92 / 231
92話 真夜中の会合①
しおりを挟む
年の末日、夜の屋外。
暖冬ながらも、指先に寒さが染みてくる。
大通りから少し外れた場所、学校近くの神社だ。
「ついでの事」もあり、ここで待ち合わせだ。
最近は年越しだからって何か意識する事も無かったけど、いざこうして「それっぽい事」をしてみると、これはこれで案外悪くない雰囲気。
街灯は入り口付近だけ照らし、奥の方は闇に溶けてよく見えない。
それでも怖さは感じない。むしろ安心感すらある。
ここに住む「怪異」を、既に知ってるからだろう。
「こんなとこに居ても、なんも面白くねーぞ。」
思考に浮かぶや否や、本人の登場。
青白く光る霊狐、この神社の神の使いだ。
「待ち合わせだから別にそれは構わないんだけど。
…とはいえ、年越しで何かやったりはしないんだ?」
「前は甘酒酌み交わしたりして談笑の場になってたんだがなぁ。
年々人が減って、身内だけで盛り上がるようになっていって、今頃もっと快適な所で楽しんでるんだろうよ。」
そう言いながら、目線はどこか遠くを見ていた。
ついでとはいえ折角こうして来たんだ、指先の感覚で財布から小銭を選別する。
そうして取った500円玉を、わずかな光を頼りに賽銭箱へ。
「うおっ、なんか音重くなかったか今!? お前何を!?」
自分には違いは分からないが、音の聞き分けか妖力的な感知か、反応の早さにむしろこちらも一瞬びびる。
「何って、願い事だよ、折角なんだし。」
「なんだよ、また『魔法が使えるようにー』とか言うのか?」
半笑いのその返答はバカにしてるというより、薄れゆく神社への関心への自嘲に聞こえた。
心霊スポットは人々の思念から強大になると聞いた、その逆もあるとしたら……。
「そうだな、『もっとうまく使えるように』、だけどな。
…何かが起こってるのは分かってる。その結果どう動くとしても、何が起こるかは知っておきたい。それができるくらいには、魔術で自衛できるくらいになりたい。」
「それでいいんだな?」
「追加したくなったらまた来るよ。」
「なんだ、ちゃんと欲張りじゃん。」
そう言い、狐が鳥居の上に乗る。
「久し振りの上客だ、とっておきのをやってやる。
一度外に出てみな。」
何やら手立てがあるらしい、言われた通りに来た道を戻る。
鳥居の上で、狐が何度か跳び跳ねる。次第に鳥居が不思議な光を纏い、輝いていく。
「いいぜ。こっちに来てみな、鳥居を通ってな。」
そう言い、狐が向こう側へと降りる。
ちょっと緊張する、けど誘われるままに鳥居をくぐる。
違和感と、奇妙に見えるその風景。
暗かったはず、でも見える。奥の社の輪郭が。
「さぁ、こっちだ。自分の形をしっかりイメージしながら歩くんだ。」
事前に聞いていたならば、意味が分からぬ事だろう。
だけど今ならよく分かる。形失うこの世界。
魔術になぞらえイメージしてみる。奥へと歩く、自分の姿。
失せた感覚戻って来、賽銭箱の前に立つ。
「ここは一体…?」
「常世とか幽世と呼ばれる場所、お前達の現世とは、実体と霊体が逆の世界だ。」
少しずつだがこの場所に慣れ、意識に余裕。見えた狐は実体のよう。純白の毛が、夜風になびく。
「さぁ、今一度言葉にするんだ。お前の願いを。」
一呼吸、気持ちを静め、意を決す。
「…俺は、戦えるだけの力が欲しい。
事の成り行きまで関わって、結末を見届けられるだけの力を。」
「それだけでいいのか? もし終焉を目の当たりにしたら、それだけで納得できるのか?」
「それは……。」
イメージが、やたら綺麗に脳裏に浮かぶ。
力尽き倒れ地に伏すハルルの姿、後ろで見てる自分の姿。
「…せめて、俺も抗いたい。そんでできる事なら、打ち勝つ為の戦力になりたい。
それだけの力が欲しい…!」
流れるように、自然と出てきたその言葉。
無意識に、奥に隠した願い事。
「いいね、その魂の声に、ちょっとした力添えをしてやろう!」
上方の、鈴より落ちる一滴。
触れた途端に粒子となって、自分を包み、瞬いている。
「答えの鍵は『名を与えよ』だ。
さ、自分の形を失う前に、こっちだ。」
再び狐が鳥居に登る。意図汲む暇は無いらしい。
朱色に輝く鳥居を抜けた先は、いつもと変わらない風景だった。
鳥居の上の狐は青白く輝き、満足げな様子で伏している。
