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複雑メンバー勢ぞろい

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 ついに明日は私の19の誕生日パーティ。
 たくさん来る招待客の中には、もちろんフロウ王子も入っている。
 そして今日。
 彼はこの国に入国した。

「ようこそフロウ王子。またすぐお会いできてうれしいですわ」
「私もです、リザ王女。明日の誕生日パーティ、お招きいただき感謝いたします」

 にこやかに握手を交わすも、心の中では冷や汗がダラダラと流れている。
 だって疑惑の人物が今また目の前にいるんだもの。

「そういえば、先程ここに来る途中、陛下の庭を通ったのですが──」
「っ──!!」

 来た来た来た来たぁぁああ!!
 今父の庭はほとんどがシートで覆われている。
 私が抜きに抜きまくってところどころ穴あきの無残な状態になっているからだ。
 なんというか……そう、例えるならば暴動の後みたいな。
 砲弾でも何回か投げ込まれましたか? みたいな感じになっている。

 見た目を隠すためにも、誰にも近寄らせないためにもブルーシートで覆って、安全だと分かるまで立ち入り禁止をしているのだ。

 陛下への謁見の後この応接室に来るには、陛下の庭を通る。
 気づかないわけがないのよね。

「え、えぇっと、それが、なぜか花がところどころ枯れてしまいまして……。今無事な花だけで作り直しをしているのです。せっかくフロウ王子が自らデザインをしてくださった庭なのにと、父もとても残念がっていたのですが、致し方なく……」

 まさか、意図的に彫り上げました!! なんて口が裂けても言えない私は、適当にそれらしく嘘八百を並べ上げる。
 嘘も方便よ、うん。

「あぁ、そうでしたか……。では私も植え替えのお手伝いをいたしましょう。デザインしながら植え替えもできますし。さっそくやってしまいましょう」
 そう言ってフロウ王子が腕をまくり部屋を出ようとした、刹那──。

「殿下!! お待ちください!!」
「!?」
 大きな声で怒鳴るようにフロウ王子を制止したのは、彼の側近ルビウス・ローゲルだった。

「どうした? ルビウス。そんな大声を出して」
「っ、申し訳、ありません。ですが、素手で触れてはお手が汚れてしまいます」
「え? そんなの気に──」
「それに!! ……リザ王女殿下の御前です。ここに来た目的を最優先されてください」

 不自然なほどに意見を通そうとするルビウスに違和感が圧し掛かる。
 どういうこと?
 まるでフロウ王子に素手で触らせたくないみたい……。
 たかが花だというのに。

「……わかったよ。では王女、また時間のある時にでも、デザインを送らせてください」
 渋々ながらにそう行動を止めたフロウ王子に、安堵の表情を浮かべるルビウス。
 違和感、でしかないわ……。

「……えぇ、楽しみにしておりますわ」
 その違和感を気にするそぶりを見せずに、私はにっこりと笑った。

 ***

 その夜──。

「こんな夜に集まってもらっちゃってごめんなさい。皆、来てくれてありがとうございます」

 私の部屋のソファには、カイン王子、サフィール、レイゼル、アルテス、そしてセイシスという複雑関係なメンバーがずらりとそろっている。

 正直、あまり直視したくないメンバーだ。

 それでも、前までだったら一回目の夫が二人揃うだけでも苦しくなった胸が今は平気なのは、きっと自分の記憶を取り戻して、後悔しながらも前を向けたからなのだと思う。

「ふむ……サフィール殿と私はなんとなく察しはついているけれど、そちらのお二人は?」

 あぁそうか、カイン王子はレイゼルとアルテスとは初対面よね。

「まずは皆様を紹介させてください。ノルン第二王子カイン様。そしてそのお隣がサフィール・ディアス公爵令息。その向かいがアルテス・マクラーゲン公爵令息。セイシスの義弟で、今は騎士団に所属しているわ。そしてその隣は、この国一番の男娼レイゼル・グリンフィード。今は男娼だけれど、元子爵令息よ」

 こうしてみると圧巻ね。
 目の保養すぎるというかなんというか……。
 一回目の私、よくこんなキラキラした人たちを一気に夫にできたわね。
 それだけ心が弱っていたのか何なのか、今の私だったら目がつぶれるからごめん被るところだわ。

 両側のキラキラとした人たちが座るソファの真ん中に私が座り、その傍らにセイシスが立つ。

「男娼、ですか……!?」
 カイン王子が驚きの声を上げ、サフィールと、そしてアルテスも同じような反応をしている。
 当然か。
 王族、貴族の中に、一人だけ元子爵家の貴族だとしても男娼が混ざっているんだものね。

「えぇ、私の閨教育係です」
「ね──っ!?」
 カイン王子とアルテス、それにサフィールが顔を真っ赤にして言葉を失った。

「と、とはいえ!! 受けた振りで、レイゼルにはその時間はただ私の話し相手になってもらっていただけだからっっ!!」
 ここにいるメンバーには隠す必要がない。
 それを言ったとして、誰かに告げ口するような人たちでないのもよくわかるし。

「そうそう。リザ王女の愚痴やら恋愛相談に乗らされていた、ただの犠牲者ですよ、僕は」
「うっ……」
 ぐさぐさ刺してくるわね、レイゼル。
 やっぱりこの間のこと根に持ってる!?
 でも否定できないのが悔しいわ……。

「ごほんっ。とにかく、ここにいるのは私にとって信頼のおける人達です。お気づきの方もいるかもしれませんが、ここにいるのはレイゼルとセイシス以外、私の婚約者候補です。そして──ごめんなさい。私は、ここにいる候補者たちの気持ちに応えることができません」

 そう正直に頭を下げると、息を呑む声が聞こえた。
 ここまで呼んでおいてこれで一斉に済ませるのも申し訳ないけれど、まずはこれを伝えておかねばと思った。

「最初は、応える気が無かったの。私はこの中の誰とも、結婚する気はなかった。でも……。あなた達は、ちゃんと私を見てくれた。私のしていることを見て、純粋に敬意を持ってくれたし、寄り添おうとしてくれた。だからね、その、考えたの。ちゃんと。だけど……」

「僕たちとの未来が、見えなかった?」
 カイン王子の的確な言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 嘘はつけない。
 向き合ってくれた彼らのためにも。
 一回目、彼らの気持ちに甘えて、彼らの心を傷つけた私は、二回目はちゃんと自分の意思を伝えなくちゃいけない。それが一回目の彼らへの誠意でもあるのだと、そう思った。

「……と、いうことは……ここにいないフロウ王子が、貴女の心を射止めたんでしょうか?」
 カイン王子がたずねるも、私は首を横に振った。

「いいえ、違います。彼は……聞いてはいけない話をするので、呼びませんでした」
「聞いてはいけない話?」

 首をかしげるレイゼルに、私は一度ゆっくりと息を吐いて落ち着いてから、再び口を開いた。

「まず、サフィール。先日の父の庭の花の調査結果を持ってきてもらえたかしら?」
「あ、はい、これを──」

 思い出したように懐から書簡を取り出すと、サフィールはそれを私に手渡した。
 私はすぐさまそれに目を通していく。

「──っ!!」

 あぁ……やっぱり……。



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