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秀抜な男性と偶発的を装った何らかの力が働いた計画的出会い。
第3話
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宮殿東側の馬車道から入り、噴水のある広場を抜ける。宮殿の前庭まで行き着くと、リティアは庭園を楽しもうと馬車を降りてテラスまで歩くことにした。以前訪問した時とは季節が変わり、この時期の花が咲き誇っていた。もう何年も見ているはずなのに細部まで手入れの行き届いた景趣に圧巻される。
大庭園まで続く壮大な柱廊にはいくつか人影があった。その人はリティアに気が付くとわずかに目を見開き、その後、これもわずかにだが、眉間に皺を寄せた。だが、リティアに声を掛ける頃には穏やかな表情だった。
「ご無沙汰しております。リティア嬢」
「え、ええ。ヴェッティン卿、お元気そうで何よりですわ」
「あなたも。あー……ゴホン。久しぶりに会って早々ですが、あなたに苦言を。伴の者も付けずに令嬢がおひとり歩きなどいかがなものかと」
「ふふ、ご心配ありがとうございます。でも、このファサードまでの道は今、宮廷で最も安全な場所ではないかしら」
リティアがそう言うと聡明さがにじみ出た紳士の顔はふっと和らいだ。彼とは王太子も含めアカデミー時代の級友なのだ。
「では、微力ながら、私がしばらくは護衛を努めましょう」
すっと腕を出した侯爵家子息、ランハート・ヴェッティンの腕にリティアはそっと手を添えた。
「で、彼に会いにきたのかい? 」
「ええ。まあ」
煮え切らないリティアの答えに、ランハートは今度は気取らずに苦笑いした。
「わざわざ侍従を帰して一人になりたかった。ってこと? 」
「帰してないわ、馬車を停めに行ったのよ」
「うん。君が一人で大丈夫って言ったからだろう? 」
出会いを、なんて言えるわけもなく、リティアも苦笑いで返した。頭の切れるランハートにこれ以上口を開くと何もかも見透かされそうで、リティアは庭園を楽しむ素振りをした。気持ちを汲んでくれたのだろう。ランハートはそれ以上何も言わなかった。
「少し、雰囲気が変わったね」
「そうかしら」
リティアは泉から吹き出る水しぶきから、ランハートへと視線を移した。
「うーん。ドレスのせいかな」
ランハートは本当はそうじゃないとわかっていながらそう言った様子だ。リティアの微かな違和は説明しがたいものなのだろう。そっと瞳を覗かれるように見つめられれば、リティアは恥ずかしさから顔を赤くした。
ランハートのオリーブ色の髪は日に当たっていつもより明るく見えた。アンバーの瞳が好奇心でいたずらっぽく輝いた。
「別に何もないんだから」
「そっか、そっか」
からかわれたのだと気がつくとリティアはますます顔を赤らめた。リティアは記憶がぼんやり蘇ったあたりから誰かに雰囲気が変わったと言われることが多くなった。確かに婚約破棄などという考えに至ったのもそのせいでリティアにも自覚はあった。それをこの一瞬で見抜いてしまうランハートに警戒しながらも久しぶりのランハートとの時間は楽しいものだった。
無駄に綺麗な顔をしている。ヴェルター以外を異性と認識していなかったリティアは今更ながらに知的で冷静沈着で、それでいて子供っぽい所もあるランハートに、この人、モテるだろうなぁと思ったのだった。主に、娘の相手にと親から熱望されそうな将来有望な好青年だった。
「何か? 」
「いいえ、あなたって相変わらず完璧ね」
「融通が利かないって? 」
「それは否定しないわ。でも、相変わらず、素敵ねっていうのはそのままの意味ってこと」
「あはは、君の婚約者には到底及ばないさ」
そうかしら、とリティアは心の中で思う。素敵なのはヴェルターだけじゃないって今から知るところ。
リティアが先ほどここが今最も安全な場所であると言ったのは横にランハートがいること、それと、少し先に騎士が見えたからだ。その騎士に見覚えがあり、向こうも知った顔だとわかるとそこでリティアとランハートが到着するのを待っていた。
「リティア! 随分久しぶりじゃないか! 」
その騎士はリティアが到着するのを待ちきれんとばかりに声を掛けてきた。んんっとランハートが咳払いをする。その騎士、レオン・フリューリングは肩をすくめておどけて見せると礼を尽くした。
「レディ・リティア。ご挨拶申し上げます」
リティアもそれに倣い形式ばった挨拶を交わした。これで満足かとランハートに視線を送るレオンに、ランハートは満足そうに頷いた。それが確認できると、レオンは相好を崩した。
「許してくれよ久々の友との再会なんだ」
「……場所を考えろ」
じろり、ランハートがレオンを睨むが、それに省する様子もなくレオンは白い歯を見せて笑った。
「で、いつからランがリティアの護衛騎士に? 」
レオンはさっそく軽口をたたく。
