END roll

秋 睡蓮

文字の大きさ
4 / 38

6日前

しおりを挟む
 翌日の朝は珍しく晴れていた
差し込んでくる朝陽に目覚めを促され眼を覚ます
「おはよ。早いな」
先に起きていたらしい彼女は丁度着替え中で
自分に見られてしまったという事に瞬間赤面し、枕を投げつけてきた
「痛っ、何!?」
それを顔面で受け取る羽目になり、つい返してやれば
だが彼女は立て続けに次は毛布を被せてくる
着替え終わるまで見るな、と
今更恥ずかしがる間柄でもいないだろうにと、ばれないように肩を揺らした
仕方なく暫くそのままでいると布団が退けられた
どうやら着替えが終わったらしく自身も身支度を、とベッドを降り上着を脱ぎ始める
他人の着替えを見る事も恥ずかしいのか
彼女は短く声を上げ、量の手で顔を覆ってしまった
その間を借り手早く身支度を済ませると荷をまとめる事を始め
出発する旨を伝え彼女の手を取った
外は晴天
本当にこんなにいい天気になったのは久方振りで
感じる眩しさに手で日よけを作りながら空を見上げて見る
天気が、いいね
そう傍らで呟く彼女へわずかに笑みを浮かべて返し歩き出す
今日は何処まで行こうか
そんな事を考えながら進んでいけば
その途中、久しぶりに人とすれ違った
「おや。何処かへ行かれる途中ですかな?」
わざわざ脚を緩め声をかけてきたのは
散歩途中らしい老夫婦だった
自分たちを眺めながら、穏やかな笑みを浮かべている
「……楽しんできてね。め一杯」
それだけを短く伝えると、それ以上会話することなく老夫婦はその場を後に
その背を暫く立ち尽くしたまま見送っていると
彼女が自分の手を握り返した
「どした?」
僅かな引きに振り返ってみれば
彼女は自分へと身体を凭れさせてくる
そして腕を組むと
ずっと、あんな風に仲良く居たいね
老夫婦の後ろ姿を眺めながら告げる
ずっと、世界が終わるその時まで
僅かに寂しげな表情を浮かべた彼女のそれはそう訴えているような気がして
自分はついその身体を抱きしめてしまっていた
考えないように、しているのに
刻々と過ぎていく時間がどうしてもそれを許してはくれない
彼女の肩に顔を渦ねそのまま動かずに居ると
大丈夫。ずっと、仲良くいられるよ」
彼女の柔らかな声が耳を掠め
自分は暫くそのまま顔を上げることが出来なかった……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。 しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。 郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。  そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。 そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。 アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。 そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

偽夫婦お家騒動始末記

紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】 故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。 紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。 隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。 江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。 そして、拾った陰間、紫音の正体は。 活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。

処理中です...