192 / 231
192話 トリック・オア・トリート③
しおりを挟む
ロロを追い、林の奥の方へと。
幸い、反応の進行方向はこちらとすれ違う形。取り逃す事は無さそうだ。
待ち伏せの手もあったが、その考えに至った時には既にロロが接触していた。
木々の隙間から見える、動く何か。土の塊だろうか。
近寄るにつれ、全容が見えてくる。自分より少し背の高い、人の形だ。
この間戦った奴の操る葉人形を思い起こさせられる。噛み付いたロロを振り払う所作も、人間の動きそのものだ。
ロロに気を取られていた土人形だが、こちらにも気が付いた。
「へぇ、ついに見つかっちゃったか。」
思考に直接、思念が響葉として響く。発信源はこの土人形だろう。
「どういうことだ?」
「いや、いくらあたしが隠密行動だからといってさ、誰にも気付かれなさすぎると、それはそれでなんか怖くなってくる心理ってあるじゃん?
だからよかったよ、こうして見つけてくれてさ。」
確かにこうして目の前にしても、魔力探知の方ではかすかに感じ取れる程度の存在感。
って、問題はそこじゃない。
「お前は誰だ?」
「んー、あえて言うなら黒幕の手先、ってとこかな?」
意外にも素直な答えが、無骨な造形の操り人形と似合わないひょうきんなそぶりと共に返ってくる。
「じゃあ、最近の怪異異常の原因はお前か?」
「かもね。だとしたらどうするつもり?」
否定の言葉は無い、なら。
「お前を止める。」
「だよねー、そう来ると思った。
けどさ、考えて見なよ。こうして古い妖怪とか解放して、あんたらがそれを倒して、この辺の魔力が高まってるわけじゃん?」
地域的な妖力が高まってるとはソウクロウからも聞いてた話。
それ自体が狙い。ゴーストファインダーや、こうした実地活動は、あくまでその手段という事か?
「このまま魔力に溢れて、あんたが困る事ある?
その内ああいう妖怪共は、街中まで活動を広げ、その存在は一般に認識される。
で、そういう幻想じみたもんが一般常識になれば、魔術だの妖術だのもわざわざ隠す必要も薄くなる。
あたしら的に表立って魔術使えるの、便利じゃね?」
それは、ちょっとだけ同意してしまった。
持続力を上げる為に普段から人狼姿を纏って慣らしていて、今や逆に普段の状態に不便さを感じ始めている。
それを日常的に活用できるようになったとしたら、それは便利だろう。
「…その為なら、無関係な所に被害が出てもいいと?」
「それは君が堂々と戦って守ればいいじゃない。
好きだから今もやってるんだろ? そういうヒーロー的な活動をさ。
それに、どうせ君自身は自衛できるんだし、大した問題にはならないだろう?」
確かに個人としては、そんな困る事は無い。けど。
「魔力の提供者は全部壊したいらしいけど、あたし的には今の世界がスクラップ&ビルドされるのはつまんないしさ。
あたしの果たすべき義理は魔力の充満、その為の怪異の解放だけ。その後の邪魔者を排除しろとまでは言われてないんだよね。
別に手伝えとは言わないし、ちょーっと見逃してくれるだけで互いに面倒増やさず済むんだよ?」
否定の言葉が見つからない、そもそも否定する理由があるのか。そんな考えに迷い込んだところに、ロロの呼びかけで我に返る。
浮ついた思考が一度落ち着いてしまえば、敵対か甘言か、返答は明白だった。
「…そもそもお前を信用できない。そうやって正体を隠しての交渉なんて。
俺からすれば、お前は奔放な危険要因だ。」
「いいねぇそういう初々しい正義感。
けど、乗ってくれないならおさらばしとくよ。もう用事は済んだし。」
「待て!」
そう言い、去ろうとする土人形を反射的に追おうとする。もしかしたら、まだ情報を引き出せるかもしれない。
けど、やってくる第三者の音。割り込んだ巨体が、行く手を阻んだ。
幸い、反応の進行方向はこちらとすれ違う形。取り逃す事は無さそうだ。
待ち伏せの手もあったが、その考えに至った時には既にロロが接触していた。
木々の隙間から見える、動く何か。土の塊だろうか。
近寄るにつれ、全容が見えてくる。自分より少し背の高い、人の形だ。
この間戦った奴の操る葉人形を思い起こさせられる。噛み付いたロロを振り払う所作も、人間の動きそのものだ。
ロロに気を取られていた土人形だが、こちらにも気が付いた。
「へぇ、ついに見つかっちゃったか。」
思考に直接、思念が響葉として響く。発信源はこの土人形だろう。
「どういうことだ?」
「いや、いくらあたしが隠密行動だからといってさ、誰にも気付かれなさすぎると、それはそれでなんか怖くなってくる心理ってあるじゃん?