「何だ、俺じゃ役不足だと言いたいのか? 」
「はは、文官でもお前ほど腕の立つ奴はいないだろう」
一見真逆の二人だが、気の置けない友人なのだ。
「で、リティは? 逢瀬? 」
改めて見ると、ランハートもレオンもとても素敵な人だ。リティアは二人が仲良く言い合う姿に見とれてしまっていて、レオンの問いにすぐに応えられなかった。
大庭園まで続く壮大な柱廊にはいくつか人影があった。その人はリティアに気が付くとわずかに目を見開き、その後、これもわずかにだが、眉間に皺を寄せた。だが、リティアに声を掛ける頃には穏やかな表情だった。
「ご無沙汰しております。リティア嬢」
「え、ええ。ヴェッティン卿、お元気そうで何よりですわ」
「あなたも。あー……ゴホン。久しぶりに会って早々ですが、あなたに苦言を。伴の者も付けずに令嬢がおひとり歩きなどいかがなものかと」
「ふふ、ご心配ありがとうございます。でも、このファサードまでの道は今、宮廷で最も安全な場所ではないかしら」
リティアがそう言うと聡明さがにじみ出た紳士の顔はふっと和らいだ。彼とは王太子も含めアカデミー時代の級友なのだ。
「では、微力ながら、私がしばらくは護衛を努めましょう」
すっと腕を出した侯爵家子息、ランハート・ヴェッティンの腕にリティアはそっと手を添えた。
「で、彼に会いにきたのかい? 」
「ええ。まあ」
煮え切らないリティアの答えに、ランハートは今度は気取らずに苦笑いした。
「わざわざ侍従を帰して一人になりたかった。ってこと? 」
「帰してないわ、馬車を停めに行ったのよ」
「うん。君が一人で大丈夫って言ったからだろう? 」
出会いを、なんて言えるわけもなく、リティアも苦笑いで返した。頭の切れるランハートにこれ以上口を開くと何もかも見透かされそうで、リティアは庭園を楽しむ素振りをした。気持ちを汲んでくれたのだろう。ランハートはそれ以上何も言わなかった。
「少し、雰囲気が変わったね」
「そうかしら」
リティアは泉から吹き出る水しぶきから、ランハートへと視線を移した。
「うーん。ドレスのせいかな」
ランハートは本当はそうじゃないとわかっていながらそう言った様子だ。リティアの微かな違和は説明しがたいものなのだろう。そっと瞳を覗かれるように見つめられれば、リティアは恥ずかしさから顔を赤くした。
ランハートのオリーブ色の髪は日に当たっていつもより明るく見えた。アンバーの瞳が好奇心でいたずらっぽく輝いた。
「別に何もないんだから」
「そっか、そっか」
からかわれたのだと気がつくとリティアはますます顔を赤らめた。リティアは記憶がぼんやり蘇ったあたりから誰かに雰囲気が変わったと言われることが多くなった。確かに婚約破棄などという考えに至ったのもそのせいでリティアにも自覚はあった。それをこの一瞬で見抜いてしまうランハートに警戒しながらも久しぶりのランハートとの時間は楽しいものだった。
無駄に綺麗な顔をしている。ヴェルター以外を異性と認識していなかったリティアは今更ながらに知的で冷静沈着で、それでいて子供っぽい所もあるランハートに、この人、モテるだろうなぁと思ったのだった。主に、娘の相手にと親から熱望されそうな将来有望な好青年だった。
「何か? 」
「いいえ、あなたって相変わらず完璧ね」
「融通が利かないって? 」
「それは否定しないわ。でも、相変わらず、素敵ねっていうのはそのままの意味ってこと」
「あはは、君の婚約者には到底及ばないさ」
そうかしら、とリティアは心の中で思う。素敵なのはヴェルターだけじゃないって今から知るところ。
リティアが先ほどここが今最も安全な場所であると言ったのは横にランハートがいること、それと、少し先に騎士が見えたからだ。その騎士に見覚えがあり、向こうも知った顔だとわかるとそこでリティアとランハートが到着するのを待っていた。
「リティア! 随分久しぶりじゃないか! 」
その騎士はリティアが到着するのを待ちきれんとばかりに声を掛けてきた。んんっとランハートが咳払いをする。その騎士、レオン・フリューリングは肩をすくめておどけて見せると礼を尽くした。
「レディ・リティア。ご挨拶申し上げます」
リティアもそれに倣い形式ばった挨拶を交わした。これで満足かとランハートに視線を送るレオンに、ランハートは満足そうに頷いた。それが確認できると、レオンは相好を崩した。
「許してくれよ久々の友との再会なんだ」
「……場所を考えろ」
じろり、ランハートがレオンを睨むが、それに省する様子もなくレオンは白い歯を見せて笑った。
「で、いつからランがリティアの護衛騎士に? 」
レオンはさっそく軽口をたたく。
「何だ、俺じゃ役不足だと言いたいのか? 」
「はは、文官でもお前ほど腕の立つ奴はいないだろう」
一見真逆の二人だが、気の置けない友人なのだ。
「で、リティは? 逢瀬? 」
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