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15. 天使は協力者を欲してます
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「「「・・・・」」」
エーリック殿下だけでなく、まさかのセドリック様にも判ったとは。
「シュゼットが5人目の婚約者候補なんでしょ? 違う?」
まあ、誤魔化してもバレるのは時間の問題だし、婚約者になりたいわけでもありませんからね。寧むしろならずに済む為には味方も欲しいです。
(一か八か、この二人に賭けてみるか?)
ざっくり言ってしまえば、所詮この方たちはいずれ隣国に帰るし? 身分と能力は申し分ありませんし? 権力もあるし? ……使えると思いませんか?
「ええ。そうなのです……実は、今朝聞かされましたの……」
視線を膝の上に置いた手に移し、決心したように(ここ重要! )二人を見詰めます。ウルウルの涙目になっているはずです。
「「・・・!」」
エーリック殿下とセドリック様が息を飲むのが判りました。
「君は……嫌なの? 婚約者候補になるの。相手はコレールの第一王子だよ?」
エーリック殿下は、静かに問われます。普通貴族の娘であれば、大喜びで婚約者になれるようにアプローチするでしょう。でも、私にはそんな気持ちは全く無いのです。寧ろ大・大・大迷惑です。
「シュゼット・メレリア・グリーンフィールド! お前は婚約者になってしまうのか!? どうなのだ? ええっ? 婚約者になりたいのか? なりたくないのか? はっきりしろ! どっちなのだ!?」
「なりたくないですわ!!」
あー……つい、セドリック様の煩さに釣られてしまいました。でも本当の事ですから。
「シュゼット。君は貴族の娘の結婚が、どんなことか知っているよね? 残念ながら本人の気持ちよりも、家や国の思惑が大きいって。君が婚約者候補になるのだって、意味があることだよね? それを知ってもそう思うの?」
「判っています……わ。でも!」
「うん。帰国していきなりそう言われたら、混乱するよね? フェリックス殿とも5年振り? 以前とは環境も変わったから、馴染むには時間が掛かるかもしれないけど、シュゼットなら大丈夫だよ」
イヤイヤ! 大丈夫っていうのが困るんです! 王族の考え方は筋が通っていて、全くもってごもっともですけれど。
「シュゼット・メレリア・グリーンフィールド。お前を5番目とするとは流石陛下だ。お目が高いではないか! 何と言っても他の候補者と比べれば容姿も能力も雲泥の差だからな! さすが僕が認めたライバルだ!! ……って、あっ、あれっ?」
セドリック様は、もう褒めているのか何だか判らないわ。お二人とも薦めているのかしら?
失敗したか?
と、思った時です。
「セドリック? お前……泣いているのか?」
大粒の涙が、セドリック様の頬を伝っています。貴方、言っていることと行動が変ですわ。今ここで泣くなんて意味が判りません。
泣いているセドリック様の元にハンカチを持って近づくと、少し腰を落として見上げ、彼の涙をハンカチで押さえてあげます。
(セドリック様が泣くなんて、初めて見ましたわ)
この涙って、ナニカシラ? 同情されている?
でも、ありがとうございます。コレ、イタダキマス。
「セドリック様……もしかして、私の代わりに・泣いて下さっているのですか? 涙すら零せない私の代わりに……」
「そ、そんなっ! ことはっ……」
「ありがとうございます。セドリック様。私の我が儘でセドリック様を悲しませて、ごめんなさい。お友達を悲しい気持ちにさせてしまうなんて……」
「お嬢様!」
セドリック様の傍で膝をついて蹲うずくまった私に、マリが駆け寄ってきました。
さて、『令嬢と侍女Ⅱ』 発動ですわ。
「シュゼットお嬢様、こんな事になるなんて、なんてお労いたわしい……」
私を抱きしめるマリの声も、少し震えて涙ぐんでいるようです。
「どうして? なぜそう思うの?」
さすがエーリック殿下です。マリの呟きを聞き逃しませんでしたわ。
「いいよ? ここには私達しかいないから。気にしなくていい。話して?」
「ご、ご無礼では……」
隣国にいるときから、マリは私付ですからエーリック殿下もお近くで見ていますし、殿下もマリが私の大事な侍女であることをご存じです。
でも、直接言葉を交わすことは、今まで一度もありませんでした。
「構わないから。教えて」
マリは私を抱きしめたまま、エーリック殿下に頭を垂れて言いました。
「シュゼットお嬢様は、5年前にフェリックス殿下から大変酷い仕打ちを受けたのです」
「酷い仕打ち? 5年前というとコレールにいる時にか? それで……どんなことを?」
おう! ぐいぐい来ますわね?
