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レミレニア編
96話 事のコスト③
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拘束するのも悪いしとラディを帰らせ、気付けば日が沈み。
またしても階段を上ってくる足音が。なんとも慌ただしい夜だ。
「よっ、元気してるか?」
予想外の来客枠、コンジュさんだ。
「まぁ、どちらかといえば。」
「なら腹も減っただろう。飯、持ってきてやったぞ。」
状況に思考が追い付かず、不意に出た質問はシンプルなものだった。
「何でコンジュさんが?」
「ま、ついでの用もあったからな。どうせだから担当引き受けてきた。」
「…それって『ついで』の方が本命なやつ、ですよね?」
片手で食べれるサンドイッチやカップケーキがサイドテーブルに置かれる。が、食べれるのはもう少し後になりそうだ。
「まぁまぁ。
こう言うのもアレだが、片腕無くなったって聞いて、丁度都合が良くてだな。
ちょっと手を貸してほしいんだ。」
コンジュさんが何の専門家なのかは未だ分からないが、前に薬学絡みの話をしてたのを思い出す。
「片方しかない手でいいなら、次第によっては貸しますよ。
なんか怪しい実験とか?」
「まぁ、実験といえば実験、にはなるのかな?
これの動作確認がしたくてね。」
そう言い取り出した輪を、くるくると指先で回して弄ぶ。
「それは?」
「『現出の輪』、と開発内では呼んでいる。
内蔵した魔石をエネルギー源として魔力を疑似物質化させ、名前の通り実体として現出させる術が刻まれている。」
「それを何で僕に?」
「既に何例か動作実験はしたんだけど、どーにもイメージの維持に難点があって、不安定なんだ。
例えば、普段使ってた剣。その形状や質感を、思考の中で完全に再現できる?」
そう言い、脇に置かれた剣に目配せ。綺麗に真ん中で二つに折れている。
「まぁ、ある程度は。」
「曖昧じゃなく完全に、形状は当然、重さや硬さ、柄の巻き布の細かいディティールまで。
そのイメージを、維持し続ける事ができる?」
そこまで言われると、さすがに自信が無くなってきた。
「どんなに身近な物品でも、現出の維持に足るイメージはできなかった。僅かにイメージが揺らぎ、本来の働きはしなかった。
けど、もしその『イメージする物』が身体の一部だったら?」
「…もしかして……。」
察した通りの答えが、ディエルさんから発せられる。
「こいつを義手として使ってみてほしい。使用感さえ聞かせてくれれば貸出期間は決めないから、自分の物と思って使ってくれれ構わない。
どう? 悪い話じゃないんじゃない?」
考えるまでもない。
少しでも縋れるものがあるというのなら……。
「やらせてください。」
「おーけー、いい即答だ。
ただし、最低限動かせる確認だけさせてもらうね。『全く動きません』じゃ、流石に話にならないし。」
そう言い腕輪として左に装着させられる。
輪を通した魔力が光の粒子となり、少しずつ形になっていく。数秒もすれば、明確な輪郭が出来上がった。
「驚いた。切りたてほやほやだと、こうもスムーズにイメージできるとは。」
「…もうちょっと言い方というものをですね……。」
そのまま意識して左腕をイメージしてみる。輝きが収まり、本物と見分けがつかない左腕が出来上がった
「どう? 今のところの感想は。」
「うーんなんか…違和感?
振れば水中みたいな抵抗がかかるし、物に触っても厚い手袋越しみたいな感触で。」
「なるほど…外見上は十分のようではある、が、内部的なクオリティ不足か……。
イメージクオリティ自体は過去に例の無い程の高さ、としたら魔石の質の問題? こんな事ならシントからもっと──」
続く独り言の途中で、ふっと話が戻ってくる。
「とりあえず、少し質に関して検討してみるね。代えの魔石は一応当てはあるし。」
「ありがとうございます、そんな事までわざわざ。」
「こっちだってデータ欲しいからね、妥協はしたくないんだよ。
ただ、まだ試験中の物だから、絶対にではないけどなるべく内密にね。」
またしても階段を上ってくる足音が。なんとも慌ただしい夜だ。
「よっ、元気してるか?」
予想外の来客枠、コンジュさんだ。
「まぁ、どちらかといえば。」
「なら腹も減っただろう。飯、持ってきてやったぞ。」
状況に思考が追い付かず、不意に出た質問はシンプルなものだった。
「何でコンジュさんが?」
「ま、ついでの用もあったからな。どうせだから担当引き受けてきた。」
「…それって『ついで』の方が本命なやつ、ですよね?」
片手で食べれるサンドイッチやカップケーキがサイドテーブルに置かれる。が、食べれるのはもう少し後になりそうだ。
「まぁまぁ。
こう言うのもアレだが、片腕無くなったって聞いて、丁度都合が良くてだな。
ちょっと手を貸してほしいんだ。」
コンジュさんが何の専門家なのかは未だ分からないが、前に薬学絡みの話をしてたのを思い出す。
「片方しかない手でいいなら、次第によっては貸しますよ。
なんか怪しい実験とか?」
「まぁ、実験といえば実験、にはなるのかな?
これの動作確認がしたくてね。」
そう言い取り出した輪を、くるくると指先で回して弄ぶ。
「それは?」
「『現出の輪』、と開発内では呼んでいる。
内蔵した魔石をエネルギー源として魔力を疑似物質化させ、名前の通り実体として現出させる術が刻まれている。」
「それを何で僕に?」
「既に何例か動作実験はしたんだけど、どーにもイメージの維持に難点があって、不安定なんだ。
例えば、普段使ってた剣。その形状や質感を、思考の中で完全に再現できる?」
そう言い、脇に置かれた剣に目配せ。綺麗に真ん中で二つに折れている。
「まぁ、ある程度は。」
「曖昧じゃなく完全に、形状は当然、重さや硬さ、柄の巻き布の細かいディティールまで。
そのイメージを、維持し続ける事ができる?」
そこまで言われると、さすがに自信が無くなってきた。
「どんなに身近な物品でも、現出の維持に足るイメージはできなかった。僅かにイメージが揺らぎ、本来の働きはしなかった。
けど、もしその『イメージする物』が身体の一部だったら?」
「…もしかして……。」
察した通りの答えが、ディエルさんから発せられる。
「こいつを義手として使ってみてほしい。使用感さえ聞かせてくれれば貸出期間は決めないから、自分の物と思って使ってくれれ構わない。
どう? 悪い話じゃないんじゃない?」
考えるまでもない。
少しでも縋れるものがあるというのなら……。
「やらせてください。」
「おーけー、いい即答だ。
ただし、最低限動かせる確認だけさせてもらうね。『全く動きません』じゃ、流石に話にならないし。」
そう言い腕輪として左に装着させられる。
輪を通した魔力が光の粒子となり、少しずつ形になっていく。数秒もすれば、明確な輪郭が出来上がった。
「驚いた。切りたてほやほやだと、こうもスムーズにイメージできるとは。」
「…もうちょっと言い方というものをですね……。」
そのまま意識して左腕をイメージしてみる。輝きが収まり、本物と見分けがつかない左腕が出来上がった
「どう? 今のところの感想は。」
「うーんなんか…違和感?
振れば水中みたいな抵抗がかかるし、物に触っても厚い手袋越しみたいな感触で。」
「なるほど…外見上は十分のようではある、が、内部的なクオリティ不足か……。
イメージクオリティ自体は過去に例の無い程の高さ、としたら魔石の質の問題? こんな事ならシントからもっと──」
続く独り言の途中で、ふっと話が戻ってくる。
「とりあえず、少し質に関して検討してみるね。代えの魔石は一応当てはあるし。」
「ありがとうございます、そんな事までわざわざ。」
「こっちだってデータ欲しいからね、妥協はしたくないんだよ。
ただ、まだ試験中の物だから、絶対にではないけどなるべく内密にね。」
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