【更新中】悪役令嬢は天使の皮を被ってます!! -5年前「白パンダ」と私を嗤った皆様に今度は天使の姿でリベンジします! 覚悟は宜しくて?-

薪乃めのう

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46. 鑑定式の終わりには

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 話なんて聞きません。

 ヤツは茫然と立ち竦んでいるように見えます。そうでしょう。今まで王子である自分を拒む人なんていなかったのでしょうから。
 でも、時間はあるか? と聞かれたので、無いと答えただけです。

「今日はお疲れ様でございました。パリス様とカルン様、来週の講義でお会いしましょうね? それでは、皆様、失礼致しますわ」

 にっこり微笑み、軽く腰を落としてご挨拶します。ええ。ヤツの方は一切見ませんわ。でも、双子王子様には目を合わせて頷きます。本当に可愛らしいお二人です。真っ赤になってしまわれました。
 挨拶も済みましたから、さっさとトンズラしましょう。早く帰って色々報告しなければなりませんもの。


「シュゼット! 待って!」

 おおう? 後ろからエーリック殿下ですわ。
 直ぐに追いつくと、彼は私と並んで歩き始めました。

「シュゼット。私が口出しすることでは無いのだけど……」

 言いづらそうにエーリック殿下が、口を開きます。おっしゃりたいことは想像つきますね。

「シュゼット。フェリックス殿は、君に話があると言っていたよね? もしかしてだけど、君に謝りたかったのではないの?」

 そう思いますわよね。エーリック殿下には、ヤツから酷い事をされたとしか言っていませんから。

「そうかもしれませんね。でも、時間があるかと言われたら、今日はもう疲れてしまったので……あの方とお話しするのは」

 少し、歩みを遅くして小さな声で答えました。察しの良いエーリック殿下ですから、皆まで言わなくても判って下さいました。

「まあ、確かに珍しい光の識別者だったし? いきなり魔法科学省に入省するだのって話もあったしね。でも、フェリックス殿は婚約者候補の話をして、暴走するレイシル様を止めて下さったのではないかな?」
「……」

 エーリック殿下もそう思います? やはりそういう意図があったのでしょう。

「ねえ、シュゼット。これは私が口を挟めない事だから、

 そう前置きして、彼はスルリと私の前に回り込みました。

「君はフェリックス殿と、話をした方が良いと思うよ」

 目の前に立つエーリック殿下の紫色の瞳は、真剣な輝きで私をじっと見下ろしています。

「まあ、私としては君と彼が、仲違なかたがいしたままの方が都合が良いけどね?」

 そう言うと、ふわっと微笑みました。何とも言えない優しそうな表情ですけど。

「忘れて無いよね? 私は君の事が好きなんだよ? 彼の婚約者になって欲しくない立場だからね?」

 茶目っ気たっぷりにパチリと片目を瞑ると、そっと私の右手を取りました。

「さあ、もう戻ろう。セドリックが待っているよ」

 エーリック殿下に手を取られて、私達は教室まで急いだのです。














「遅い!! 遅すぎです! 一体どんな話をしていたのですか!?」

 教室に着いて扉を開けようとした瞬間です。向こうからいきなり扉が開きました。びっくりして、エーリック殿下と私は一瞬固まってしまいました。
 そうです。セドリック様が仁王立ちで立っていました。足音で私達と判ったのでしょうか?

「エーリック殿下? それは?」

 セドリック様が、冷たい声で指差します。はて?

「ああ。これ?」

 エーリック殿下が私の右手と繫いだ手を前に持ち上げました。。

「てぃっ!!」

 セドリック様が、いきなり手刀を当てて、繋いだ私達の手を離しました。
 そして、フンッ!と鼻を鳴らすとエーリック殿下にこう言いました。

「まったく。油断も隙も無いのですから!」

 ん? これさっき聞きましたよね?
 とにかく、教室にはいつまでもいられませんから、エーリック殿下とセドリック様と馬車寄せ迄ご一緒します。因みにカテリーナ様には厳しい王太后様の門限がありますから、すでにお帰りになっています。もし、カテリーナ様がさっきのセドリック様をご覧になったら、また揶揄うことでしょうね。

