103 / 228
レミレニア編
103話 新天地への旅路②
しおりを挟む
空の景色は、見て飽きなかった。
街なんてすぐに北端を過ぎ、森に入り。
かと思えば角塔が横たわる平地に到着し。
空から見て改めて思う、「横たわる角塔」の広さ。
囲う森の向こう端が遠い。以前見た地図と想像で合わせると、レミレニアの半分ほどの面積になるだろう。この1ヶ月程で探索した街の範囲よりも、よっぽど広い。
これだけの冒険の余地を去るのは名残り惜しいが、一旦シントに行くだけだ、用が済んだらまた戻ってこれる、と割り切る事にする。
再び森に突入し、川沿いに進んでいき。
やがて平地に出て、地表に残っている道を頼りに滑空していく。
「問題など、起きてはおらぬか?」
ラディのものでも、エンのものでもない声。
音というよりは、思考に直に響くような声。
そういう「魔力の声」の事は、話に聞いた事があった。
「もしかしてディエル…さん?」
「大事無くば、ここまでの調子で進もう。
それと、敬称など要らぬ。その腕の事の原因ぞ。」
「悪意があったならともかく、別に状況が状況だった訳だし。
むしろこんな籠引きをさせて、悪いと思ってるくらいだよ。」
「それは一向に構わぬ。私はエンの所有物だからな。」
「『所有物』? それってどういう?」
「また勘違いされそうな言い方を……。」
そうエンが言いため息ひとつ。2人にとっては毎度の事なのだろう、と察しが付く。
「いまさらだけど、どういう関係なのか、興味はあります。」
ラディの質問に、エンが答える。
「私は山の集落出身でね、そこで出会ったのがディエルだった。
ディエルがふらっと近場にやってきて、ちょっとした騒ぎになったの。」
「定まりの地を求めたどり着いたのが、その集落の付近でだな。だが集落の者に危険とみなされ、討伐の対象とされ。
当時は力が全てと思っていてな。慢心して場所を勝ち得ようとしたが、数に押され虚を突かれ、逃走し隠れるのが精いっぱいだった。」
話を継いだディエルに、ラディからの問い。
「…勝てなかったのです?」
「無論、全力ならば一掃するのは容易かっただろう。だが、その地の一部を使いたかっただけだ。滅ぼす利より、不利益が大きい。
だが圧倒するつもりで挑み、思惑は外れ、無様な結果だ。尊厳は砕け散り、私は自身の価値を見失っていた。」
「そこで出会ったのがエンさん、と?」
「あぁ。子細は省くが、内輪の問題との事だった。
エンは私に価値と必要性を見出した。無為な時間を過ごすよりはまだ価値がある、と私は話に乗った。
その時から私はエンの物として過ごす、そう決めた。」
今やそんな浅い関係ではない事は、見て明らか。
それでもそれを形式上の立ち位置とするのが、彼女なりのスタンスなのだろう。
「そんなに強さがだいじ、なのです?」
「竜と人とでは、本能的な価値観が違うと聞く。
理解は強要できぬ。そういうものと思えばよい。」
「…なる、ほど。」
街なんてすぐに北端を過ぎ、森に入り。
かと思えば角塔が横たわる平地に到着し。
空から見て改めて思う、「横たわる角塔」の広さ。
囲う森の向こう端が遠い。以前見た地図と想像で合わせると、レミレニアの半分ほどの面積になるだろう。この1ヶ月程で探索した街の範囲よりも、よっぽど広い。
これだけの冒険の余地を去るのは名残り惜しいが、一旦シントに行くだけだ、用が済んだらまた戻ってこれる、と割り切る事にする。
再び森に突入し、川沿いに進んでいき。
やがて平地に出て、地表に残っている道を頼りに滑空していく。
「問題など、起きてはおらぬか?」
ラディのものでも、エンのものでもない声。
音というよりは、思考に直に響くような声。
そういう「魔力の声」の事は、話に聞いた事があった。
「もしかしてディエル…さん?」
「大事無くば、ここまでの調子で進もう。
それと、敬称など要らぬ。その腕の事の原因ぞ。」
「悪意があったならともかく、別に状況が状況だった訳だし。
むしろこんな籠引きをさせて、悪いと思ってるくらいだよ。」
「それは一向に構わぬ。私はエンの所有物だからな。」
「『所有物』? それってどういう?」
「また勘違いされそうな言い方を……。」
そうエンが言いため息ひとつ。2人にとっては毎度の事なのだろう、と察しが付く。
「いまさらだけど、どういう関係なのか、興味はあります。」
ラディの質問に、エンが答える。
「私は山の集落出身でね、そこで出会ったのがディエルだった。
ディエルがふらっと近場にやってきて、ちょっとした騒ぎになったの。」
「定まりの地を求めたどり着いたのが、その集落の付近でだな。だが集落の者に危険とみなされ、討伐の対象とされ。
当時は力が全てと思っていてな。慢心して場所を勝ち得ようとしたが、数に押され虚を突かれ、逃走し隠れるのが精いっぱいだった。」
話を継いだディエルに、ラディからの問い。
「…勝てなかったのです?」
「無論、全力ならば一掃するのは容易かっただろう。だが、その地の一部を使いたかっただけだ。滅ぼす利より、不利益が大きい。
だが圧倒するつもりで挑み、思惑は外れ、無様な結果だ。尊厳は砕け散り、私は自身の価値を見失っていた。」
「そこで出会ったのがエンさん、と?」
「あぁ。子細は省くが、内輪の問題との事だった。
エンは私に価値と必要性を見出した。無為な時間を過ごすよりはまだ価値がある、と私は話に乗った。
その時から私はエンの物として過ごす、そう決めた。」
今やそんな浅い関係ではない事は、見て明らか。
それでもそれを形式上の立ち位置とするのが、彼女なりのスタンスなのだろう。
「そんなに強さがだいじ、なのです?」
「竜と人とでは、本能的な価値観が違うと聞く。
理解は強要できぬ。そういうものと思えばよい。」
「…なる、ほど。」
0
あなたにおすすめの小説
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
過労死した俺、異世界で最強農業チートに目覚める。神農具で荒野を楽園に変えたら、エルフや獣人が集まって最高の国ができました
黒崎隼人
ファンタジー
「君、死んじゃったから、異世界で国、作らない?」
ブラック企業で過労死した俺、相川大地。
女神様から授かったのは、一振りで大地を耕し、一瞬で作物を育てる**最強の『神農具』**だった!?
右も左もわからない荒野でのサバイバル。
だけど、腹ペコのエルフ美少女を助け、頼れるドワーフ、元気な猫耳娘、モフモフ神狼が仲間になって、開拓生活は一気に賑やかに!
美味しいご飯とチート農具で、荒野はあっという間に**「奇跡の村」**へ。
これは、ただの農民志望だった俺が、最高の仲間たちと世界を救い、種族の壁を越えた理想の国『アグリトピア』を築き上げる物語。
農業は、世界を救う! さあ、今日も元気に、畑、耕しますか!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる