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第二章 死する狼のための鎮魂歌
金の林檎②
昼食時も終わりに近付き、満席だった店内に空席が目立ち始める頃、厨房で皿洗いをしていたゼノは手を止めて食堂を覗き込んだ。
食事を終えた鉱山夫達が席を立ち、次々と勘定を済ませて店を出て行く。店内に残っているのは、食後の一服を愉しむ年配客と、昨夜ゼノに一撃をくれた若い鉱山夫の二人だけだった。
閑散とした店内に、食器を重ねる軽い音がカチャカチャと響く。後片付けを任されたマリアンルージュがひとり、食堂と厨房を忙しなく行き来していた。
「ほらほら、休んでる暇があったら汚れた皿を運んできてちょうだい」
ぼんやりとゼノが食堂を眺めていると、厨房に戻ってきたヴァネッサが声高に告げた。はっとして振り向いたゼノを押し退け、ヴァネッサは手早く泡に塗れた食器を濯ぎはじめる。
濡れた手をぶら下げ、ゼノが所在無さげにしていると、厨房の入り口に置かれたカウンターテーブルの前にマリアンルージュがやって来た。絶妙なバランスで食器が積み上げられたトレイをカウンターに置き、前髪を掻き上げて一息つく。そのまま厨房に目を向けたマリアンルージュは、ゼノの視線に気がつくと、小首を傾げて言った。
「終わったの?」
どう説明したものかと、ゼノが流し台のヴァネッサに目を向けると、ヴァネッサは茶目っ気たっぷりにゼノにウインクして見せた。くすりと笑って再び食堂へ向かおうとするマリアンルージュに、ゼノは慌てて声を掛けた。
「手伝います!」
ダニエルもヴァネッサも可笑しな気を遣うものだ、などと思いつつ、ゼノは厨房をあとにした。
使用済みの食器の山をゼノが厨房へ運び、マリアがテーブルを拭いて椅子を整頓していく。散らかっていた食堂は、ふたりで手分けして片付けるうちに、あっという間に開店前の姿に戻っていった。
「おつかれさま。おばさんに報告してくるね」
食堂を見渡して満足気に頷くと、マリアンルージュはゼノに一言告げて厨房へと向かった。
ひとり食堂に残されたゼノが壁際で手持ち無沙汰に立ち尽くしていると、長いこと煙草を燻らせていた年配の男が、手招きしてゼノを呼んだ。懐から金の入った皮袋を取り出して勘定を済ませ、男は深々と頭を下げて店を出て行った。
しんと静まり返った店内に、ゼノと若い鉱山夫だけが残された。
随分前に食事を終えたにも関わらず、未だ店内に居座り続けるこの男の考えには、だいたい察しがついていた。
目的は十中八九マリアンルージュであり、大方、厨房に戻った彼女が再び現れるのを待っているのだろう。
妙な苛立ちを覚えながらゼノが男を観察していると、ちょうど顔をあげた男と目が合った。
「おい、お前」
沈黙を破り、男が席を立つ。ずかずかと歩み寄られて、ゼノは咄嗟に後退った。昨日の痛みを身体がまざまざと覚えていた。
「……何か?」
問題を起こすわけにもいかず、ゼノは平静を装って尋ねた。男は問いに答えず、無言のままゼノの顔を睨みつけてくる。
一触即発。いつ殴られてもおかしくない。
そう考えて、ゼノが静かに身構えたときだった。
「悪かったな」
唐突に、男が頭を下げた。
「あんまり威勢良く出てくるもんだから、まさか喧嘩が全く駄目だなんて思わなくてよ」
唖然として男を見上げるゼノに、ぶっきらぼうな態度で男が言った。
てっきり因縁を付けられると思っていた相手の思いがけない行動に、ゼノは困惑した。だが、素直に謝罪するその行為を無碍にする必要など何処にもない。
ゼノがぎこちなく頷きを返すと、男は顔をあげて表情を柔らげた。
「話がわかる奴で良かったぜ。俺はアランだ。よろしくな」
和解の証明のつもりなのか。アランと名乗った男は、ゼノに向かって手を差し出した。