「それは、お嬢様の名誉の為にもご勘弁くださいませ。でも……
お嬢様は1週間も床に伏し、食事も喉を通らず痩せてしまわれました。そして体調が整うまで、テレジア学院への入学が半年も遅れてしまいました」
マリ。流石ですわね。何一つ嘘は言っていませんし、言い方がうまいですわ。
私はそっと立ち上がると、自分の席に戻ります。セドリック様は名残惜しそうに私を見詰め小さな声で、
「ハンカチは後で返してやる!」
と。……やっぱり、上から目線ですわ。
「そう。フェリックス殿下に酷い事をされたと。シュゼット、君は今でもそれが許せないの?」
許せないというより、単純に仕返しがしたいのですわ。多感な乙女を傷つけた張本人と笑った奴らにです。それが私の活力の源でしたから。
でもね、それはエーリック殿下には言えませんよね。
「心がギューッとなるのです(怒りで)。フェリックス殿下のことを思うと、あの時の思いが蘇ってしまいそうで(蹴りの三発も入れたいわ)……それなのに、婚約者候補なんて(冗談じゃないつーの)。お父様も驚いていました。あんな事があったのにって」
「お父上もご存じの事なのか? それ程のことが……」
淡々と話します。何度も言いますが、嘘は言っていません。言いたくないことは言わないだけで、ちゃんと本当の事を言っています。
「シュゼットは、候補者から婚約者にならなくて良いの?」
エーリック殿下が、真剣な表情で見詰めてきます。
「はい。ならなくていいです」
小さな声で答えます。
「本当に?」
「はい。なりたくないです」
強い意志を滲ませて、はっきりと伝えました。
ふっと溜息を漏らして、エーリック殿下が私の右手を取りました。そして、キュッと握り締めると、
「判った。大事な友人である君の力になろう。君が婚約者に選ばれることが無い様に協力しよう」
そう言って下さいました。優しそうな紫の瞳はやんわりと細められて、優しく私を見詰めています。
「シュゼット・メレリア・グリーンフィールド! 僕も協力しよう! 君に辛い思いも悲しい思いもさせないから、安心するがいい!!」
「セドリック……お前それ、判って言っていないな? ああ、もう良いけど」
プロポーズのような言葉ですが、やっぱり上から目線ですわ。でも、これでエーリック殿下とセドリック様の協力を頂けます。
この二人がクラスにいてくれることは、大変心強いです。
マリは、元居たベスポジの場所で立っています。そして、私と目が合うとパチリとウィンクしました。
今度から、女優と呼んであげましょう。
グリーンフィールド公爵邸を辞して、エーリックとセドリックは馬車で大使館に帰る。
二人は学院の寄宿舎ではなく、マルカイト外交大使の家族と共に官邸に住んでいるから。
本当は寄宿舎でも良いのだが、自由に行動するためには寄宿舎よりも官邸の方が都合が良いし、何よりセドリックがいるから退屈はしない。本当に退屈しない。
「エーリック殿下? 一つ伺いたいことがあります」
さっきまで、大人しく黙っていたセドリックが口を開いた。
「ん? 何だ?」
いつになく真面目な表情だ。
「殿下は、シュゼットに愛情をお感じなのですか?」
「ゴッホ! ゲッホ! ゴホッ!」
いきなりの質問は、エーリックの斜め上をいくものだった。
「お前……それを私に聞くのか? お前が?」
エーリック殿下だけでなく、まさかのセドリック様にも判ったとは。
「シュゼットが5人目の婚約者候補なんでしょ? 違う?」
まあ、誤魔化してもバレるのは時間の問題だし、婚約者になりたいわけでもありませんからね。寧むしろならずに済む為には味方も欲しいです。
(一か八か、この二人に賭けてみるか?)
