魔女見習いのロッテ

柴咲もも

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第3話 魔女の媚薬

 作り終えた傷薬を乳鉢から小瓶に移しながら、ロッテはちらりと隣の席に目をやった。身体の大きなゲオルグが大きな手で小さな乳鉢を支えて真面目な顔で真剣に乳棒を動かしている姿は、ちょっぴり滑稽でもあり微笑ましくもあった。
「こんなもので良いか」
 そう言って、ゲオルグが乳鉢を傾けてみせる。とろりとしたペーストの仕上がりを確認して、ロッテはこくりと頷いた。乳鉢を受け取り、出来上がった傷薬を小瓶に詰めて、ふたつ並べてテーブルに置く。薄っすらと黄味を帯びたなめらかなペーストが、陽の光を浴びてきらきらと輝いた。
「確かにひとりで作れる量ではないな。無茶を言ってすまなかった」
 ふうと大きく息をつき、ゲオルグが顔を上げる。ロッテは小さく首を振り、手早くテーブルの上を片付けた。
「お疲れ様でした。お茶でも飲みますか?」
「ああ、頼む」
 ゲオルグは軽く頷いて、それからテーブルに並んだふたつの小瓶をまじまじと見比べた。
「調薬というのもなかなか難しいものだな。お前が作ったものと比べると随分と出来が悪い気がする」
「初めてにしては上出来ですよ」
 ゲオルグが不服そうにぼやくから、ロッテはくすりと笑ってしまった。
 ゲオルグの表情は一見すると不機嫌そうで、先ほど見た微かな笑顔が嘘だったかのようだ。けれどもロッテは今になって、初めて会ったあの日、ユリウスに窘められた彼が口にした言葉を思い出していた。

 ——この顔は生まれつきです。
 あのとき彼は、確かにそう言っていた。もし本当にそうなのだとしたら、いつも不機嫌そうなその顔だけに気を取られて、色々なことを見落としていたのかもしれない。改めて思い返せば、ゲオルグには何度か助けられているのに、お礼の一つも言っていなかった。
「……あの、ありがとうございました。街で荷物を持ってもらったり、お店や工房に案内してもらって」
「礼を言われるほどのことはしていない」
「でも助かりました」
「そうか」
 傷薬の小瓶を見つめたまま、ゲオルグが素っ気なく応える。ロッテはゲオルグに背を向けたまま話を続けた。
「久しぶりですよね」
「何がだ」
「ゲオルグさんに会うのが、です」
「……魔獣討伐に出ていたからな」
 ——それで監視に来なかったのね。
 乾燥ハーブの小瓶を棚からいくつか手に取って、ロッテはティーポットにハーブを入れた。簡易コンロに火を点けて湯を沸かし、こぽこぽとティーポットにお湯を注ぐ。充分に蒸らしてから茶漉しを使い、薄っすらと色付いたハーブティーを硝子のティーカップに注ぎ入れた。
 危険な任務が明けたばかりのゲオルグは、きっと心身ともに疲れているに違いない。そう考えて、ロッテはどちらの疲れにも効果があるようにハーブを選んでブレンドした。
「どうぞ」
 ロッテがティーカップをテーブルに置くと、ゲオルグは一瞬動きを止めて、香りたつ湯気の匂いをすんと嗅いだ。それからティーカップを手に取って、淹れたてのハーブティーを口に含んだ。
 静まり返った室内に、かちゃかちゃと硝子のティーセットが触れ合う音が響く。窓の外へと目を向ければ、中庭の樹々が夕陽に紅く染まっていた。
 ハーブティーを飲み終えると、ゲオルグはティーカップをソーサーに戻し、ロッテを見上げて言った。
「さすが魔女、と言うべきか。身体が軽くなった気がする」
「それはよかったです」
 ロッテがにっこり笑ってみせると、ゲオルグは僅かに口元を綻ばせて、それからロッテに一言礼を言って、傷薬を片手に部屋を去った。


***


 翌日からはまた、ロッテの部屋にはディアナが監視にやってきた。階下で耳にした噂では、近頃は魔獣が人里に降りてくることが増えたらしく、王国騎士団による魔獣の討伐が頻繁に行われているらしい。加えてユリウスの護衛も任されているとなると、ゲオルグはロッテになんて構っている暇がないのだろう。
 けれども今のロッテにとっては、監視役が誰であるかはもはや問題ではなかった。調薬器具が揃い、全ての下準備も整って、本格的に例の薬の調合を開始したからだ。
 一度作業に入ってしまえばひとときも目を離すわけにはいかなくて、ロッテはこの三日三晩、机に齧り付くようにして調薬器具と睨めっこを続けていた。そして四日目の朝、滞りなく調薬が終了した。

