憧れの先輩に抱かれたくて尿道開発している僕の話

聖性ヤドン

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第4話 友情と大人のおもちゃ

――翌日の放課後。
学生寮に戻った広夢ひろむは、黒いケースの中にずらりと並ぶ金属の棒を眺めていた。
これは尿道ブジーというものらしい。
ほとんど真っ直ぐな棒だが、やや湾曲していてよく見るとSの字を描いている。
どれも長さは20センチ程度。
太さは細いものから太いものまであって、細いものは昨日のカテーテルほど。
太いものは人差し指ほどの太さがあった。
たぶんこれも尿道に入れるんだろうが、太いのはどう考えても入る気がしない。
用途が違うのだろうか? とりあえずそう思うことにする。

恐る恐る手に取ってみる。
握って先端に指を当てると、つるつるしていて触り心地がよかった。
顔に近づけ、そっと匂いを嗅ぐ。
なんの香りもしなかった。
昨日これを手渡してきた時の、日向ひゅうがの顔が脳裏によみがえる。

「俺が使ってたやつ、お前にやる」

あのあと目を覚ました広夢に、彼はこのケースを無造作に突きつけてきた。
その時広夢は下半身むき出しのまま床に寝ていた。
局部に刺さったカテーテルはなくなっていて、そこがウェットティッシュで拭かれたようにひんやりしていたから、気を失った広夢のあと処理を日向がしてくれたんだろう。
広夢は急にはずかしくなり、前を隠しながらケースを受け取った。
しかし日向は何を思って、なんのためにこれをくれたのか……?
それは聞きそびれてしまったけれど、おそらくこれで練習してこいということだろう。
昨日は尿道でイくどころか途中で失神してしまったんだから。

このまま、尿道への挑戦を続けるべきなのかどうか。
それを考えると、広夢はため息しか出なかった。
日向が恋しい。
昨日、こめかみに触れてきた唇が忘れられない。
あの人とキスがしたい。
そしてこのケースを渡してきたからには、日向もまだ広夢を見捨ててはいないんだろうと思う。
けれども広夢にはこの先の未来が想像できなかった。
恋も性もまったく未知の領域だからだ。
冷え冷えとした尿道ブジーを握りしめ、危険な暗闇を手探りで行く自分を思う。

蒼井あおい、早いな? お前も部活サボり?」

同室の五十嵐いがらしが突然入ってきた。

「わっ!」

デスクの上に広げていた尿道ブジーのケースを、広夢は上半身を突っ伏して隠す。
考え込んでいたせいで、五十嵐が来たのに気づくのが遅れた。

「なんだそれ?」

五十嵐は目ざとく見つけてくる。

「なんでもない」
「慌てて隠すとこ見えたぞ? なんでもなくないだろ、めちゃくちゃ怪しい!」

どう反論しようか迷った一瞬で、脇の下から尿道ブジーをケースごと奪い取られてしまった。

「なんだこれ!?」
「返せよ!」
「見るだけだって!」

五十嵐がケースを高く掲げ、奪い返されるのを阻止する。
大事なブジーが1本2本と床に滑り落ちた。
広夢は慌ててそれを拾い集める。

「えっ、もしかしてこれ……」

ふざけていた五十嵐の声が、緊張感を帯びたものに変わった。

「尿道開発の!?」
「!? 声デカいって!」

広夢が五十嵐の口を手で塞いで黙らせた。
すると五十嵐も察してくれたのか、ベッドの縁に腰を下ろし、囁き声で聞いてくる。

「なんでこんなモンを蒼井っちが持ってるんだよ?」
「事情がある……」
「事情……?」
「ある人にもらった……」
「日向先輩か!」

そこはボカすつもりだったのに、なんでかもうバレている。

「ついにそういう道に引きずり込まれたのか! だからあの人を追いかけ回すのはやめろって言ったのに」
「違う、そういうんじゃない」
「だったらなんでこんな物騒なモンがあるんだよ!?」

五十嵐が拗ねた顔で広夢を睨んだ。

この男……五十嵐いがらしたけるは広夢の中等部からの友達だ。
成績も見た目もまあ普通。
クラスで目立つところのない広夢にとって、五十嵐は同類であり、気の置けない相手だった。
囲碁部の広夢に対し、五十嵐は野球部と、活躍する分野は違ったが。
それでもずっと仲良くやってきたのは、それだけ気が合うということだろう。

「絶対誰にも言うなよ?」

そう前置きして広夢は、日向とのことを五十嵐に打ち明けた。

「告った? 馬鹿かお前は!? 俺たちみたいな雑魚があの人に相手にされるわけないだろ」

五十嵐が眉も口もへの字に曲げた。
それは広夢もわかっている、わかっているけれど言わずにはいられなかった。
そして五十嵐の言う通り、日向先輩から相手にされていないのは確かで……。
いや、ちょっとは相手にされていると思いたい。
でも野良猫に、気まぐれに餌をやったくらいの構われ方だろう。
そんな現実に改めて凹む。

「で、お前、これでホントに尿道開発しようってのかよ?」

五十嵐が強ばった顔で広夢と尿道ブジーを見比べる。
暑くもないのに、彼は坊主頭に汗をかいていた。

「それは……まあ……」

彼の向かいにあるベッドに腰かけていた広夢は、迷いながらも頷く。

「マジか」
「だって……こうなったらやるしかないだろ」
「そんなにあいつに抱かれたいわけ?」
「…………」

ノーと言わないならイエスだと、五十嵐は目を見てわかってくれたようだ。

「マジか~!」

彼は天井を仰いで頭を抱え、そのままベッドへ仰向けに倒れ込んだ。
開けた口からトレードマークの八重歯が覗く。

「俺っちのかわいい蒼井っちのちんこが!」
「かわいいってなんだよ」

「かわいい」は「蒼井」にかかるのか「ちんこ」にかかるのか。
どっちでもいいが、どっちもあまり嬉しくはなかった。

と、五十嵐が腹筋を使って勢いよく起き上がる。

「だったらいっそのこと俺っちがやる!」
「やるって、何を?」
「だからコレで、蒼井っちのちんこをぐりぐり!」

五十嵐が一番ぶっといのを手に取り、広夢の方へ向けてきた。
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