ざっくり言ってしまえば、所詮この方たちはいずれ隣国に帰るし? 身分と能力は申し分ありませんし? 権力もあるし? ……使えると思いませんか?
「ええ。そうなのです……実は、今朝聞かされましたの……」
視線を膝の上に置いた手に移し、決心したように(ここ重要! )二人を見詰めます。ウルウルの涙目になっているはずです。
「「・・・!」」
エーリック殿下とセドリック様が息を飲むのが判りました。
「君は……嫌なの? 婚約者候補になるの。相手はコレールの第一王子だよ?」
エーリック殿下は、静かに問われます。普通貴族の娘であれば、大喜びで婚約者になれるようにアプローチするでしょう。でも、私にはそんな気持ちは全く無いのです。寧ろ大・大・大迷惑です。
「シュゼット・メレリア・グリーンフィールド! お前は婚約者になってしまうのか!? どうなのだ? ええっ? 婚約者になりたいのか? なりたくないのか? はっきりしろ! どっちなのだ!?」
「なりたくないですわ!!」
あー……つい、セドリック様の煩さに釣られてしまいました。でも本当の事ですから。
「シュゼット。君は貴族の娘の結婚が、どんなことか知っているよね? 残念ながら本人の気持ちよりも、家や国の思惑が大きいって。君が婚約者候補になるのだって、意味があることだよね? それを知ってもそう思うの?」
「判っています……わ。でも!」
「うん。帰国していきなりそう言われたら、混乱するよね? フェリックス殿とも5年振り? 以前とは環境も変わったから、馴染むには時間が掛かるかもしれないけど、シュゼットなら大丈夫だよ」
イヤイヤ! 大丈夫っていうのが困るんです! 王族の考え方は筋が通っていて、全くもってごもっともですけれど。
「シュゼット・メレリア・グリーンフィールド。お前を5番目とするとは流石陛下だ。お目が高いではないか! 何と言っても他の候補者と比べれば容姿も能力も雲泥の差だからな! さすが僕が認めたライバルだ!! ……って、あっ、あれっ?」
セドリック様は、もう褒めているのか何だか判らないわ。お二人とも薦めているのかしら?
失敗したか?
と、思った時です。
「セドリック? お前……泣いているのか?」
大粒の涙が、セドリック様の頬を伝っています。貴方、言っていることと行動が変ですわ。今ここで泣くなんて意味が判りません。
泣いているセドリック様の元にハンカチを持って近づくと、少し腰を落として見上げ、彼の涙をハンカチで押さえてあげます。
(セドリック様が泣くなんて、初めて見ましたわ)
この涙って、ナニカシラ? 同情されている?
でも、ありがとうございます。コレ、イタダキマス。
「セドリック様……もしかして、私の代わりに・泣いて下さっているのですか? 涙すら零せない私の代わりに……」
「そ、そんなっ! ことはっ……」
「ありがとうございます。セドリック様。私の我が儘でセドリック様を悲しませて、ごめんなさい。お友達を悲しい気持ちにさせてしまうなんて……」
「お嬢様!」
セドリック様の傍で膝をついて蹲うずくまった私に、マリが駆け寄ってきました。
さて、『令嬢と侍女Ⅱ』 発動ですわ。
「シュゼットお嬢様、こんな事になるなんて、なんてお労いたわしい……」
私を抱きしめるマリの声も、少し震えて涙ぐんでいるようです。
「どうして? なぜそう思うの?」
さすがエーリック殿下です。マリの呟きを聞き逃しませんでしたわ。
「いいよ? ここには私達しかいないから。気にしなくていい。話して?」
「ご、ご無礼では……」
隣国にいるときから、マリは私付ですからエーリック殿下もお近くで見ていますし、殿下もマリが私の大事な侍女であることをご存じです。
でも、直接言葉を交わすことは、今まで一度もありませんでした。
「構わないから。教えて」
マリは私を抱きしめたまま、エーリック殿下に頭を垂れて言いました。
「シュゼットお嬢様は、5年前にフェリックス殿下から大変酷い仕打ちを受けたのです」
「酷い仕打ち? 5年前というとコレールにいる時にか? それで……どんなことを?」
おう! ぐいぐい来ますわね?