丁度、ショウヤ達3人が向かってくるのを遠くに見かける。
今のところ、あの光で何かが変わった感じはしていない。
けど、あの空間の影響なのか、言葉として引き出された、無意識に閉じ込めていた自分の願い。
漠然としていた道筋に、ひとつの目標地点ができた。
それが見えただけでも、なんだかすっきりした。
「おう。何かあったのか?」
というショウヤの問い。
「いや、ちょっと変わった体験をしただけだ。」
「なんだよもう、そんな勿体ぶりやがって。」
暖冬ながらも、指先に寒さが染みてくる。
大通りから少し外れた場所、学校近くの神社だ。
「ついでの事」もあり、ここで待ち合わせだ。
最近は年越しだからって何か意識する事も無かったけど、いざこうして「それっぽい事」をしてみると、これはこれで案外悪くない雰囲気。
街灯は入り口付近だけ照らし、奥の方は闇に溶けてよく見えない。
それでも怖さは感じない。むしろ安心感すらある。
ここに住む「怪異」を、既に知ってるからだろう。
「こんなとこに居ても、なんも面白くねーぞ。」
思考に浮かぶや否や、本人の登場。
青白く光る霊狐、この神社の神の使いだ。
「待ち合わせだから別にそれは構わないんだけど。
…とはいえ、年越しで何かやったりはしないんだ?」
「前は甘酒酌み交わしたりして談笑の場になってたんだがなぁ。
年々人が減って、身内だけで盛り上がるようになっていって、今頃もっと快適な所で楽しんでるんだろうよ。」
そう言いながら、目線はどこか遠くを見ていた。
ついでとはいえ折角こうして来たんだ、指先の感覚で財布から小銭を選別する。
そうして取った500円玉を、わずかな光を頼りに賽銭箱へ。
「うおっ、なんか音重くなかったか今!? お前何を!?」
自分には違いは分からないが、音の聞き分けか妖力的な感知か、反応の早さにむしろこちらも一瞬びびる。
「何って、願い事だよ、折角なんだし。」
「なんだよ、また『魔法が使えるようにー』とか言うのか?」
半笑いのその返答はバカにしてるというより、薄れゆく神社への関心への自嘲に聞こえた。
心霊スポットは人々の思念から強大になると聞いた、その逆もあるとしたら……。
「そうだな、『もっとうまく使えるように』、だけどな。
…何かが起こってるのは分かってる。その結果どう動くとしても、何が起こるかは知っておきたい。それができるくらいには、魔術で自衛できるくらいになりたい。」
「それでいいんだな?」
「追加したくなったらまた来るよ。」
「なんだ、ちゃんと欲張りじゃん。」
そう言い、狐が鳥居の上に乗る。
「久し振りの上客だ、とっておきのをやってやる。
一度外に出てみな。」
何やら手立てがあるらしい、言われた通りに来た道を戻る。
鳥居の上で、狐が何度か跳び跳ねる。次第に鳥居が不思議な光を纏い、輝いていく。
「いいぜ。こっちに来てみな、鳥居を通ってな。」
そう言い、狐が向こう側へと降りる。
ちょっと緊張する、けど誘われるままに鳥居をくぐる。
違和感と、奇妙に見えるその風景。
暗かったはず、でも見える。奥の社の輪郭が。
「さぁ、こっちだ。自分の形をしっかりイメージしながら歩くんだ。」
事前に聞いていたならば、意味が分からぬ事だろう。
だけど今ならよく分かる。形失うこの世界。
魔術になぞらえイメージしてみる。奥へと歩く、自分の姿。
失せた感覚戻って来、賽銭箱の前に立つ。
「ここは一体…?」
「常世とか幽世と呼ばれる場所、お前達の現世とは、実体と霊体が逆の世界だ。」
少しずつだがこの場所に慣れ、意識に余裕。見えた狐は実体のよう。純白の毛が、夜風になびく。
「さぁ、今一度言葉にするんだ。お前の願いを。」
一呼吸、気持ちを静め、意を決す。
「…俺は、戦えるだけの力が欲しい。
事の成り行きまで関わって、結末を見届けられるだけの力を。」
「それだけでいいのか? もし終焉を目の当たりにしたら、それだけで納得できるのか?」
「それは……。」
イメージが、やたら綺麗に脳裏に浮かぶ。
力尽き倒れ地に伏すハルルの姿、後ろで見てる自分の姿。
「…せめて、俺も抗いたい。そんでできる事なら、打ち勝つ為の戦力になりたい。
それだけの力が欲しい…!」
流れるように、自然と出てきたその言葉。
無意識に、奥に隠した願い事。
「いいね、その魂の声に、ちょっとした力添えをしてやろう!」