何が「よろしく」なのか、と思いながら、ゼノが躊躇いがちに手を差し出すと、アランはその手をがっしりと両手で握った。
「いや、マジで本当に悪かったと思ってんだ。あんだけ弱いのに意を決して俺と彼女の間に入ってきた、その気持ちを考えたらよ。お前も彼女に惚れてるに決まってんのになぁ」
握った手をぶんぶん振り回しながら、アランは更に捲し立てる。
「惚れた相手の目の前で一発殴られて倒れるなんて、俺だったら恥ずかしくて二度と彼女の顔を見れねぇ。だけどお前は仕事上それを避けるわけにもいかねぇだろ? 今日の働きぶりをみて感心したよ」
褒めているのか貶しているのか、判断に困る言い草だが、本人の様子を見る限り悪気はないように思えた。おそらく天然の無神経なのだろう。
溜め息をつきたくなるのを堪え、ゼノが握られた手を引くと、アランは「おっと、すまねぇ」と笑って後ろ髪を掻いた。
「俺を殴ったことに関してはもう忘れますが、彼女に変な真似をするのはやめてくださいね」
念を押すように告げて、アランの目につかないよう、ゼノはエプロンの尻のあたりで手を拭った。
悪い人間ではないのは理解ったが、このアランと言う男はどうにも暑苦しい。
ゼノが二度目の溜め息を堪えたとき、入り口の木戸が開き、来客を知らせるベルがカランカランと軽快な音を鳴らした。
入り口を振り返ったゼノの眼に映ったのは、隊列を組んで並ぶ制服を着込んだ男達だった。人数にして三十人以上の団体のようだが、宿泊客という雰囲気ではない。何より、彼等が身に纏う制服には見覚えがあった。
「いらっしゃいませ!」
ベルの音を聞きつけて、マリアンルージュが厨房から顔を出した。入り口を塞ぐように並ぶ人の列を見て目を丸くするマリアンルージュに、先頭に立って店内を見回していた男が声を掛けた。
「この街唯一の宿というのはここで間違いないだろうか?」
輝かんばかりの金色の髪と、晴れ渡る空のように澄んだ碧い瞳を持つ秀麗な青年は、美しい外見に似合わない、どことなく不遜な口振りで尋ねた。
男の問いに小首を傾げたマリアンルージュが厨房を振り返り、顔を覗かせていたダニエルとヴァネッサが勢い良く首を縦に振るのを確認する。
「そのとおりですが、ご宿泊のお客様ですか?」
マリアンルージュがにこやかに微笑む。
男は「ふむ」と納得したように頷くと、口元に薄らと笑みを浮かべ、
「なかなかどうして、美しい娘じゃないか」
そう呟いて、マリアンルージュの頬に触れた。
男の無遠慮な行動にゼノが眼を見開くと、同時にアランが駆け出し、驚いて後退るマリアンルージュを庇うように男の前に立ちはだかった。
一瞬のことでわからなかったが、どうやらアランはマリアンルージュの頬に触れた男の手を払い除けたらしい。男は手の甲を摩りながら、不快感を露わにアランを一瞥した。
「汚い手で触らないでいただきたいね」
「そりゃ、こっちの台詞だ」
言うや否や、アランは得意の正拳突きを繰り出した。
アランと男の体格差は、アランとゼノのそれと然程変わりがない。客同士の喧嘩とはいえ、この男に昨夜のゼノの二の舞になられても困る。
相変わらず喧嘩っ早い男だと思いつつ、止めに入ろうとしたゼノだったが、対する男は余裕の表情だった。
アランの正拳突きを華麗にかわして懐に入り込むと、腹部に勢い良く肘を埋める。「うぐっ」と低く唸り、アランはその場に崩れ落ちた。
「アラン!」
「大丈夫!?」
うずくまったままのアランに、ゼノとマリアンルージュが駆け寄った。だが、当のアランは腹部を押さえて屈んだまま立ち上がれない。
「失礼した。急なことで手加減できなかった」
見下すような視線を三人に向けて、冷ややかにそう告げると、男は厨房へ向き直り、顔を覗かせていたダニエルとヴァネッサに恭しく一礼した。
「レジオルド憲兵隊第三隊隊長ジュリアーノ=ブルーニだ。近隣の村家を脅かしていた盗賊の残党を追っている。疲弊した部下の休養のために部屋を貸して貰えないだろうか」