「それは、お嬢様の名誉の為にもご勘弁くださいませ。でも……
お嬢様は1週間も床に伏し、食事も喉を通らず痩せてしまわれました。そして体調が整うまで、テレジア学院への入学が半年も遅れてしまいました」
マリ。流石ですわね。何一つ嘘は言っていませんし、言い方がうまいですわ。
私はそっと立ち上がると、自分の席に戻ります。セドリック様は名残惜しそうに私を見詰め小さな声で、
「ハンカチは後で返してやる!」
と。……やっぱり、上から目線ですわ。
「そう。フェリックス殿下に酷い事をされたと。シュゼット、君は今でもそれが許せないの?」
許せないというより、単純に仕返しがしたいのですわ。多感な乙女を傷つけた張本人と笑った奴らにです。それが私の活力の源でしたから。
でもね、それはエーリック殿下には言えませんよね。
「心がギューッとなるのです(怒りで)。フェリックス殿下のことを思うと、あの時の思いが蘇ってしまいそうで(蹴りの三発も入れたいわ)……それなのに、婚約者候補なんて(冗談じゃないつーの)。お父様も驚いていました。あんな事があったのにって」
「お父上もご存じの事なのか? それ程のことが……」
淡々と話します。何度も言いますが、嘘は言っていません。言いたくないことは言わないだけで、ちゃんと本当の事を言っています。
「シュゼットは、候補者から婚約者にならなくて良いの?」
エーリック殿下が、真剣な表情で見詰めてきます。
「はい。ならなくていいです」
小さな声で答えます。
「本当に?」
「はい。なりたくないです」
強い意志を滲ませて、はっきりと伝えました。
ふっと溜息を漏らして、エーリック殿下が私の右手を取りました。そして、キュッと握り締めると、
「判った。大事な友人である君の力になろう。君が婚約者に選ばれることが無い様に協力しよう」
そう言って下さいました。優しそうな紫の瞳はやんわりと細められて、優しく私を見詰めています。
「シュゼット・メレリア・グリーンフィールド! 僕も協力しよう! 君に辛い思いも悲しい思いもさせないから、安心するがいい!!」
「セドリック……お前それ、判って言っていないな? ああ、もう良いけど」
プロポーズのような言葉ですが、やっぱり上から目線ですわ。でも、これでエーリック殿下とセドリック様の協力を頂けます。
この二人がクラスにいてくれることは、大変心強いです。
マリは、元居たベスポジの場所で立っています。そして、私と目が合うとパチリとウィンクしました。
今度から、女優と呼んであげましょう。
グリーンフィールド公爵邸を辞して、エーリックとセドリックは馬車で大使館に帰る。
二人は学院の寄宿舎ではなく、マルカイト外交大使の家族と共に官邸に住んでいるから。
本当は寄宿舎でも良いのだが、自由に行動するためには寄宿舎よりも官邸の方が都合が良いし、何よりセドリックがいるから退屈はしない。本当に退屈しない。
「エーリック殿下? 一つ伺いたいことがあります」
さっきまで、大人しく黙っていたセドリックが口を開いた。
「ん? 何だ?」
いつになく真面目な表情だ。
「殿下は、シュゼットに愛情をお感じなのですか?」
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