令和日本では五十代、異世界では十代、この二つの人生を生きていきます。

越路遼介

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第二十話 悪夢

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俺と梨穂は結婚した。もっとも入籍しただけで結婚式は挙げない。
梨穂はまったく眼中になく、これから行う歌の活動の方が大事なようだ。
中古のピアノを購入して自宅でレッスン、シゲさんから譲られたこの家は防音なんて気の利いた設備はないものの、隣の家まで百メートル近く離れている住居なので騒音は全く問題にならない。
梨穂はレッスンも真剣そのもの。俺も旦那として全力で応えるまでだ。

さて、俺たちは新婚旅行に出発。四国の愛媛県『探偵少女アイカ空港』に着いた。
ここは人気アニメ『探偵少女アイカ』の作者出身県でミュージアムもあり、地元もアニメ人気で収益を得ようとしているのか、空港もまた同作品のミュージアムのようだ。
羽田空港からまっすぐ飛んできた。ここからはゆっくりと電車や高速バスでのんびり旅を楽しみつつ、日本各地に設置してあるストリートピアノを巡る旅を楽しむつもりだ。

元々作品が好きだったのか、俺の愛する幼な妻梨穂はアイカの展示物に目をキラキラさせていて、人気キャラクター等身大フィギュアの横に行っては『撮って撮って』とお願いしてくる。何て可愛いんだ。今宵もエッチ頑張るぞ。

土曜日の午後、空港内は人が多くいた。作品の展示物を見に来ている人、旅行客、ビジネスマンと。
ストリートピアノはアイカのイラストがプリントされている彩り豊かのもの。
幸い、誰も演奏していなかった。俺と梨穂はいそいそと撮影準備に入る。俺は動画見る専門だったし、梨穂もそうだ。配信側に回るのはこれが初めて。とにかく失敗しながらも先達の動画も参考にしつつ撮影技術を上げていくしかない。現状、俺のピアノの腕前と梨穂の歌唱力の前にこれが課題でもあった。梨穂が三つ目の三脚付きカメラを設置し
「これでいいと思うけれど…」
「ピアノの設置状況は各地で違うから撮影レイアウトやら何やら、とにかく試行錯誤してやっていくしかないよ。そろそろ始めようか」
「そうね」

ストリートピアノとセッションをする歌い手はマイクなしでもピアノの音量に負けるわけにはいかない。
しかし、それは杞憂だ。梨穂は三島市内のショッピングモールで、いきなり俺の『焔』に合わせて歌えた。驚くほどの声量と美声で。

俺が『探偵少女アイカ』のメインテーマをピアノで弾きだすと、さすが同作品のファンも集うスポット、多くの人がピアノに振り向き、または足を止めた。続けて梨穂の美声が空港内に響く。
そもそも、このメインテーマは作中メロディーのみで流されることが多いけれど、ちゃんと歌詞もある。歌が付いているメインテーマが流れる時はだいたいクライマックスかつ重要な場面で、当然アイカファンなら誰でも知っていること。アイカを演じる女性声優が歌っているのだけれど梨穂も負けていない。堂々たるものだ。俺も歌に負けないピアノを弾かないと。いつの間にか人だかりが出来ていた。
おいおい、初陣でこんなに上手くいっていいものか逆に戸惑うよ。

曲が終わると盛大な拍手、俺と梨穂は聴衆に恐縮しながら頭を下げて機材を撤収してピアノをあとにした。
「さて、おやつ代わりに空港内で軽食でも」
「それより、早く撮れた動画が見たい!」
興奮気味の梨穂、さきほどの拍手喝さいがよほど嬉しかったんだな。空港内のベンチに腰かけて各デジカメで撮った動画を見あう。目を輝かせて見つめる梨穂。
そして手慣れたスマホ操作でサクサクと編集していく。こんな才能もあったんだな。
俺なんてスマホはゲーム機としか使っていないのに大したものだよ。

「編集終了!」
「すごいな、もうか」
「スマホで出来る程度までね。あとはパソコンが無ければ無理かな」
「ありがとう、俺はそっちの方ほとんど協力できなくて済まないな」
「いいって。前も言ったけれど、こういう編集作業だって楽しんでこそだと思うよ。そろそろ食事に行こうか」
梨穂はノートパソコンを旅先にも持ってきている。パソコンは俺がプレゼントしようと思ったけれど、梨穂が嬢として稼いで貯めたお金で高性能なパソコンを買った。ニコリと笑い『これでスッカラカン、あとはアイパイパーとして稼がないとね』と言っていた。

「急ぐ旅じゃない。動画には各地の名勝や美観なども入れて彩を添えれば、次の動画再生数も伸びるだろう。今日はもう無理だけど明日は松山城に行ってみよう」
「うん、道後温泉楽しみだな~」
「うん、道後温泉に入ったあとの梨穂を抱くのも楽しみ」
「もう、俊樹さんのエッチ」


夕方に松山へ着いた俺たちは、そのまま道後温泉に。泊まる宿こそホテルで温泉は無いけれど、テレビでよく見る湯屋に着き
「趣があるなぁ…」
湯屋に見惚れてしまった。
「本当…」
若い梨穂も見惚れている。世代を越えて魅了できる古き良き建築物、いいものだ。
それにしても、道後温泉の周囲にこれほど風俗店が多いなんて思わなかったな。梨穂と一緒じゃなきゃ行っていたかも。それを察した梨穂は
「なぁに?伊予娘とエッチしたいのぅ?」
「まあ、独り者だったら行っていただろうな。そして風俗店のシャワーで満足しちゃって、このまま温泉にも入らず撤収という展開もあり得たよ」
「なにそれ、道後温泉に訪れながら道後温泉に入らず?ふふっ」

男湯と女湯に分かれる時
「それじゃ十九時半にここで待ち合わせ。入浴後に夕食にしよう」
「うん、じゃ後ほど」

「ういいいいい…」
温泉に入るなり、そんなうめき声を出してしまう。我ながらおっさんだなと思う。
しかし、初めての動画撮影だったけれど、あんなに拍手喝さいを浴びるとは思わなかったな。これもセイラシアで音楽が特技化したおかげだな。本来俺のピアノの腕前なんて素人に毛が生えた程度だったのだから。本当にシゲさんには頭が上がらない。

でも、とうぶん向こうに戻るつもりはない。こちらにいる間は時間が経過しないのだからシゲさんを待たせるわけじゃないし、何より梨穂との暮らしが本当に楽しい。
結婚は地獄なんて誰が言ったのか、こんなに楽しいじゃないか。

温泉を出た俺は脱衣場でコーヒー牛乳を一気にグイッと。
俺は梨穂との結婚以来、酒を一滴も飲んでいない。若い時、飲んで風俗に行ったら射精に至らず、以来俺は女遊びの前に絶対に飲まないことを誓い、今もそれは破っていない。
毎夜、梨穂という幼な妻を抱くのに酒など飲めるか。いかに逞しい体躯を得ても心臓がどうなるか分かったものではないからな。

「兄ちゃん、いいガタイしているね。その歳で腹筋割れている男は中々おらんよ。何か秘訣があるのかい?」
隣で牛乳を飲んでいた還暦近いおっさんが話しかけてきた。こういうのも旅の醍醐味だな。俺はいつものように
「適度な運動に美味い食事と十分な睡眠、それと時々若い娘といいことをすることですよ」
そう答えると脱衣場にいた男たちはドッと笑った。おっさんは
「うらやましいねぇ、最近俺のせがれはお辞儀しっぱなしだよ。はははっ」