だからよかったよ、こうして見つけてくれてさ。」
確かにこうして目の前にしても、魔力探知の方ではかすかに感じ取れる程度の存在感。
って、問題はそこじゃない。
「お前は誰だ?」
「んー、あえて言うなら黒幕の手先、ってとこかな?」
意外にも素直な答えが、無骨な造形の操り人形と似合わないひょうきんなそぶりと共に返ってくる。
「じゃあ、最近の怪異異常の原因はお前か?」
「かもね。だとしたらどうするつもり?」
否定の言葉は無い、なら。
「お前を止める。」
「だよねー、そう来ると思った。
けどさ、考えて見なよ。こうして古い妖怪とか解放して、あんたらがそれを倒して、この辺の魔力が高まってるわけじゃん?」
地域的な妖力が高まってるとはソウクロウからも聞いてた話。
それ自体が狙い。ゴーストファインダーや、こうした実地活動は、あくまでその手段という事か?
「このまま魔力に溢れて、あんたが困る事ある?
その内ああいう妖怪共は、街中まで活動を広げ、その存在は一般に認識される。
で、そういう幻想じみたもんが一般常識になれば、魔術だの妖術だのもわざわざ隠す必要も薄くなる。
あたしら的に表立って魔術使えるの、便利じゃね?」
それは、ちょっとだけ同意してしまった。
持続力を上げる為に普段から人狼姿を纏って慣らしていて、今や逆に普段の状態に不便さを感じ始めている。
それを日常的に活用できるようになったとしたら、それは便利だろう。
「…その為なら、無関係な所に被害が出てもいいと?」
「それは君が堂々と戦って守ればいいじゃない。
好きだから今もやってるんだろ? そういうヒーロー的な活動をさ。
それに、どうせ君自身は自衛できるんだし、大した問題にはならないだろう?」
確かに個人としては、そんな困る事は無い。けど。
「魔力の提供者は全部壊したいらしいけど、あたし的には今の世界がスクラップ&ビルドされるのはつまんないしさ。
あたしの果たすべき義理は魔力の充満、その為の怪異の解放だけ。その後の邪魔者を排除しろとまでは言われてないんだよね。
別に手伝えとは言わないし、ちょーっと見逃してくれるだけで互いに面倒増やさず済むんだよ?」
否定の言葉が見つからない、そもそも否定する理由があるのか。そんな考えに迷い込んだところに、ロロの呼びかけで我に返る。
浮ついた思考が一度落ち着いてしまえば、敵対か甘言か、返答は明白だった。
「…そもそもお前を信用できない。そうやって正体を隠しての交渉なんて。
俺からすれば、お前は奔放な危険要因だ。」
「いいねぇそういう初々しい正義感。
けど、乗ってくれないならおさらばしとくよ。もう用事は済んだし。」
「待て!」
そう言い、去ろうとする土人形を反射的に追おうとする。もしかしたら、まだ情報を引き出せるかもしれない。
けど、やってくる第三者の音。割り込んだ巨体が、行く手を阻んだ。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる