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193話 トリック・オア・トリート④
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去ろうとする土人形を反射的に追う。もしかしたら、まだ情報を引き出せるかもしれない。
けど、やってくる第三者の音。割り込んだ巨体が、行く手を阻んだ。
「…時間稼ぎだったか!」
「いや、勧誘はマジだよ? こっち側に鞍替えしてくれりゃ楽なのも本当だし。
でも結果的に時間稼げてご到着だ。」
乱入者の巨躯に阻まれた向こう側で、魔力反応が霧散する。操作状態を解いたのだろう。
気になってしまう、さっきの話。
こういう怪異を倒す事で、あるいは戦う事そのものによって、魔力の活性化が進んでいる?
いや、今はまず自分の心配だ。事前に見ておいた資料の記憶から、情報を探る。
小さな祠に祀られていた古い土地神の猪、あるいは地鳴りを錯覚させる怪異。前者が悪神化して後者になったと推測される、と注釈があった。
距離を取る事で見えた全貌は、確かに黒い霧のような模様のある大猪だった。
並行して進める戦闘準備。
術の更新要素、ハルルからのアドバイス。こういうのには名前があると、明確に術を意識しやすく、速度も精度も上がる。
「憑装召喚:人狼」。人狼の姿を纏い、聴力と魔力探知が大幅に上がる。
同時に生成したハルバードを、丁度方向転換を終えた大猪の頭に振り下ろす。
高さで見て3m近くある狙い所、でも今なら届く。なんならさらに上を取って、落下の威力も乗せる!
だけど返ってきたのは岩でも殴りつけたかのような衝撃。飛びのき、様子をうかがう。
刃を思いっきり叩きつけたはずの場所は、ほとんど外傷が見られない。僅かな痕跡も、すぐに分からなくなるくらいに治る。
そして都合、大猪は標的である俺の方を向いている。その回避に専念。
本体のみならず、倒木により実質的な攻撃範囲はかなりの広さ。直感任せに走り、倒れ込むまでの時間で範囲外まで退避する。
そして咄嗟に、程よい太さの木の裏へと隠れる。
どうにか弱点を探す? それとも撤退する? ともあれさくっとスマホから救援要請。
問題はこの状況をどうするか。ロロが吠えてはいるが、さっきので完全に「敵」を見定めたのだろう、関心を示していない。
倒木の音に紛れたから隠れられたものの、ここから移動しようにも土を踏む音で居場所がバレるだろう。
余計に魔力を消費する訳にはいかない、と憑装を解く。
人狼の聴覚に慣れると、並の人間程度の聴覚は暗所に居るよう錯覚すらある。
余計な事を気にする余裕は無い。できる限りの状況把握に集中する。
…何分経っただろう。
ロロの足音と吠え声で情報量がさらに減る。
ただ、探り探りだが確実にこっちに寄ってきてる。居場所がバレるのも時間の問題。
あとは救援に全任せできれば楽だったが、この際仕方ない。
手遅れになる前に、と再び人狼姿を纏い、大猪と相対する。
やはりというか、大猪の突進は小回りが利いていない。最高速こそ速いが、加速・減速・方向転換の過程にかかる時間は、次に備える猶予として十分すぎる。
最初数度の回避こそ集中力を極端に割いた。けど、すれ違うように逐一距離を置けば難しくはない。
問題はこの状況をどれくらい維持できるか。合間合間で隠れる隙は探しているが、流石にそこまでの余裕は与えてくれない。
最悪持久戦、俺の魔力切れが先か、救援の到着が先か。とことんまで付き合ってやる。
しかし、そう覚悟した次の突撃は、こちらまで届かなかった。
突然の横滑り、派手に宙を舞った巨躯はしかし勢い緩まず、脇腹で地面を滑る。
呆気に取られてるうちに、地面から生える透明な…いや違う、薄く地面を地面を這っていた水が、立体的な形を取る。
それはすぐに氷の大弓となり、大猪を腹部から矢が貫いた。
けど、やってくる第三者の音。割り込んだ巨体が、行く手を阻んだ。
「…時間稼ぎだったか!」
「いや、勧誘はマジだよ? こっち側に鞍替えしてくれりゃ楽なのも本当だし。
でも結果的に時間稼げてご到着だ。」
乱入者の巨躯に阻まれた向こう側で、魔力反応が霧散する。操作状態を解いたのだろう。
気になってしまう、さっきの話。
こういう怪異を倒す事で、あるいは戦う事そのものによって、魔力の活性化が進んでいる?
いや、今はまず自分の心配だ。事前に見ておいた資料の記憶から、情報を探る。
小さな祠に祀られていた古い土地神の猪、あるいは地鳴りを錯覚させる怪異。前者が悪神化して後者になったと推測される、と注釈があった。
距離を取る事で見えた全貌は、確かに黒い霧のような模様のある大猪だった。
並行して進める戦闘準備。
術の更新要素、ハルルからのアドバイス。こういうのには名前があると、明確に術を意識しやすく、速度も精度も上がる。
「憑装召喚:人狼」。人狼の姿を纏い、聴力と魔力探知が大幅に上がる。
同時に生成したハルバードを、丁度方向転換を終えた大猪の頭に振り下ろす。
高さで見て3m近くある狙い所、でも今なら届く。なんならさらに上を取って、落下の威力も乗せる!
だけど返ってきたのは岩でも殴りつけたかのような衝撃。飛びのき、様子をうかがう。
刃を思いっきり叩きつけたはずの場所は、ほとんど外傷が見られない。僅かな痕跡も、すぐに分からなくなるくらいに治る。
そして都合、大猪は標的である俺の方を向いている。その回避に専念。
本体のみならず、倒木により実質的な攻撃範囲はかなりの広さ。直感任せに走り、倒れ込むまでの時間で範囲外まで退避する。
そして咄嗟に、程よい太さの木の裏へと隠れる。
どうにか弱点を探す? それとも撤退する? ともあれさくっとスマホから救援要請。
問題はこの状況をどうするか。ロロが吠えてはいるが、さっきので完全に「敵」を見定めたのだろう、関心を示していない。
倒木の音に紛れたから隠れられたものの、ここから移動しようにも土を踏む音で居場所がバレるだろう。
余計に魔力を消費する訳にはいかない、と憑装を解く。
人狼の聴覚に慣れると、並の人間程度の聴覚は暗所に居るよう錯覚すらある。
余計な事を気にする余裕は無い。できる限りの状況把握に集中する。
…何分経っただろう。
ロロの足音と吠え声で情報量がさらに減る。
ただ、探り探りだが確実にこっちに寄ってきてる。居場所がバレるのも時間の問題。
あとは救援に全任せできれば楽だったが、この際仕方ない。
手遅れになる前に、と再び人狼姿を纏い、大猪と相対する。
やはりというか、大猪の突進は小回りが利いていない。最高速こそ速いが、加速・減速・方向転換の過程にかかる時間は、次に備える猶予として十分すぎる。
最初数度の回避こそ集中力を極端に割いた。けど、すれ違うように逐一距離を置けば難しくはない。
問題はこの状況をどれくらい維持できるか。合間合間で隠れる隙は探しているが、流石にそこまでの余裕は与えてくれない。
最悪持久戦、俺の魔力切れが先か、救援の到着が先か。とことんまで付き合ってやる。
しかし、そう覚悟した次の突撃は、こちらまで届かなかった。
突然の横滑り、派手に宙を舞った巨躯はしかし勢い緩まず、脇腹で地面を滑る。
呆気に取られてるうちに、地面から生える透明な…いや違う、薄く地面を地面を這っていた水が、立体的な形を取る。
それはすぐに氷の大弓となり、大猪を腹部から矢が貫いた。
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