ジュリアーノと名乗った男の透き通るような碧い瞳は、どこか薄ら寒い光を湛えていた。
食事を終えた鉱山夫達が席を立ち、次々と勘定を済ませて店を出て行く。店内に残っているのは、食後の一服を愉しむ年配客と、昨夜ゼノに一撃をくれた若い鉱山夫の二人だけだった。
閑散とした店内に、食器を重ねる軽い音がカチャカチャと響く。後片付けを任されたマリアンルージュがひとり、食堂と厨房を忙しなく行き来していた。
「ほらほら、休んでる暇があったら汚れた皿を運んできてちょうだい」
ぼんやりとゼノが食堂を眺めていると、厨房に戻ってきたヴァネッサが声高に告げた。はっとして振り向いたゼノを押し退け、ヴァネッサは手早く泡に塗れた食器を濯ぎはじめる。
濡れた手をぶら下げ、ゼノが所在無さげにしていると、厨房の入り口に置かれたカウンターテーブルの前にマリアンルージュがやって来た。絶妙なバランスで食器が積み上げられたトレイをカウンターに置き、前髪を掻き上げて一息つく。そのまま厨房に目を向けたマリアンルージュは、ゼノの視線に気がつくと、小首を傾げて言った。
「終わったの?」
どう説明したものかと、ゼノが流し台のヴァネッサに目を向けると、ヴァネッサは茶目っ気たっぷりにゼノにウインクして見せた。くすりと笑って再び食堂へ向かおうとするマリアンルージュに、ゼノは慌てて声を掛けた。
「手伝います!」
ダニエルもヴァネッサも可笑しな気を遣うものだ、などと思いつつ、ゼノは厨房をあとにした。
使用済みの食器の山をゼノが厨房へ運び、マリアがテーブルを拭いて椅子を整頓していく。散らかっていた食堂は、ふたりで手分けして片付けるうちに、あっという間に開店前の姿に戻っていった。
「おつかれさま。おばさんに報告してくるね」
食堂を見渡して満足気に頷くと、マリアンルージュはゼノに一言告げて厨房へと向かった。
ひとり食堂に残されたゼノが壁際で手持ち無沙汰に立ち尽くしていると、長いこと煙草を燻らせていた年配の男が、手招きしてゼノを呼んだ。懐から金の入った皮袋を取り出して勘定を済ませ、男は深々と頭を下げて店を出て行った。
しんと静まり返った店内に、ゼノと若い鉱山夫だけが残された。
随分前に食事を終えたにも関わらず、未だ店内に居座り続けるこの男の考えには、だいたい察しがついていた。
目的は十中八九マリアンルージュであり、大方、厨房に戻った彼女が再び現れるのを待っているのだろう。
妙な苛立ちを覚えながらゼノが男を観察していると、ちょうど顔をあげた男と目が合った。
「おい、お前」
沈黙を破り、男が席を立つ。ずかずかと歩み寄られて、ゼノは咄嗟に後退った。昨日の痛みを身体がまざまざと覚えていた。
「……何か?」
問題を起こすわけにもいかず、ゼノは平静を装って尋ねた。男は問いに答えず、無言のままゼノの顔を睨みつけてくる。
一触即発。いつ殴られてもおかしくない。
そう考えて、ゼノが静かに身構えたときだった。
「悪かったな」
唐突に、男が頭を下げた。
「あんまり威勢良く出てくるもんだから、まさか喧嘩が全く駄目だなんて思わなくてよ」
唖然として男を見上げるゼノに、ぶっきらぼうな態度で男が言った。
てっきり因縁を付けられると思っていた相手の思いがけない行動に、ゼノは困惑した。だが、素直に謝罪するその行為を無碍にする必要など何処にもない。
ゼノがぎこちなく頷きを返すと、男は顔をあげて表情を柔らげた。
「話がわかる奴で良かったぜ。俺はアランだ。よろしくな」
和解の証明のつもりなのか。アランと名乗った男は、ゼノに向かって手を差し出した。
何が「よろしく」なのか、と思いながら、ゼノが躊躇いがちに手を差し出すと、アランはその手をがっしりと両手で握った。
「いや、マジで本当に悪かったと思ってんだ。あんだけ弱いのに意を決して俺と彼女の間に入ってきた、その気持ちを考えたらよ。お前も彼女に惚れてるに決まってんのになぁ」
握った手をぶんぶん振り回しながら、アランは更に捲し立てる。
「惚れた相手の目の前で一発殴られて倒れるなんて、俺だったら恥ずかしくて二度と彼女の顔を見れねぇ。だけどお前は仕事上それを避けるわけにもいかねぇだろ? 今日の働きぶりをみて感心したよ」
褒めているのか貶しているのか、判断に困る言い草だが、本人の様子を見る限り悪気はないように思えた。おそらく天然の無神経なのだろう。
溜め息をつきたくなるのを堪え、ゼノが握られた手を引くと、アランは「おっと、すまねぇ」と笑って後ろ髪を掻いた。
「俺を殴ったことに関してはもう忘れますが、彼女に変な真似をするのはやめてくださいね」
念を押すように告げて、アランの目につかないよう、ゼノはエプロンの尻のあたりで手を拭った。
悪い人間ではないのは理解ったが、このアランと言う男はどうにも暑苦しい。
ゼノが二度目の溜め息を堪えたとき、入り口の木戸が開き、来客を知らせるベルがカランカランと軽快な音を鳴らした。
入り口を振り返ったゼノの眼に映ったのは、隊列を組んで並ぶ制服を着込んだ男達だった。人数にして三十人以上の団体のようだが、宿泊客という雰囲気ではない。何より、彼等が身に纏う制服には見覚えがあった。
「いらっしゃいませ!」
ベルの音を聞きつけて、マリアンルージュが厨房から顔を出した。入り口を塞ぐように並ぶ人の列を見て目を丸くするマリアンルージュに、先頭に立って店内を見回していた男が声を掛けた。
「この街唯一の宿というのはここで間違いないだろうか?」
輝かんばかりの金色の髪と、晴れ渡る空のように澄んだ碧い瞳を持つ秀麗な青年は、美しい外見に似合わない、どことなく不遜な口振りで尋ねた。
男の問いに小首を傾げたマリアンルージュが厨房を振り返り、顔を覗かせていたダニエルとヴァネッサが勢い良く首を縦に振るのを確認する。
「そのとおりですが、ご宿泊のお客様ですか?」
マリアンルージュがにこやかに微笑む。
男は「ふむ」と納得したように頷くと、口元に薄らと笑みを浮かべ、
「なかなかどうして、美しい娘じゃないか」
そう呟いて、マリアンルージュの頬に触れた。
男の無遠慮な行動にゼノが眼を見開くと、同時にアランが駆け出し、驚いて後退るマリアンルージュを庇うように男の前に立ちはだかった。
一瞬のことでわからなかったが、どうやらアランはマリアンルージュの頬に触れた男の手を払い除けたらしい。男は手の甲を摩りながら、不快感を露わにアランを一瞥した。
「汚い手で触らないでいただきたいね」
「そりゃ、こっちの台詞だ」
言うや否や、アランは得意の正拳突きを繰り出した。
アランと男の体格差は、アランとゼノのそれと然程変わりがない。客同士の喧嘩とはいえ、この男に昨夜のゼノの二の舞になられても困る。
相変わらず喧嘩っ早い男だと思いつつ、止めに入ろうとしたゼノだったが、対する男は余裕の表情だった。
アランの正拳突きを華麗にかわして懐に入り込むと、腹部に勢い良く肘を埋める。「うぐっ」と低く唸り、アランはその場に崩れ落ちた。
「アラン!」
「大丈夫!?」
うずくまったままのアランに、ゼノとマリアンルージュが駆け寄った。だが、当のアランは腹部を押さえて屈んだまま立ち上がれない。
「失礼した。急なことで手加減できなかった」
見下すような視線を三人に向けて、冷ややかにそう告げると、男は厨房へ向き直り、顔を覗かせていたダニエルとヴァネッサに恭しく一礼した。
「レジオルド憲兵隊第三隊隊長ジュリアーノ=ブルーニだ。近隣の村家を脅かしていた盗賊の残党を追っている。疲弊した部下の休養のために部屋を貸して貰えないだろうか」
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