 すっかり遅くなって、薄暗くなった馬車寄せにはダリナス王国の馬車と、我が家の馬車、一番手前にコレール王室の馬車がいるだけです。まだ、ヤツは帰っていないのでしょうか? 早くしないとまた会ってしまいますわね。
 我が家の馬車から、マリが直ぐに出てきました。私の顔を見るとホッとした表情になり、傍にいるエーリック殿下とセドリック様に気付いて腰を落として頭を下げます。

「それでは、エーリック殿下、セドリック様。今日はお付き合い頂き、ありがとうございました。それでは、また明日。ごきげんよう」

 お二人に促されて、馬車に乗り込みます。




 もう、今日は本当に、疲れました!



















 ガラガラと馬車は進む。
 シュゼットを見送った後、エーリック殿下と共に馬車に揺られている。
 目の前の殿下は、ずっと考え事をしているようだが、時折唇の端が微妙に上がる? 気のせいではないはず。

「殿下? 鑑定士団とのお話で何か良いことがありましたか?」

 一応、探りを入れてみる。
 気が付いた殿下が、片眉を上げてこちらを見た。

「ああ。良く判ったね? 聞きたい?」

 もったいぶった言い方に多少はイラっとしないでもないが、こういう顔の時の殿下は結構を見せてくれるのだ。

「お前に教えないということは、じゃないからな」
「そうです。フェアじゃない? ということは、シュゼットに関わることですか?」

 頷くエーリック殿下は、思い出すように目を瞑つむったが、

「少し、話がしたいのだが、時間はあるだろうか? ありませんわ」

 そう言った。

「はっ? 何ですか、ソレ?」
「フェリックス殿の意を決した問いかけに、シュゼットが間髪入れずに答えた」

 なんと。仮にも自国の第一王子で、婚約者? になりそうな相手に対して? 

「そう答えた後、直ぐに場を辞したから。フェリックス殿がどのようになったかは見ていない。まあ、私には見られたくない姿だろうから、シュゼットと一緒に出て来てしまったけどね」

 それはそうだ。要は、自分の婚約者候補に断られたということだから。でも、そんなことをして彼女は大丈夫か?

 心配顔が殿下にも判ったのだろう。

「大丈夫だと思うけどね。だって、今日は鑑定式で、彼女はグリーンフィールド公爵家初の魔法術士で、尚且つ貴重な100年振りの光の識別者だからな。色々あり過ぎでしょ? それに、レイシル様の暴走で魔法科学省に入省させられそうになったしね」

 それは……大変だった。
 えっ? レイシル様とは、あのフェリックス殿下そっくりの鑑定士団長? そう言えば、あの方は魔法科学省の議員だった。陛下の異母弟として王宮神殿の神官長も兼任されている方だ。

「そう言えば、シュゼットが言っていたけど、レイシル様から以前会ったことがあるって言われたと」
「それ、不味くありませんか? 殿下にもちょっかい出す方ですよ? ややこしくなる気配がしますが」

 そうなのだ。あのレイシル様は、貴重な識別を持つエーリック殿下が大のお気に入りのようで、事あるごとにちょっかいを出すのだ。術式の研究の手伝いとか、論文の検証とか、その他諸々口実を作って呼び出すし、来る。尤も、エーリック殿下も魔法術の研究の為に、コレールに留学に来たようなものだから断ることは無いが。

 それに、シュゼットも加わるという事か。



 ……何で。



 ……なんで……



 ……ナンで……!





「ちょっ!? セドリック! お前、まさか泣いているのか?!」


 どうして、私には魔力が無いんだ。




 じわりと目の前が滲んで見えた。
 ほんの少しでも魔力があれば、彼女と同じものが見えたかもしれないのに。
 どこにいても、彼女を近くで守れたかもしれないのに……

「泣いてなどいません! 前髪が目に入っただけです!! ああ、うっとおしい!」

 エーリック殿下は、じっと私の顔を見ていたが、ふっと溜息を漏らしていつもの笑顔になった。

「セドリック。お前、やっぱり前髪を切れ。切って、だぞ?」
「言われなくても、切るつもりです!!」



 そうだ。彼女の姿も、顔も表情も、はっきり見えたほうが良いに決まっている!



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