上方の、鈴より落ちる一滴。
触れた途端に粒子となって、自分を包み、瞬いている。
「答えの鍵は『名を与えよ』だ。
さ、自分の形を失う前に、こっちだ。」
再び狐が鳥居に登る。意図汲む暇は無いらしい。
朱色に輝く鳥居を抜けた先は、いつもと変わらない風景だった。
鳥居の上の狐は青白く輝き、満足げな様子で伏している。
丁度、ショウヤ達3人が向かってくるのを遠くに見かける。
今のところ、あの光で何かが変わった感じはしていない。
けど、あの空間の影響なのか、言葉として引き出された、無意識に閉じ込めていた自分の願い。
漠然としていた道筋に、ひとつの目標地点ができた。
それが見えただけでも、なんだかすっきりした。
「おう。何かあったのか?」
というショウヤの問い。
「いや、ちょっと変わった体験をしただけだ。」
「なんだよもう、そんな勿体ぶりやがって。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~
Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。
それでも、組織の理不尽には勝てなかった。
——そして、使い潰されて死んだ。
目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。
強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、
因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。
武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。
だが、邪魔する上司も腐った組織もない。
今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。
石炭と化学による国力強化。
情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。
準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。
これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、
「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、
滅びの未来を書き換えようとする建国譚。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
最初から最強ぼっちの俺は英雄になります
総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!
ユニークアイテムな女子(絶対的替えの効かない、唯一無二の彼女)「ゆにかの」
masuta
キャラ文芸
恋と友情、そして命を懸けた決断。青春は止まらない。
世界を股にかける財閥の御曹司・嘉位は、U-15日本代表として世界一を経験した天才投手。
しかし、ある理由で野球を捨て、超エリート進学校・和井田学園へ進学する。
入学式の日、偶然ぶつかった少女・香織。
彼女は、嘉位にとって“絶対的替えの効かない、唯一無二の存在”だった。
香織は、八重の親友。
そして八重は、時に未来を暗示する不思議な夢を見る少女。
その夢が、やがて物語を大きく動かしていく。
ゴールデンウィーク、八重の見た夢は、未曾有の大災害を告げていた。
偶然か、必然か……命を守るために立ち上がる。
「誰も欠けさせない」という信念を胸に走り続ける。
やがて災害を未然に防ぎ、再びグラウンドへと導く。
その中で、恋もまた静かに進んでいく。
「ずっと、君が好きだった」告白の言葉が、災害と勝負を越えた心を震わせる。
それぞれの想いが交錯し、群像劇は加速する。
一人ひとりが主人公。人生に脇役はいない。
現代ファンタジーとリアルが交錯する青春群像劇。
本作は小説家になろう、オリジナル作品のフルリメイク版です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる