眠ってしまった。
◆
ゆっくりと瞼を持ち上げると、見知らぬ天井が視界に広がった。
木の梁がむき出しになった、古びた宿屋の一室。窓から差し込む淡い月明かりに、白いカーテンが静かに揺れている。
「……ここは……?」
桃は、はっとして身を起こそうとしたが、全身が痛みに悲鳴を上げた。腕や足に残る擦り傷、無理に引きずられたせいであちこちが赤く腫れている。それでも、あの森の恐怖に比べれば、今の静けさは夢のようだった。
その時、ページをめくる音がした。
「……起きたか」
低く響く声に顔を向けると、椅子に腰かけて分厚い本を開いているベンの姿があった。月明かりに照らされた銀白の髪が輝き、鋭い青の瞳が一瞬だけ桃に向けられる。
「ベンさん……」
「あまり動くな。モモ、傷だらけだった」
ベンは本を閉じ、椅子から立ち上がると、桃の傍に歩み寄った。大きな手が、桃の肩をそっと押し戻す。
その動きは意外なほど優しく、桃は久しぶりに誰かに優しくされたことに思わず胸が熱くなった。
「ここは……?」
「宿屋だ。安心しろ。雌だってバレないよう、ローブに包んで来た。今は安全だ」
「今…?」
「あぁ、逃げた盗賊達がお前の情報を売ってるかもしれない…だから、お前の怪我が治り次第この街を出るぞ」
「……そう、ですか」
怖いことには変わりないけど、あのまま森に放り出されていたら、どうなっていたことか。桃は心の中でベンに感謝しつつ、ずっと胸に引っかかっていた疑問を口にした。
「ベンさん、この世界について教えてくれませんか…?」
「……ここは〈グランツ大陸〉。お前が言う“違う場所”がどこかは知らんが、この世界は、色んな種族の獣人が生きている。だが仲はそんなに良くない」
「……獣人……」
桃は、森で見た盗賊たちの獣耳や尾を思い出した。
そして目の前のベンもまた、虎の耳と尾を持つ獣人だ。
「じゃあ、ベンさんは……」
「ホワイトタイガー族の戦士だ。あの森には魔物の討伐の依頼に来ていたところだった。川から引きづられた跡を見つけて辿って行ったらお前がいた。間に合ってよかった」
「ありがとうございます。ベンさんが来てくれなかったらどうなっていたことか…」
「これからは、俺が守るからもうあんな目には合わせない。桃はか弱いな。それにその耳と、甘い匂い…まるで伝説の人間族のようだ」
「!!??…に、人間族…?」
「そうだ。人間族は神話に出てくる存在で、創造神が最初に作ったとされる種族だ。可愛らしい容姿に、繊細な肌、ツルツルの耳に獣を惹きつける、花の蜜のような甘い香り…だが、弱くてすぐに絶滅したと言われている。」
「そ、そうなんだ…」
ーーなんだそりゃ!?いや、確かに獣人に比べたら弱すぎるけどー!
「この世界では、人間の特徴に近ければ近いほど美しいと言われている。それに加えて、雌は稀少だ。さらに、お前のようにこの歳まで穢れの無い人間種はもう**『神』**として扱われるレベルだ」
「穢れ…?」
「交尾をしたことないだろ?」
「!!??そ、そういう意味…なんでわかるの!」
「?匂いでわかるぞ」
ーさすが獣人…
「この世界で、雌は小さい頃から複数の雄(オス)に囲われるのが常だ。種族の存続のため、強い雄を娶ることこそ、雌のステータスだと威張り散らしている。俺は雌が苦手だったんだ。だったんだが、お前に出会った瞬間、俺はお前に出会う為に生まれてきたんだと思った。」
ベンの大きな手が、桃の頬に触れた。その指先が、もちもちとした桃の頬を優しく撫でる。
「お前は、他の雌たちのように、我儘を言わない。その瞳には、嘘も傲慢さもない。俺は一目で思った。お前を俺が独占したいって」
「独占……」
「しかし、」
ベンは目を細め、桃の耳元に顔を近づけた。
「お前の匂いは、甘すぎる。飢えた獣どもには、お前は抵抗できない餌だ。だから、桃、俺よりも強い、信頼できる獣人たちにも、お前を認識させる必要がある。お前を守る盾を、増やさなければならない」
桃は驚愕に息を飲んだ。ベンは、桃を独占したいのに、あえて他の男たちにも「夫」の権利を与えるつもりだというのか? それは全て、桃を「守るため」に?
「……それは、つまり、私はこれから…たくさんの夫を持つことに……」
「ああ」
ベンは当然のように頷いた。
「それが、お前がこの世界で安全に居場所を得る、唯一の方法だ。そして、俺がお前を愛し尽くすための、最良の方法だ」
そしてベンは、桃をひょいと抱き上げ、慣れたようにその胸に抱き寄せた。
ベンの温かく、強靭な腕の中。
桃は顔が熱くなるのを感じた。
ーーまだ出会ったばかりなのに、ベンさんに優しくされると、心が暖かい。
くぅーーーー
桃のお腹がなった。
「くくっ音まで可愛いな。ちょっと待ってろ、今食事を持ってくる。すぐ!すぐに戻ってくるからな」
そう言ってベンは颯爽と部屋を出て行った。
桃はまだ見ぬ異世界の食事にドキドキワクワクしながら、ベンの背中を見ていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今のところ…ベンさんは不器用なスパダリ設定です。後々他のヒトと関わると印象が変わってくるかもしれません。
お気に入り、感想、いいね、よろしくおねがいします✨
「いたっ…」
桃は男達に乱暴に扱われて、全身に傷を負っていた、
それを見ていたベンが桃を横抱きにした。ーーお姫様抱っこ!?
「あ、あの…ベンさん、私重いので…無理しないでください」
「…桃は羽根より軽いが??ちゃんと食べてるのか?」
大真面目な顔でそう言うベンに桃は何も言えずに顔を真っ赤にして俯いていた。
ベンが歩き出し、桃は怒涛の1日の疲れから眠ってしまった。
◆
ゆっくりと瞼を持ち上げると、見知らぬ天井が視界に広がった。
木の梁がむき出しになった、古びた宿屋の一室。窓から差し込む淡い月明かりに、白いカーテンが静かに揺れている。
「……ここは……?」
桃は、はっとして身を起こそうとしたが、全身が痛みに悲鳴を上げた。腕や足に残る擦り傷、無理に引きずられたせいであちこちが赤く腫れている。それでも、あの森の恐怖に比べれば、今の静けさは夢のようだった。
その時、ページをめくる音がした。
「……起きたか」
低く響く声に顔を向けると、椅子に腰かけて分厚い本を開いているベンの姿があった。月明かりに照らされた銀白の髪が輝き、鋭い青の瞳が一瞬だけ桃に向けられる。
「ベンさん……」
「あまり動くな。モモ、傷だらけだった」
ベンは本を閉じ、椅子から立ち上がると、桃の傍に歩み寄った。大きな手が、桃の肩をそっと押し戻す。
その動きは意外なほど優しく、桃は久しぶりに誰かに優しくされたことに思わず胸が熱くなった。
「ここは……?」
「宿屋だ。安心しろ。雌だってバレないよう、ローブに包んで来た。今は安全だ」
「今…?」
「あぁ、逃げた盗賊達がお前の情報を売ってるかもしれない…だから、お前の怪我が治り次第この街を出るぞ」
「……そう、ですか」
怖いことには変わりないけど、あのまま森に放り出されていたら、どうなっていたことか。桃は心の中でベンに感謝しつつ、ずっと胸に引っかかっていた疑問を口にした。
「ベンさん、この世界について教えてくれませんか…?」
「……ここは〈グランツ大陸〉。お前が言う“違う場所”がどこかは知らんが、この世界は、色んな種族の獣人が生きている。だが仲はそんなに良くない」
「……獣人……」
桃は、森で見た盗賊たちの獣耳や尾を思い出した。
そして目の前のベンもまた、虎の耳と尾を持つ獣人だ。
「じゃあ、ベンさんは……」
「ホワイトタイガー族の戦士だ。あの森には魔物の討伐の依頼に来ていたところだった。川から引きづられた跡を見つけて辿って行ったらお前がいた。間に合ってよかった」
「ありがとうございます。ベンさんが来てくれなかったらどうなっていたことか…」
「これからは、俺が守るからもうあんな目には合わせない。桃はか弱いな。それにその耳と、甘い匂い…まるで伝説の人間族のようだ」
「!!??…に、人間族…?」
「そうだ。人間族は神話に出てくる存在で、創造神が最初に作ったとされる種族だ。可愛らしい容姿に、繊細な肌、ツルツルの耳に獣を惹きつける、花の蜜のような甘い香り…だが、弱くてすぐに絶滅したと言われている。」
「そ、そうなんだ…」
ーーなんだそりゃ!?いや、確かに獣人に比べたら弱すぎるけどー!
「この世界では、人間の特徴に近ければ近いほど美しいと言われている。それに加えて、雌は稀少だ。さらに、お前のようにこの歳まで穢れの無い人間種はもう**『神』**として扱われるレベルだ」
「穢れ…?」
「交尾をしたことないだろ?」
「!!??そ、そういう意味…なんでわかるの!」
「?匂いでわかるぞ」
ーさすが獣人…
「この世界で、雌は小さい頃から複数の雄(オス)に囲われるのが常だ。種族の存続のため、強い雄を娶ることこそ、雌のステータスだと威張り散らしている。俺は雌が苦手だったんだ。だったんだが、お前に出会った瞬間、俺はお前に出会う為に生まれてきたんだと思った。」
ベンの大きな手が、桃の頬に触れた。その指先が、もちもちとした桃の頬を優しく撫でる。
「お前は、他の雌たちのように、我儘を言わない。その瞳には、嘘も傲慢さもない。俺は一目で思った。お前を俺が独占したいって」
「独占……」
「しかし、」
ベンは目を細め、桃の耳元に顔を近づけた。
「お前の匂いは、甘すぎる。飢えた獣どもには、お前は抵抗できない餌だ。だから、桃、俺よりも強い、信頼できる獣人たちにも、お前を認識させる必要がある。お前を守る盾を、増やさなければならない」
桃は驚愕に息を飲んだ。ベンは、桃を独占したいのに、あえて他の男たちにも「夫」の権利を与えるつもりだというのか? それは全て、桃を「守るため」に?
「……それは、つまり、私はこれから…たくさんの夫を持つことに……」
「ああ」
ベンは当然のように頷いた。
「それが、お前がこの世界で安全に居場所を得る、唯一の方法だ。そして、俺がお前を愛し尽くすための、最良の方法だ」
そしてベンは、桃をひょいと抱き上げ、慣れたようにその胸に抱き寄せた。
ベンの温かく、強靭な腕の中。
桃は顔が熱くなるのを感じた。
ーーまだ出会ったばかりなのに、ベンさんに優しくされると、心が暖かい。
くぅーーーー
桃のお腹がなった。
「くくっ音まで可愛いな。ちょっと待ってろ、今食事を持ってくる。すぐ!すぐに戻ってくるからな」
そう言ってベンは颯爽と部屋を出て行った。
桃はまだ見ぬ異世界の食事にドキドキワクワクしながら、ベンの背中を見ていた。
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今のところ…ベンさんは不器用なスパダリ設定です。後々他のヒトと関わると印象が変わってくるかもしれません。
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