「ということがあってな」
俺と梨穂はホテルで食事を取っていた。脱衣場であった話をすると
「確かに私も最初俊樹さんの裸を見た時はそう思ったよ」
「そうなのか?まあ、消防士として鍛えておいてよかったよ。それにしても美味しいな、料理」
「うん、焼き豚卵飯最高だよ」
元は今治のご当地グルメだったらしい焼き豚卵飯、中華料理屋のまかないから始まったとか。今は松山でも食べられる。本当に美味いな。
ちなみにいうと梨穂はお酒が飲めないそうだ。わがままなようだけれど、それは俺にも幸いだ。房事中に酒臭い息というのもな。
「ところで、これ見てよ」
梨穂がスマホの画面を俺に見せた。
「実は私、待ち合わせの三十分くらい前に温泉を出ちゃってね。休憩所でパソコン出して動画を再編集して投稿したの。『探偵少女アイカ空港でアイカのメインテーマを歌いました!』というタイトルで」
「まんまだな」
「うん、こういうのはあんまり奇をてらわない方がいいしね。再生数見てよ」
「え?」
嘘だろ、と思った。投稿してから一時間ほどだと言うのに
「な、七万再生だと…。何かの間違いじゃないのか?」
「間違いじゃないよ。チャンネル登録数もチェックしてよ」
「六千…。いや、これは逆に不安になるよ。上手く行きすぎだ」
コメントは大絶賛ばかり。日本語だけじゃなく、外国語のコメントもある。
これじゃ、ついさっきまで初心を持っていた梨穂が増長してしまいかねない。

「俊樹さん、すぐ顔に出るね。私が天狗になりゃしないか心配?」
「…そんなに顔に出るか?」
「丸分かり。でも心配ないよ俊樹さん。嬢をやっていた時だけど」
「うん」
「嬢には色んな女の子がいる。中には秋葉原の地下アイドルのセンター張っていた子とか」
「地下アイドルのセンター」
「一緒に飲みに行って、カラオケで聴いたけれど歌唱力は本当にすごかった。容貌も可愛いし、ダンスもそれなりだったみたいでね。だけど、それのせいでついてこられない子に罵声を浴びせることが多くなっちゃったらしくて…」
「ああ…」
「それで精神的に追い詰められたメンバーも辞めちゃって、同時にメンバーから嫌がらせの慰謝料の請求、運営している事務所からも解雇のうえ有望な新人を辞めさせたと慰謝料も請求されて、それで仕方なく嬢になったと泣き笑いしながら話していたよ」
「そうか…」
「すべて私の驕りのせいだ。そう言っていた。難しいよね、実力はあったろうに」
「そうだなぁ…」
「だから私は驕らないよ。大丈夫、俊樹さん」
「すごいな。愚者は己の経験からも学ばない、賢者は他人の経験からも学ぶという。大したものだよ、梨穂は」
「えへへ、そう?」
「そうか、それを肝に銘じているのなら何も言うことはないよ」

改めてジュースで初陣の成功を乾杯し、その後は部屋のベッドで梨穂を堪能した。
すごく甘えてくれて本当に可愛くて仕方がない。歌もいいけれど嬌声もたまらない。
俺は梨穂の若い肢体に溺れ切っていた。愛しくて愛しくて。
思えば嬢相手の時は快楽最優先だったけれど、その快楽より何倍も気持ちいいし癒される。心から愛している女性を抱くと言うのは、こういうことなんだろうなと最近実感しているよ。梨穂も俺に対してそうなのか蕩け切っている。快楽に酔いしれている歓喜の笑みが愛しくて俺も頑張ってしまう。

翌日は松山観光、松山城、正岡子規ミュージアム、坂の上の雲ミュージアム、湯築城を回り写真や動画も撮り、夕方には再び道後温泉に入って入泉後の美肌の幼な妻を抱いた。何て楽しい旅だろうか。一人旅はあんなに味気なかったのに。

俺たちは九州へと渡り、観光地を巡ると共に『トシPと歌い手あずき』の動画を撮影した。ただの音楽動画じゃなく、現地の美観や名勝も動画に入れて彩った。俺たちの動画は大人気となっていき、再生数とチャンネル登録者もどんどん増えていった。

そして鹿児島中央駅に設置されているストリートピアノで動画を撮影したあと
「知覧の特攻資料館、前から行きたかったんだ。ここを最後に一度三島に戻ろう」
「そうだね。一度家に戻って落ち着いてから次の旅行先に向かいましょう。ふふっ、天橋立早く見たいな」
「俺もだよ。しかし今回の旅、厳島神社と大鳥居が改修工事中だったことだけが悔やまれるな」
無粋と言っては工事と神社関係者に申し訳ないが、工事用のシートに覆われた大鳥居を見た時はショックのあまり、二人して肩を落として唖然としたものだ。
「また見に来ればいいじゃない。牡蠣と穴子丼、とても美味しかったから二度来る価値ありよ」
「そうだな」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

三島に帰って自宅に到着した。
「ああ、やっぱり我が家が一番落ち着くなぁ…」
荷物を置いてひと段落したら
「俊樹さん、マーケット行ってくるね」
「別に今日は宅配でもいいんじゃないか?」
「だめ、ずっと外食だったんだもの。今日は美味しい家庭料理としましょ」
「それもそうか。ああ、自転車は一応タイヤの空気確かめてからの方がいいぞ」
「分かった。そうする」
「俺は洗濯しているよ。君のも出しておいて」
「うん、それを出したら行ってくる。ちなみに何が食べたい?」
「豚肉の生姜焼きがいいな」
「ふふっ、今夜もたっぷり可愛がってもらうようニンニクも入れちゃうね」

洗濯機の前にいると庭から梨穂の『うんしょ、うんしょ』という声と空気入れの音が。ああ、やっぱり家に置いてあったママチャリ、空気が甘かったか。


「遅いな…」
自転車で十分もかからないマーケットなのに、もう一時間以上経つのに戻らない。洗濯した衣類はとうに乾燥機の中で乾いており、俺は梨穂の下着を畳みつつ時計を見た。さらに三十分すぎた。
「いくら何でも遅すぎる」
俺はスエットからジャージに着替えて探しに行くことに。玄関から出た直後のことだった。スマホが鳴った。知らない電話番号から連絡が入った。悪夢のような、俺の人生の中で最たる凶報だった。

『篠永梨穂さんのご主人、俊樹さんの携帯電話ですか』
「はっ、はい」
『三島警察の者です。奥さんが交通事故に遭い、市立総合病院に救急搬送されました。すぐに病院に向かって下さい』
目の前が真っ暗になり、俺はその場で尻もちをついてしまった。

俺はタクシーを呼んで総合病院に向かった。自分で車を運転したら辿り着きそうにないと思った。運転手も何か察したか俺に何も聞かない。
青の横断歩道を自転車から降りて渡っていたところをアクセルとブレーキを踏み間違えた高齢者ドライバーが運転する乗用車にはねられたという。そう警察官が説明していたけれど、そんな言葉も耳に入らなかった。
娘のような幼な妻、この世で一番大切な人、事故に遭ったと聞き頭が真っ白になった。

病院に着くと、看護師に案内されたのは病室ではなく霊安室だった。
「ああ…」
部屋に入る前に俺は腰が抜けたように崩れ落ち、看護師に支えられて、ようやく部屋に入れた。目の前には顔に白い布がかぶされている人間が。
「り、梨穂…」
何かの間違いであってくれ。他の誰かと警察が勘違いしたと。そうだよ。家に帰ったら『どこに行っていたの!』とほっぺを膨らませて拗ねている梨穂に平謝りしながら言い訳するんだ。震える手で布に触れて静かにめくった時、嫌が応にも現実が叩きつけられた。

まぎれもなく梨穂だった。

「うわあああああああ!」
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