「完・成!」
 作りたての薬を詰めた小さな瓶を朝陽にかざして、ロッテは満足げな声をあげた。とろみのある液状の薬は赤味を帯びた飴色で、お湯で薄めれば紅茶に似た色になりそうだ。ほんのりとあまい香りが鼻をかすめて、つい味見をしたくなってしまう。
 いけないいけない、と首を振り、ロッテが慌てて自分を窘めていると、いつの間にやら背後に近付いていたディアナがロッテの手の中を覗き込んだ。
「あら、随分と綺麗な薬ね。何の薬なの?」
「え……っと、その……元気になるくすり……?」
 内心ぎくりとしながらロッテが答えると、ディアナは「なぁに、それ」とくすくす笑った。
 王宮に上がってすぐの頃はあんなに冷たかったのに、最近のディアナは以前のつんけんした様子がまるでない。ご機嫌なディアナと一緒にいると、今更だというのに後ろめたい気持ちになってしまう。
「あ、あの……わたし、テオにお礼を言ってきますね!」
 居た堪れない思いで薬の瓶を戸棚にしまい、ロッテは逃げるように部屋を後にした。

 樹々の緑が迷路のように壁を作る庭園を、俯いたままとぼとぼと歩く。
 ちょっとした気の迷いから思い立ち、初めての本格的な調薬に夢中になって完成させてしまったものの、あんなものを作ってどうするつもりだったのだろう。
 ユリウスのちからになりたくて、その想いを信じて欲しかっただけのはずなのに、媚薬のちからに縋ってユリウスを誑かそうとするなんて、本末転倒だ。ディアナとゲオルグも少しずつ態度を軟化させて、せっかくロッテに歩み寄ってくれているというのに。

 ——やめよう。
 深緑色のスカートを、きゅっと握り締める。
 随分と時間をかけて作ってしまったけれど、あの薬のことは忘れるべきだ。本格的な調薬は初めてだったのだから、あの薬を完成させただけでもロッテにとっては充分に価値のある経験だった。馬鹿な真似をしてしまう前に思い留まることができてよかった。
 胸の前で祈るように手を結び、ほっと息を吐いて、ロッテは足早に庭園を通り抜けた。馬の嘶きや人々の騒めく声が、遠くで聞こえた気がした。


***


 ひらひらと蝶が舞う緑の迷路を抜けると、多種多様なハーブに彩られた小さな庭がロッテの目に飛び込んできた。餌を求めて地面を啄ばむ小鳥を眺めながら、添え木に絡まる蔦植物の横を、色とりどりの花が咲く花壇のあいだを通り抜ける。プランターに植えられた背の高い植物の向こう側に人影を見つけると、ロッテは少し声を潜めて少年の名前を呼んだ。
「テオ……?」
 影の動きがぴたりと止まる。ややあって、日除け帽子とエプロンを身に付けた少年が植物の陰からひょっこりと顔を出した。
「やあ、ロッテ。今日はひとり?」
「期待を裏切るようですけど、ディアナさんは一緒じゃないです」
 仔犬のようにディアナにじゃれつくテオの姿を思い出して、ロッテはくすりと笑ってしまった。テオは「ざんねん」と戯けてみせて、それから庭の片隅の日陰に置かれたベンチへとロッテを案内してくれた。ところどころ塗装の剥がれた白いベンチにふたり並んで腰掛けると、ロッテはすぐさま本題を口にした。
「今日はお礼を言いにきました。このあいだハーブをたくさん分けてもらったから」
「ああ、アレか。その喜びようってことは、薬が完成したのかな」
「ええ。本当に助かったから、ありがとうって言いたくて」
「お役に立てて嬉しいよ」
 にっこり笑ってそう言って、不意にテオの表情が引き締まる。植え込みに遮られた庭園の向こう側へと目を向けたまま、テオがちょっぴり声を低くした。
「前庭のほうが騒がしいね。討伐隊が帰ってきたのかな」
「また討伐に出ていたんですか?」
「うん、前回帰還して、その翌朝には出て行ったはずだよ。ディアナさんがゲオルグさんを心配してた。危険な任務なのに大変だよね」
 呟いたテオの横顔が、ロッテの目にはちょっぴり大人びて見えた。
 ゲオルグがロッテの監視に来なかったのは、魔獣の討伐に駆り出されていたからなのだろう。今朝のディアナがいつもよりご機嫌だったのも、ゲオルグの無事の帰還が知らされていたからに違いない。
 ロッテがぼんやり考えていると、不意にテオが声を弾ませた。
「ねぇ、時間はある? よかったらハーブ園を案内するけど」
 世界中の珍しい草花を取り揃えた王宮のハーブ園を見学させて貰えるなんて、願ってもみない提案だ。
 ロッテはすぐさま頷いて、それから昼食の時間になるまで、ハーブ園と白い建物——あとで温室だと知った——をテオの案内で見て回った。


