真水のスライム

ふぃる

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シント編

221話 洪水③

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 改めてコンジュの方に向き直る。
 凍ったフラッディの核は、エンが「やるだけやってみる」との事だった。
 自分にできる事の範疇なんて超えてるだろうし、任せるしかない。


「へぇ、やるじゃん。」
 せり上がった土の台座、その上でコンジュは流れ去る水から退避していた。
 あちらから動く様子は無いまま、言葉を続ける。
「フラッディの試運転できればいいや程度にしか考えてなかったけど、そっちはそっちで面白い事になってんのな。
 安定して飛べる翼作れるなんて、人類の夢みたいなもんじゃんね。
 どう? 使い心地は。」
「…確かに元々『試して感想を』って話だったけど、こんな状況にされておいて言うとでも?」
「…ま、回収してログ見りゃいっか。」

 一気に溢れる殺気、土がトゲ状に隆起して襲ってくる。
 下がり回避しながら武器を変更。備えていた青紋刃の短剣を抜き右に、左の長剣の形を変え短剣に。
 トゲ土が枝分かれし、範囲を増しながら迫ってくる。
 それを短剣で受け自分の軌道を変える事で、回避しながら旋回し方向をコンジュの方へ。
 だが相手の手数があまりにも多い。下方から放たれた土玉に不意を突かれ、崩れた所にトゲ土の追撃。
 そうして向かわされた先は、土の縄で作られた網だった。

「…何故止めを刺さない?」
 網は拘束具となり、簡単には解けそうにない。
 そのまま話すのに丁度いいところまで、連れていかれる。
「いやぁ、『現出の輪』の応用をここまで進化させた逸材だしさ、このまま処理しちゃうのは勿体ないなって。
 だからどう? 改めて、本格的に実験協力してくれない?」
「…ミツキも、そうやって仲間に引き入れたのか?」
「うーん、あれは仲間っていうよりは、何でも言う事聞く素直な子でねぇ。サーキテロアの二層計画にもほいほい乗っかるし、単純っていうか、無垢っていうか。」
「…二層計画?」
 初耳の言葉を、反射的に返す。
「ほら、シントって『裏』があるじゃん? あれもまたシントの一部なんだよ、その二層計画ってやつの。」
 信用を取ろうとしてきている? それともただの語りたがりか?
「英傑なんて言っても、事件が無きゃただのお飾りじゃん。だからその『敵』を作ろうってのが二層計画ってやつ。敵も味方もみーんな養殖。
 面白いよねぇ歪んでて。そうとも知らず正義を執行する英傑も、それに夢中になる一般人どもも。」
 …嘘を言っている様子は無い。ただただ心の底からそれを楽しんでいて、しかも共感まで求めてきやがる。
 シント歴は浅いけど、街にとっての英傑の在り方は見てきたし、自分のあこがれに似通ったものも感じ共感していた。
 身近にあって自分らを守ってくれる英傑像、それらに対する憧れ、熱狂。
 それが全部──
「どう? こんな所で終わるよりさ、それを知った上で一緒にシントの街を見てみない?
 きっと楽しいよー、見え方が変わってさ。」
「…誰がそんな悪趣味な事…っ!」

 語りに夢中で少し緩んでいた拘束を、身を捻り解く。
 すぐに宙を蹴り、短剣を構える。
「それが答えか…残念だよ。
 じゃ、これまで実験協力ありがと。」
 だがその向かう先に、先置きの土のトゲ。
 切り返し回避…はしたが、既にコンジュの次の手。
 土で模られた巨大なゴツゴツした腕、それに握られているこれまた巨大な槍。
 その一振りが、迫ってくる。


 回避できない、そう思った時。
 横から来た冷たいものに流され、抱えられ。
 土を避け空中に足場を作ったそれは、見慣れた姿を模った。
「ごめんなさい、寝ぼけてたみたいです。」
「…寝ないお前が言うか。」
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