END roll

秋 睡蓮

文字の大きさ
6 / 38

4日前

しおりを挟む
 ひどく寒い日だった
前日の雨の影響か、世界全体が冷めてきているのだと
道端で雑談する誰かが話しているのを歩きながら耳にする
だが別段驚くことでもない
世界はもうすぐ終わるのだ。人が死ねば熱を失うように世界とてその熱を失うのだろうと
自分は何故か肩を揺らす
どうして笑えるのだろう。こんな状況で
自嘲気味にさらに笑みを浮かべれば彼女の手が頬へと触れてきた
辛そうな顔はしないで欲しい
笑えていると思っていたのだ。自分はまだ笑うことが出来ている、と
だが実際は全く笑えてなどいなかったらしい
「……今日は、寒いな」
手が悴んでしまいそうな程に冷えた空気
吐く息も白く氷り
自分は温もりを求め彼女を抱きしめる
彼女は何を言う事もなく自分がしたいようにさせてくれて
漸く寒さも和らぐと、歩くことをまた始めた
あそこに、行ってみたい
そう言いながら彼女が指さしたのは
少し先に見えるショッピングモール
何か買いたいものでもあるのか、と問うてみれば
彼女ははにかんだ笑みを浮かべひみつと一言
「教えてくれないのか?」
多少なり不貞腐って見せるも彼女は教えてはくれず
それ以上は聞くことをやめておいた
話も程々に、このまま歩き進んでいけば今日中には着くだろうと
歩みをわずかに早めた途端
更に冷たさを増した風が二人に吹き付ける
寒そうに身を縮ませる彼女
口にこそ出さないがやはり寒いのだろうと
自分の上着を脱いで着せてやる
そんな事をしたら風邪をひいてしまう、と彼女が首を横に振る
「お前よりは丈夫に出来てるつもりだけどな」
心配げな彼女を宥めてやるため態とからかう様な口調で言ってやれば
彼女は自分だって丈夫だと頬を膨らまして見せる
そのまま上着を脱ごうとするそれをやんわりと手で制し
いいから着てろ、と頭を掻き乱してやった
まるで子供扱いだ
顔を膨らましてしまい
自分は彼女の機嫌を取るため苦労する羽目になった……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。 しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。 郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。  そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。 そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。 アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。 そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

偽夫婦お家騒動始末記

紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】 故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。 紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。 隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。 江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。 そして、拾った陰間、紫音の正体は。 活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

処理中です...