***


 ハーブ園の見学を終えると、ロッテは厨房に立ち寄ってバタートーストを分けてもらい、宮廷の自室に真っ直ぐ戻った。正午の陽がさす部屋の中は、ロッテが今朝部屋を出たときのままで、帰還したゲオルグを迎えに出たのか、窓際のカウチにディアナの姿は見当たらなかった。
 ロッテはうんと大きく伸びをして、少し遅めの昼食のためにテーブルの上を片付けた。調理台に向かい、簡易コンロに火を点ける。戸棚を開けてお茶に使うハーブを選ぼうとしたところで、ふとした違和感に首を捻った。
 ——何かがおかしい。
 ほんの少し考えて、その原因に気が付いた。
 同時に部屋の扉がけたたましく叩かれて。ロッテが慌てて扉を開くと、前屈みになったゲオルグが部屋の前に立ち塞がり、怖ろしい形相でロッテを見下ろしていた。

 ごくり、と大きく喉が鳴った。
 今日のゲオルグは片翼の鷹が刺繍された丈の長い黒い外套に身を包んでおり、いつもの数倍威圧的な空気を放っていた。激昂したように顔が真っ赤に染まっていて、興奮に息を荒げ、肩を上下させている。
 ロッテが口を開きかけたところで、鼓膜を激しく揺さぶる怒声が響いた。
「何の薬だ!」
 ロッテはびくりと身を縮こまらせた。
 予想は出来ていた質問だった。戸棚を開いたときの違和感——それは、そこに置いたはずのものが無くなっていたことによるものだったからだ。
 無くなっていたのは偉大なる森の魔女リーゼロッテの特製媚薬。この状況から察するに、ゲオルグはつまり……
「飲んじゃった、ですか……?」
 震える声で訊ねると、ゲオルグの陰に身を隠すようにして様子を伺うディアナの姿が目に付いた。ロッテの予感はどうやら的中したようで、彼女はロッテと目を合わそうとしない。任務明けで疲れていたゲオルグに「元気になる薬」を飲ませてしまったらしい。
 完全に薬が効いているのはゲオルグの様子を見ても明らかだった。きゅっと拳を握り締め、真っ直ぐゲオルグを見上げると、ロッテは震える声を絞り出した。
「えっと、その……三日三晩、発情しっぱなしになる薬、といいますか……」
「発情、だと……?」
 熱い吐息が洩れる唇を震わせて、わなわなと呟いて。直後、ゲオルグは怒号を上げた。
「ふざけるな! そんな薬を作る必要が何処にある!」
「それは……その、練習……というか……」
 掴みかからんとする勢いでゲオルグがロッテに迫る。ロッテは涙目になってふるふると首を振った。
「ゲオルグ、落ち着いて! とりあえず部屋に戻りましょう。そのの話が本当なら、今の貴方は出歩くべきではないわ」
 ロッテとゲオルグのあいだに割って入り、ディアナがゲオルグを押し留めようともがく。けれど、ゲオルグの勢いは止まらなかった。片腕でディアナを押し退けて、ゲオルグはロッテの部屋に踏み込んだ。
「解毒薬があるだろう! よこせ!」
「ありませんっ」
「なくても作れるだろう! 鎮静剤でも何でもいい! すぐに用意しろ!」
「すぐになんて無理です! ゲオルグさんの鋼の騎士精神でなんとか耐え」
「明後日には次の任務が控えているんだ! つべこべ言わずに用意しろ!」
 再三に渡らせてゲオルグが怒声を響かせる。ロッテは震え上がり、追い立てられるように机の上の分厚い本に噛り付いた。

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